通知・通達

消防予第56号 金属製避難はしごの適切な維持管理について

消防予第56号
平成13年2月23日
 
各都道府県消防主管部長 殿
 
消防庁予防課長
 
 
金属製避難はしごの適切な維持管理について
 
 先般、鹿児島県において、金属製避難はしごを使用して避難訓練を行っていた際、はしごの縦棒が抜け落ちるという事故が発生しました(別添)。
 この事故は、はしごの縦棒の溶接部が外れたことにより発生したものですが、日本消防検定協会における調査の結果、当該金属製避難はしごの設置時に、既に、何らかの原因により溶接部の外れが生じており、その後、変形が進行したものと推定されています。
 当該金属製避難はしごは消防法に基づいて設置されていたものであり、定期に実施されている点検において異常を発見し、事故を未然に防止することが可能であったと考えられます。
 消防法に規定する金属製避難はしごは、火災が発生した場合において在館者の避難に用いられるものであるため、消防法令に規定する技術上の基準に適合していない場合には、人命にかかわる恐れがあります。
 貴職におかれましては、このことを踏まえ、下記に掲げる事項について防火対象物の関係者等に周知するとともに、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨周知されるようお願いします。
 
 
1 防火対象物の関係者は、消防法第17条の規定に基づき設置している金属製避難はしごについては、同法第17条の3の3の規定に従い定期に点検を実施する必要があり、当該点検においては、点検基準に適合していることを確認することが必要であること。
  この場合、金属製避難はしごの各部分について破損や変形がないことを目視で確認するとともに、伸展等に異常な力を要すること等がないことを確認することが重要であること。
 
2 防火対象物の関係者は、金属製避難はしごを設置した際には、消防法施行規則第31条の3の規定に基づき、消防用設備等試験結果報告書を添えて消防長等に届出をすることが義務づけられており、当該試験においても、金属製避難はしごが技術上の基準に適合していることを確認することが必要であること。
 
3 消防法に基づき設置している金属製避難はしご以外のものにあっても、避難器具の重要性に鑑み、前1及び2と同様に試験及び点検を確実に実施することが望ましいこと。
別添
 
鹿児島市で発生した金属製避難はしごの事故について
 
1 発生年月日   平成12年8月21日(月)
 
2 発生場所    鹿児島県鹿児島市
 
3 防火対象物   令別表第1(6)項イ 病院
 
4 事故発生器具  金属製避難はしご(つり下げはしご)
           製造者  ナカ工業株式会社
           商品名  タスカール(T-109)
                伸縮式(9段)、縦棒1本型
           型式番号 は第62~4号
           製造年  平成2年
 
5 器具設置場所  2階ベランダ
 
6 設置年月    平成2年11月
 
7 事故発生状況  避難訓練のため、女性職員が金属製避難はしごを使用して2階から1階に降りようとした際に発生したものである。
          2階において、収納されたはしごを伸展させたところ、上から3段目まで伸展した状態で止まった。このため、2段目の横桟を叩いたところ、すべてのはしごが伸展したので、はしごを降り始めたところ、4段目の横桟に足をかけた時点で4段目以下のはしごが脱落した。
 
8 負傷者     なし
 
9 事故原因    避難はしごの縦棒の溶接が外れ、その後変形が進行したことにより事故が発生したものと推定される。
          当該溶接の外れが生じた原因は溶接自体の不良ではなく、外力によるものであり、また、その発生時期は、避難はしごを設置する前と推定される。