消防危第98号 予防規程作成上の留意事項について
消 防 危 第 98 号
平成13年8月23日 各都道府県消防主管部長 殿
予防規程作成上の留意事項について
危険物施設における保安の確保については、日頃から予防規程の認可等を通じてご指導いただいているところです。
なお、貴管内市町村に対してもこの旨周知いただくようお願いします。消防庁では、危険物施設の多様化、複雑化が進み、自主保安基準としての予防規程の重要性が益々高くなっている現状を踏まえ、平成11年度及び平成12年度の2か年にわたり予防規程のあり方について調査検討を行いました。 この調査検討の結果を踏まえ、今般、「予防規程作成上の留意事項」を別紙のとおり作成しましたので、執務上の参考としてください。 別紙
予防規程作成上の留意事項
1 予防規程の作成 予防規程の作成にあたっては、施設の実態(施設の形態、従業員数、従業員の能力等)に即して保安確保策を具体化しながら、これを明確に規定するよう作業を進めることが重要である。 予防規程に定める事項は、危険物の規制に関する規則第60条の2に規定されているが、このうち次の事項について、保安確保策の具体化に資するよう、「予防規程に盛り込むべき主な事項」及び「予防規程作成時に考慮すべき事項」を以下にまとめた。 ① 危険物の保安に関する業務を管理する者の職務及び組織に関すること
② 自衛の消防組織に関すること ③ 危険物の保安に係る作業に従事する者に対する保安教育に関すること ④ 危険物の保安のための巡視、点検及び検査に関すること ⑤ 危険物施設の運転または操作に関すること ⑥ 危険物の取扱作業の基準に関すること ⑦ 補修等の方法に関すること ⑧ 災害その他の非常の場合に取るべき措置に関すること ⑨ 危険物の保安に関する記録に関すること
(1) 危険物の保安に関する業務を管理する者の職務及び組織に関すること
【予防規程に盛り込むべき主な事項】
【予防規程作成時に考慮すべき事項】
危険物施設の保安業務には、危険物の貯蔵及び取扱作業の立会いを行い従業員に必要な指示を与えたり、施設の点検等の維持管理をすること等がある。また、火災をはじめとする災害が発生した場合には、従業員を指揮して応急措置を講じることも必要である。危険物施設の所有者、保安監督者等の保安業務を管理する者自らが保安業務を全て行うことは不可能であり、また、保安業務を効率のよいものとするためには役割を適切に分担し、業務を組織的に行う必要がある。 保安業務の内容についてはできるだけ具体的に定め、これを施設の実態(施設の形態、従業員数、従業員の能力等)に応じて役割分担することとなるが、担当者及びその代行者の決定においては、役割に対する責任についても考慮する必要がある。特に代行者に関しては、基本的に、担当者の行う保安業務に必要な権限と同等又はそれ以上の権限を有する者とする必要がある。なかでも、危険物保安監督者については、消防法第13条の規定により一定の資格を有することとされていることから、危険物保安監督者の業務を代行する者は、原則的に、危険物保安監督者相応の能力及び権限を有する等、業務に必要な一定の要件を満たしている必要がある。 (2) 自衛の消防組織に関すること
【予防規程に盛り込むべき主な事項】
【予防規程作成時に考慮すべき事項】
危険物の規制に関する政令第38条の2により一定規模以上の危険物施設を有する事業所について設けることとされている自衛消防組織のほか、自主的に組織される災害時の即応体制について定める必要がある。 (3) 危険物の保安に係る作業に従事する者に対する保安教育に関すること
【予防規程に盛り込むべき主な事項】
【予防規程作成時に考慮すべき事項】
危険物施設の事故は、人的要因によるものが多く発生しており、これを防ぐために従業員は保安に必要な知識及び技能を身につけておく必要がある。これには、テキストを活用したり、訓練を実施するといった保安教育を行うことが有効である。 保安教育は、危険物施設の全従業員を対象とすることが必要である。なお、必要に応じて当該施設の補修、整備等を行うため当該施設に出入りする関係会社の従業員等も対象に含めることが望ましい。 保安教育の計画作成においては、対象者の知識や経験を念頭に置き、従業員の保安意識の維持向上のため、対象者に応じた内容及び実施時期等を考慮することが必要である。特に、実施時期については、保安に対する関心の低下や作業慣れによる気の緩みを防ぐため、作業内容に応じた適切な時期とすることが望ましい。 (4) 危険物の保安のための巡視、点検及び検査に関すること
【予防規程に盛り込むべき主な事項】
