通知・通達

消防危第35号 移動タンク貯蔵所の技術上の基準等(IMDGコード型タンクローリー車、運転要員の確保関係)に係る運用について

消防危第35号
平成16年3月23日


各都道府県消防主管部長 殿


消防庁危険物保安室長                   



移動タンク貯蔵所の技術上の基準等(IMDGコード型タンクローリー車、運転要員の確保関係)に係る運用について



 危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令(平成15年政令第517号)及び危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(平成15年総務省令第143号)がそれぞれ公布され、平成16年4月1日から施行されることとなりました(参考資料参照)。今回の改正を受けて、移動タンク貯蔵所の技術上の基準及び危険物の移送の基準に関する事項について、次のとおり運用することとしたので通知します。
 貴職におかれては、その運用に遺漏のないよう配慮されるとともに、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨周知されるようお願いします。
 なお、本通知中においては、法令名について次のとおり略称を用いたのでご承知おき願います。
  
政令... 危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令(平成15年政令第517号)による改正後の危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)
規則... 危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(平成15年総務省令第143号)による改正後の危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)




 IMDGコード型タンクローリー車について
 国際海事機関が採択した危険物の運送に関する規程(国際海上危険物規程、IMDGコード)に定める基準に適合する移動タンク貯蔵所(以下「IMDGコード型移動タンク貯蔵所」という。)について、位置、構造及び設備に係る特例規定として、政令第15条第5項及び規則第24条の9の3が追加された。
 IMDGコード型移動タンク貯蔵所のうち積載式のもの(以下「IMDGコード型タンクコンテナ」という。)については、従前から規則において特例規定が設けられていたところであるが、今回の改正により、IMDGコード型移動タンク貯蔵所のうち積載式以外のもの(以下「IMDGコード型タンクローリー車」という。)について、新たに特例規定が整備されたものである。
 *  今回の改正事項は、「規制改革推進3か年計画(再改定)」において「移動タンク貯蔵所(タンクローリー車)について、欧米の輸送実態の検証等を行い、積載物の種類や容量の制限、タンクの構造強化等により、安全性を損なわないことを条件に、間仕切及び防波板の設置義務の緩和・撤廃の可否について検討し、所要の措置を講ずる。」こととされていたことに対応するもの。

(1 ) IMDGコード型タンクローリー車の位置、構造及び設備の技術上の基準に係る特例規定
 IMDGコードの抜粋(仮訳)を別添1(PDF)のとおりまとめたので、執務上の参考とされたいこと。この場合において、別添1の6.8(陸上タンク自動車に関する規定)が、IMDGコード型タンクローリー車に係る構造及び設備の基準に該当すること。
 IMDGコード型タンクローリー車については、間仕切及び防波板(政令第15条第1項第3号及び第4号)を設置しないことができるが、タンク本体の構造等について強化されている部分があるほか、移送時の充てん率が20%以下又は80%以上に指定されているので管理上留意する必要があること(従来のIMDGコード型タンクコンテナと同じ)。
(2 ) IMDGコード型タンクローリー車の許可・検査等
 設置許可に当たっては、当該タンクローリー車にIMO表示板(IMDGコードに適合している旨を示す表示板。別添1の6.7.2.20参照)が貼付されている場合には、IMO表示板の交付に係る各国政府機関又はこれに代わる機関の許可書等(別添2(PDF)参照)の写し等をもって、設置許可申請において必要とされる添付書類とすることができること。
 完成検査前検査については、IMDGコード型タンクローリー車に関しても政令第8条の2第4項第3号の規定を適用し、簡素化を図ることができること。
 完成検査に当たっては、移動貯蔵タンクに漏れや変形がなく健全な状態であることの確認、IMO表示板の確認並びに標識及び掲示板の確認により行うことができること。また、当該タンクローリー車の輸入時に行う完成検査については、危険物を貯蔵した状態で行ってさしつかえないものであること。
 漏れの点検については、IMDGコード型タンクローリー車に関しても「地下貯蔵タンク等及び移動貯蔵タンクの漏れの点検に係る運用上の指針について」(平成16年3月18日付け消防危第33号)第2により実施することができること。

<参考> IMDGコード型タンクコンテナについて
 ○  IMDGコード型タンクコンテナは、いわゆる「国際輸送用積載式移動タンク貯蔵所」のタンクコンテナと基本的に同義のものであること。また、別添1の4.2及び6.7のうち、第1種ポータブルタンク及び第2種ポータブルタンクに関する規定が、IMDGコード型タンクコンテナに係る構造及び設備の基準に該当すること。
 ○  今回の改正においては、IMDGコード型タンクローリー車の導入に伴う所要の規定の整備が行われたものであり、IMDGコード型タンクコンテナについては、規定内容について実質的な変更は特段ないこと。
 ○  また、「国際輸送用積載式移動タンク貯蔵所の取扱いに関する指針について」(平成13年4月9日付け消防危第50号)、「国際輸送用積載式移動タンク貯蔵所に関する許可等に係る資料の送付について」(平成4年11月12日付け消防危第93号)等による運用についても、従前のとおりであること。
 運転要員の確保について
 運転要員の疲労に伴う事故発生防止の観点から、従来一定距離以上にわたる危険物の移送時には2人以上の運転要員の確保が義務づけられていたが、他分野(労働安全関係、貨物自動車運送事業関係)における基準等の状況を勘案し、距離から運転時間に基づく規定に改められた。つまり、運転要員の確保に係る指標が「距離」から「時間」に変更されたものである。
 *  今回の改正事項は、「規制改革推進3か年計画(再改定)」において「安全性を損なわないことを前提に危険物輸送時における運転要員の確保方策について検討し、所要の措置を講ずる。」こととされていたことに対応するもの。

(1 ) 連続運転時間の算定
 2人以上の運転要員の確保要件の1つとして、規則第47条の2において「一の運転要員による連続運転時間が4時間を超える移送」が掲げられており、連続運転時間の定義は「1回が連続10分以上で、かつ、合計が30分以上の運転の中断をすることなく連続して運転する時間」とされているが、具体的な算定方法については、次の例を参考とされたいこと。

連続運転時間の算定方法
 運転要員が1人の場合であれば、運転開始後4時間以内又は運転開始から4時間後に合計30分以上の休憩等を確保することにより、運転を中断しなければならない。この場合において、10分に満たない運転の中断は、運転時間に含むものである。

(2 ) 運転時間の管理
 運転時間は、移送の経路のほか交通事情や自然条件等により影響を受けるものであることから、移動タンク貯蔵所の関係者においては、運行管理を的確に行うことができるよう常に留意する必要があること。
 運転時間を計測する手段としては、例えば運行記録計(いわゆるタコグラフ。貨物自動車運送事業法に基づき総重量8トン以上、最大積載量5トン以上等の車両に義務づけられているもの。)による記録等があり、消防機関においては、立入検査等の機会を捉えて運行管理の状況を適宜確認されたいこと。


<参考資料> 移動タンク貯蔵所に係る技術基準の一部改正(イメージ)(PDF)

BUREAU VERITASの例(定期検査報告書)(PDF)

Lloyd's Registerの例(基準適合証明書類)(PDF)