通知・通達

別添 住宅防火基本方針

別添
住宅防火基本方針
 
平成13年4月1日
消防庁
 
第1 趣 旨
住宅防火対策については、平成3年3月に策定した「住宅防火対策推進に係る基本方針」に基づき、住宅防火対策推進協議会を中心に各種施策を国民運動的に推進してきたところである。
この結果、人口の増加及び高齢化の状況を踏まえれば、住宅火災による死者の総数は概ね抑制状態の傾向にあるものの、高齢者を中心とする死者は依然として多発している状況にある。
そこで今後、本格的な高齢社会を迎えるに当たり、高齢者等を中心とした住宅火災による死者のより一層の低減を図るために、過去10年間の成果と反省を踏まえ、新たに「住宅防火基本方針」を策定し、個々具体的な住宅防火対策の積極的推進を図るものとする。
 
第2 目 標
    高齢化の進展とともに住宅火災による死者の増加が見込まれるなか、住宅火災による死者の大幅な低減を図ることを目途に、今後10年間の目標として、放火自殺者等を除く住宅火災による死者の発生数を現状から予測される 死者発生数の半数に低減・抑制することを目指す。
 
第3 実践に当たっての取組みの考え方
    個人が私生活を営む場である住宅の防火責任は、当該個人が負うべきものとの考えのもとに、火気管理等の防火管理並びに消防用設備等の設置及び維持管理の規制については、火災発生時に人命危険等を共有する共同住宅等の一部を除き、法令による義務を課していない。
このため、住宅防火を推進するためには、まず、個人の責任において個々の住宅における防火安全のグレードアップを図ることが必要である。
一方、火災発生時に初期消火や避難などの適切な対応が困難である高齢者や障害者等が居住する住宅にあっては、これらの人の日常生活をサポートするホームヘルパー、民生委員など福祉関係者等による防火対策を含めた地域における住宅防火対策の推進が不可欠である。
今後の住宅防火対策の推進に当たっては、これらの考え方に立ち、個々の住宅における防火安全度を向上するための支援と、地域における住宅防火対策の推進のための支援に重点を置き、「連携と実践」をスローガンとして、必要かつ具体的な対策を積極的に実践していくものとする。
 
第4 具体的実践方策
国、地方公共団体及び関係機関等がそれぞれの立場で連携を図り、以下の方策を積極的に実践するものとする。
なお、目標期間を前期5ヶ年(平成13年度から17年度)と後期5ヶ年(平成18年度から22年度)に分け、前期の実績を踏まえて、後期5ヶ年の必要な対策の見直しを講じるものとする。
 
1 関係機関等の横断的連携の推進
    国、都道府県及び市町村のそれぞれの段階で、関係する行政機関、福祉関係機関、研究機関及び関係業界等が、個々の住宅防火対策の内容に応じて必要な連携を横断的に行うものとする。また、このために必要な協議会、連絡会等の住宅防火対策推進体制の整備・充実を積極的に図るものとする。
 
2 住宅防火安全度の飛躍的向上
    住宅のハード面における防火安全性能の向上を図るため、次により住宅用防災機器等の普及促進を図るものとする。
(1) 住宅用火災警報器等の設置促進
    住宅火災における逃げ遅れの死者を低減するため、火災をいち早く感知し、早期に警報を発する住宅用火災警報器等の設置促進を図る。
    ア 新型の「住宅用火災警報器」等の普及
      電池交換が不要で、天井コンセント脱着式のため更新が容易な新型の「住宅用火災警報器」の普及を図るとともに、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく住宅性能表示制度との連携を図る。
      また、公営住宅や職員住宅等についても、事業主体に対して情報提供等を行うことにより、新型の「住宅用火災警報器」の設置普及を図る。
    イ 福祉団体等との連携による住宅用火災警報器等の点検及び更新の促進
      既存の住宅において高齢者等が居住する家庭に対しては、重点的に普及・設置促進を図るとともに、各個人で住宅用火災警報器等の点検及び機能の低下した機器の更新ができない場合、福祉団体等との連携により点検等の促進を図る。
    ウ 火災・ガス漏れ複合型警報器等の普及促進
      ガス関係機関と連携して、一部の地域において急速に普及し始めている火災・ガス漏れ複合型警報器等の普及促進を全国に展開する。
    エ その他新規開発と情報提供の推進
      高齢者等の視力及び聴力等を考慮した住宅用火災警報器等の開発を促進し、また、住宅用火災警報器等の普及促進を図るためにも、損害保険料の割引制度導入に向けての情報提供を推進する。
     
(2) 住宅用消火器等の設置促進
      火災の初期消火、拡大防止に有効であり、逃げ遅れによる死者の発生防止に効果がある住宅用消火器・自動消火設備等の積極的な設置促進を図る。
    ア 消火器等の設置促進
    (ア) ニーズに対応した新たな推奨基準の策定
      住宅に設置される消火器、住宅用消火器及びエアゾール式簡易消火具等に関する多様な消火性能等を踏まえ、消防機関が住民に対する助言に活用できるよう、住宅構造、居住者の生活環境等に適した設置しやすく、使いやすい消火器等推奨基準を策定し、普及促進を図る。
      また、高齢者等の体力等を考慮に入れた使いやすい消火器等の開発を促進する。
    (イ)消火器等の普及方策
      福祉団体や地域の公共的団体等と連携して、各種情報提供等により、消火器等の積極的な設置促進を図る。また、自宅に設置された消火器等による消火訓練を促進し、取扱いの習熟を図るため、天ぷら油火災やカーテン火災などの実消火訓練設備を開発・配備し、実訓練を通して消火器等の有効性を周知することにより、設置促進を図る。
    イ 自動消火設備等の設置促進
      住宅用スプリンクラー設備及び住宅用自動消火装置について、住宅金融公庫の割増融資制度の周知その他の情報提供等を促進し、自動消火設備等の積極的な設置促進を図る。
      また、損害保険料の割引制度導入に向けての情報提供を推進する。
    ウ 消火器等のリサイクルシステムの確立と情報提供の推進
      普及・設置促進と合わせて、既に設置されている消火器等の点検システム及び不用となった消火器等のリサイクルシステムを確立し、点検・廃棄方法等についての情報提供を推進する。
 