【予防規程作成時に考慮すべき事項】 消防法第12条により、危険物施設の位置、構造及び設備は、消防法令で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならないことが義務付けられており、また、同法第14条の3の2により一定規模以上の製造所等については、定期的に点検を実施することが定められている。 これに基づき、危険物施設及び設備ごとに運転状況、危険物の取扱状況等に関して、巡視、点検及び検査の内容及び方法を、チェックリストを作成するなどにより明確にする必要がある。なお、危険物施設の保安確保上必要がある場合には、消防法の規定に関するもの以外にも施設の実態に応じて、巡視、点検及び検査についての基準を明確にしておくことが望ましい。 また、巡視、点検及び検査の実施者を指定する場合、資格が必要なものについては、実施者が当該資格を有していることを確認する必要がある。 (5) 危険物施設の運転又は操作に関すること
【予防規程に盛り込むべき主な事項】
【予防規程作成時に考慮すべき事項】 危険物施設の運転又は操作に関しては、通常の運転時の保安確保に関する事項のみならず、緊急時の措置についても定めておく必要がある。 なお、(6)危険物の取扱作業の基準に関することにも該当する事項がある場合は、(6)の内容を本項目に含めることも可能である。 (6) 危険物の取扱作業の基準に関すること 【予防規程に盛り込むべき主な事項】
【予防規程作成時に考慮すべき事項】 危険物取扱作業時における貯蔵及び取扱基準について、消防法令に定められている事項等に加え、危険物の種類、取扱形態に応じた作業基準を具体的にわかりやすく規定する必要がある。 なお、(5)危険物施設の運転又は操作に関することにも該当する事項がある場合は、(5)の内容を本項目に含めることも可能である。 (7) 補修等の方法に関すること
【予防規程に盛り込むべき主な事項】
【予防規程作成時に考慮すべき事項】
危険物施設の事故は、補修工事中にも発生していることから、工事計画作成時点から工事後の安全確認が終了するまで、関係する部所間で連絡を取り合い、工事の部位、方法、期間等の周知徹底を図る仕組みを確立することが必要である。また、工事計画作成段階においては、補修に先だって講じる措置、補修中の養生方法、補修完了後の措置及び緊急時の対応方法等について明確にするとともに、これらの措置の確認方法及び確認体制に関する事項を定めておくことが必要である。 (8) 災害その他の非常の場合に取るべき措置に関すること
【予防規程に盛り込むべき主な事項】
【予防規程作成時に考慮すべき事項】
消防法第16条の3において、危険物施設の所有者等は、当該施設で危険物の流出、その他の事故が発生したときは、直ちに、引き続く危険物の流出及び拡散の防止、流出した危険物の除去その他災害の発生の防止のための応急の措置を講じなければならず、また、このような事態を発見した者は、直ちに、その旨を消防署等に通報しなければならないとされていることから、消防署等への通報連絡体制と手段を定めるとともに、応急措置に関する事項を定め、これに使用する資機材を準備する必要がある。 なお、応急措置の方法については、類似施設の事故例等を参考にして予測される事故に関する対応方法をできるだけ具体的にわかりやすく定めておくことが必要である。 (9) 危険物の保安に関する記録に関すること
【予防規程に盛り込むべき主な事項】
【予防規程作成時に考慮すべき事項】
保安に関する記録としては、①~⑤等がある。 ① 点検・検査の記録 ② 設備の故障、補修等に関する記録 ③ 作業手順の変更に伴う保安設備に関する変更の記録 ④ 異常時の応急措置に関する記録 ⑤ 事故に関する記録 これらの記録については、単に保存するだけでなく、内容を分析し、その結果をより高度な安全対策に活かして行くといった活用方法もあるため、索引をつける等、分析等に活用しやすいフォーマット、保存方法とすることが必要である。 2 予防規程の形式
危険物施設の保安確保を推進するためには、危険物施設の従業員の保安に対する認識を深めることが重要であり、このための方策の一つとして、予防規程に定められている内容を理解しやすいものとすることが考えられ、これには例えば、写真・イラスト・挿し絵等を用いることが挙げられる。 また、予防規程以外に保安マニュアル等が作成されており、予防規程の内容がわかりやすく記述されている場合は、予防規程の中にこれらのマニュアルの該当部分を引用することも可能である。 なお、これらの方法により予防規程を作成した場合に、個人名が含まれることが考えられるが、この場合、個人名に変更があっても予防規程の変更の認可は要しないものである。 |