通知・通達

消防危第130号 ナトリウムを取り扱う施設で発生した火災について

消防危第130号
平成13年12月4日
 
   各都道府県消防主管部長 殿
 
消防庁危険物保安室長 
 
 
ナトリウムを取り扱う施設で発生した火災について
 
 危険物の安全管理に係る指導については、日頃からご努力願っているところですが、先般、別紙1のとおり茨城県において、危険物第3類自然発火性物質及び禁水性物質であるナトリウムを取り扱う一般取扱所において火災が発生しました。
 調査の結果、ナトリウムが出火の原因物質である可能性が高いことが、別紙2の「常陽」メンテナンス建家火災事故調査委員会が取りまとめた報告書により明らかになりました。
 当該施設は、ナトリウムを最大450キログラム(指定数量の45倍)取り扱う危険物の一般取扱所として、消防法第11条第1項の許可を受けた施設であり、消防法令に規定する貯蔵及び取扱の基準等に従い、適切な保安管理が行われるべき施設でした。
 しかしながら、報告書によると、?@ナトリウムを大気開放下で取り扱う作業が行われていたが、ナトリウムが脱落する可能性への配慮が十分でなかったこと、?Aナトリウムの付着する可能性のある紙タオルを紙製のゴミ箱(カートンボックス)に入れる作業を行っていたこと、?B使用済みの紙タオル等の清掃を常時実施していなかったこと、?C周囲に燃えやすい酢酸ビニルの覆いが施されていたことがなどが明らかになっており、これらが火災の発生や拡大に寄与したとされています。
 また、請負作業者等に対する放射性ナトリウムの取扱いに関する教育及び訓練が不十分であったことも指摘されています。
 ついては、この種の危険物関係事故を未然に防止するため、下記事項に特に留意し、保安管理の徹底が図られるようご配慮いただくとともに、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨周知されるようお願いいたします。
 
 
1 ナトリウムの火災危険性を考慮した適切な取扱い作業を実施すること
2 常に整理及び清掃を実施するとともに、みだりに不必要な物件を存置しないこと
3 危険物のくず、かす等の安全な処置を徹底すること
4 予防規程を定めなければならない製造所等においては、危険物の保安に係る作業に従事する者に対する保安教育や危険物の取扱い作業の基準などについて、実態に則した実効性のある予防規程を定めること
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
別紙
 
核燃料サイクル開発機構大洗工学センター内「常陽」メンテナンス建家火災の概要
 
 
1 発生日時等
 (1) 発生日時   平成13年10月31日(水) 20時42分(発見)
 (2) 発生場所   茨城県東茨城郡大洗町成田町4002
          核燃料サイクル開発機構大洗工学センター 高速実験炉「常陽」メンテナンス建家
 (3) 鎮火日時   平成13年10月31日(水) 23時30分
 
2 出火建物概要
 (1) 危険物取扱所(一般取扱所)施設概要
・耐火造 地上3階地下2階
・建築面積   616.93?F
・延べ面積 1,406.98?F(出火場所の1階は616.93?F)
 (2) 危険物取扱所(一般取扱所)許可内容
・許可品名   第3類ナトリウム
・許可数量   450kg
・許可倍数   45倍
 (3) 消防設備
・消火設備  金属火災消火器、ABC消火器
・警報設備  自動火災報知設備
 (4) メンテナンス建家の概要
 原子炉施設において使用された機器・部品のナトリウム洗浄、補修、一時的貯蔵等を行う施設
 
3 事故概要
 平成13年10月31日20時42分ころ、核燃料サイクル開発機構大洗センター高速実験炉「常陽」メンテナンス建家1階の機器洗浄槽上部作業場にて火災が発生した。発生当時において同作業場は無人であったが、自動火災報知設備が鳴動し、中央制御室で監視カメラにより火災を確認した。20時53分から従業員が初期消火を開始し、21時11分に大洗町消防本部が現場に到着後、ABC消火器による消火活動を開始し、23時30分に鎮火を確認した。
 
4 出火原因
 機器・部品に付着した放射性ナトリウムを取り扱う機器洗浄槽上部作業場において、放射性ナトリウムが何らかの原因により紙製のカートンボックス内に混入し、発熱反応が生じる条件で発火し延焼した可能性が高いと推定される。
 
5 被害状況
 (1) 人的被害
    なし
 (2) 物的被害
    メンテナンス建家1階616.93?Fのうち13.51?F焼損
    その他、ビニルシート、電線ケーブル等焼損
 
 
 
 
別紙2
 
「常陽」メンテナンス建家火災事故調査委員会構成委員
 
委員長   中神 靖雄 副理事長              
委員長代理 大森 勝良 安全推進本部本部長代理       
副委員長  早野 睦彦 大洗工学センター副所長       
           
委員    上原 陽一 横浜国立大学名誉教授、横浜安全工学研究所代表     
委員    斎藤 直  独立行政法人消防研究所 プロジェクト研究部部長
委員    鶴田 俊  独立行政法人消防研究所 基盤研究部特殊火災研究グループ長
委員    田辺 文也 日本原子力研究所 社会技術研究システム推進室研究主幹 
 
委員    榊原 安英 敦賀本部 国際技術センター次長
委員    千葉 孝之 東海事業所 保安管理部次長   
委員    今瀬 俊則 大洗工学センター 電気主任技術者   
委員    岡田 敏夫 大洗工学センター 開発調整室長    
委員    可児 吉男 大洗工学センター システム技術開発部長
委員    和田 雄作 大洗工学センター 要素技術開発部長