  (3) 防炎品の使用促進
      防炎寝具、衣類、カーテン等は、火源の接触による着火を抑制し、火災の発生防止、延焼拡大防止及び着衣着火等による死者の発生防止に極めて有効であるため、これら防炎品の積極的な使用促進を図る。
   ア ニーズに対応した新たな推奨基準の策定
      高齢者や喫煙者の生活実態及び住宅内における火気使用設備器具等の使用実態に応じた防炎品推奨基準を策定し、使用の推進を図る。
   イ 防炎品の有効性に係る具体的事例の収集と情報提供
      防炎品は、着火による火災そのものを防止する効果があることから、広報媒体等を活用して、火災に至らなかった具体的な事例を積極的に収集し、その情報提供を行うことにより使用促進を図る。
   ウ 防炎品のリサイクルシステムの確立と情報提供の推進
      関係行政機関及び関係団体等が連携して、不用となった防炎品のリサイクルシステムの確立を行うとともに、廃棄方法についての情報提供を行う。
 
 (4) 住宅防火安心マークの普及
      住宅用防災機器等推奨制度及び住宅防火安心マーク表示店制度の周知の促進を図り、関係機関が連携して住宅防火安心マークを活用した住宅用防災機器等の設置・使用促進を図る。
 
  (5) 研究機関と連携した新規開発の促進
      独立行政法人消防研究所等の研究機関と連携して、実用的な住宅用防火防災設備機器等の研究開発を積極的に促進する。
 
 3 住宅防火情報の提供と防火意識の更なる高揚
    住宅のソフト面における防火安全の向上を図るため、次により住宅防火情報を積極的に提供し、各家庭の具体的な住宅防火安全度の向上を目指し、住民自らが防火に取組む対策を推進するものとする。
  (1) 地域密着型の防火への取組みの展開促進
      住宅防火は、地域の実情に応じて、地域に密着した取組みを具体的に展開することが重要であり、地域が主体的に推進する住宅防火への取組みを積極的にサポートし、住宅防火対策の促進を図る。
    ア 地域に密着した連携・協力体制の充実と対策の実践
      地域に密着した防火対策を推進するため、関係する行政機関、町 内会・自治会等の公共的団体、ホ-ムヘルパー・民生委員等の福祉関係者、関係業界等が地域単位で連携・協力し、対策の実践を図る。
      また、高齢者や障害者等の所在の積極的な把握と防火対策の重点 的な推進を図るため、行政機関が防火対策推進協力者と連携し、役割に応じた取組みを実践する。
   イ 住宅防火対策に対する支援体制の充実と情報提供の推進
      ホームヘルパー、民生委員等の福祉関係者や防火クラブ員等指導的立場で住宅防火を推進する者について、防火対策推進協力者制度を創設し、これらの協力者に対する支援体制の充実を図る。また、高齢者団体や一般住民等に対して、対象者に応じた情報提供の充実を図る。
    (ア) リーダーが必要とする知識を網羅した具体的な指導教材を作成 ・配布するとともに、育成支援プログラムを作成する。
    (イ) 高齢者等にも分かりやすい防火対策資料を作成・配布し、日常の具体的な注意喚起を図る。
   ウ 地域の教育の場を活用した住宅防火知識の普及
      地域の実情に即した住宅防火の展示普及事業や住宅防火シンポジウム等の充実強化を図るとともに、学校、幼稚園・保育所等及び地域のサークル活動等のあらゆる教育の場を活用して住宅防火知識の普及の徹底を図る。
 
  (2) インターネット等の活用による住宅防火情報の収集・提供の推進
    個々の住宅等の実情に応じた現状の防火安全性に係る評価と具体的な防火対策をわかりやすく理解してもらうために、インターネット等を積極的に活用する。
   ア パソコン等を活用した住宅防火診断の促進
      住宅火災の現状と防火対策に係る情報の収集・提供方法について見直し、受診者にわかりやすい評価内容と具体的対策の提供を図るとともに、診断実施者が使いやすいプログラムを作成する。特に、身近な火災事例及び防火対策の成功事例や失敗事例を積極的に収集し、それを基にして、利用対象者の各家庭に潜在的な火災原因を明らかにし、また、その除去方法を習得できるようなソフトとして開発し、活用の促進を図る。
      また、同様に、防火チェックリスト、防火対策フローシート等を作成する。
   イ 防火イベント等のあらゆる機会をとらえた防火診断の推進
      防火イベント、シンポジウム、講習会等多数の者が集まるあらゆる機会をとらえて、パソコン診断、防火チェックリスト及び防火対策フローシート等を利用した防火診断の実施の推進を図る。
      また、インターネットを利用して自分でパソコンを使った住宅防火診断ができるようにし、防火診断の促進と診断結果の活用による防火対策の推進を図る。
   ウ 訪問診断の重点的推進
      福祉団体等との連携・協力を図り、高齢者や障害者等が居住する住宅について訪問診断を重点的に実施するなど、防火指導の推進を図る。