通知・通達

消防消第15号 消防予第15号 消防危第11号 産業廃棄物等に係る消防対策について(平成10年2月5日)

消防消第15号
消防予第15号
消防危第11号
平成10年2月5日

各都道府県消防主管部長   殿



消防庁消防課長

消防庁予防課長

消防庁危険物規制課長

産業廃棄物等に係る消防対策について(通知)


 産業廃棄物等に係る火災については、ここ数年小規模なものを含め年間500件前後が発生しており、平成9年中においても11月に岐阜県で大量に集積・保管された廃タイヤ・廃プラスチック等の火災が発生したところである。
 特に、産業廃棄物等の火災においては、当該物件が集積・保管されている場所の道路事情や水利事情が悪いことに加え、山積みとなっているため有効注水が得にくいこと等から消火活動に困難を極め、鎮火まで相当の時間を要している例も見受けられる状況にある。
 また、大量に発生する黒煙による大気汚染や有害物質を含んだ消火用水等の流出による河川等の水質への影響など、周辺環境を配意した消防活動が必要となる場合も想定されるところである。
 したがって、消防機関においては、平素から廃棄物担当部局等との密接な連携を図り、産業廃棄物等の実態把握及び火災予防措置をはじめとする各種対策を講じておくことが必要である。
 ついては、産業廃棄物等に係る消防対策に万全を期するよう、下記事項について、貴管下市町村に対してよろしくご指導願いたい。
 なお、本件に関しては、厚生省との間で調整済みであり、追って厚生省から各都道府県・政令市廃棄物担当部局あて通知される予定であるので念のため申し添える。



1 産業廃棄物等保管場所の実態把握等
  産業廃棄物等を大量に集積・保管等している場所(以下「保管場所」という。)で、出火した場合に消火が困難となることが予想され、火災予防のために特に必要があると思われるものについて、廃棄物担当部局等との連携を密にし、その所在、廃棄物の種類及び量、関係者の有無、管理方法、消防活動上の障害等の情報を入手する等により、その実態把握に努めること。
  この場合において、消防法令の適用があるものについては、その旨を関係者に認識させ、これを遵守するよう指導するとともに、具体的かつ現実的な危険又は消防活動上支障があると認められる場合には、産業廃棄物等の除去等火災予防上必要な措置を講じるよう関係者を指導すること。
  なお、上記指導にあたっては、必要に応じ廃棄物担当部局等の協力を得て実施すること。

2 警防計画の策定
  前記1で把握した内容に基づき、事前に保管場所ごとの警防計画を策定し、火災発生時における迅速・的確な対応に努めること。
  この場合、必要に応じて河川等への消火用水の流出防止対策等についても定めておくこと。

3 重機を所有する民間企業との協力体制の確保
  産業廃棄物等の火災においては、重機を活用した消火活動が有効となる場合があることから、重機を所有する民間企業との協定の締結等、協力体制の確保について十分に配意すること。

4 その他
 (1) 産業廃棄物等の火災にあたっては、状況に応じ近隣市町村の応援を求める等、
  必要な消防力の早期集結に十分配意すること。
 (2) 消火にあたって水質汚染等環境への影響が懸念される場合には、都道府県消
防主管課の協力を求める等速やかに関係部局に連絡するとともに、相互に連携を図り、適切な消防活動に努めること。
 (3) 再生利用を目的として大量に集積・保管された廃自動車については、産業廃棄
物に該当しない場合もあるが、平成9年中に富山県・大分県で相次いで大規模な火災が発生したところであり、これらについても上記に準じた対策を講じるよう努めること。

参考
産業廃棄物処理施設等における主な火災事例
 1 火災の発生状況
火災件数 出場隊数 出場人員
平成7年 478 742 16,485
平成8年 510 747 15,758

 2 主な火災事例
  平成7年
都道府県 火災発生 出火~鎮火所要時間 火災概要 火災防ぎょ方法 環境問題
千葉県       4月 16時間39分  産業廃棄物中間処理施設内に山積みされた廃車両のスクラップ(縦80m&times 横60m&times 高さ9m)の塗料に、バッテリーのスパーク火花が着火延焼拡大したもの。  重機3台及びダンプ2台でスクラップ車両を排除しながら消火活動を行った。 &nbsp
静岡県     10月 22時間00分  産業廃棄物埋立地約6,000m2が焼損したもの。  重機作業、放水により消火活動を行った。 &nbsp
    平成8年
都道府県 火災発生 出火~鎮火所要時間 火災概要 火災防ぎょ方法 環境問題
宮城県   6月 12時間22分  産業廃棄物処理場に堆積した廃棄物約2,000立方メートル中約50立方メートルが焼損したもの。    重機作業、放水により消火活動を行った。 &nbsp
長野県     7月 1日14時間05分  投棄された古タイヤ約10,000本をはじめとする産業廃棄物、長さ40m&times 幅18m&times 高さ7mにたき火の火が移り、延焼拡大したもの。  重機(ショベルカー2台)作業及び放水により消火活動を行った。 &nbsp
静岡県     11月 20時間15分  産業廃棄物処理場内に野積みされた、高さ約10m、約300m2の廃材が焼却炉の煙突に接していたため出火し延焼拡大したもの。  重機により、廃材を頂上から崩しながら消火活動を行った。 &nbsp
三重県     9月 20時間08分  産業廃棄物集積場の上部から出火し面積約4,500m2シュレッダーダストの梱包14,500立方メートル等を焼損したもの。  重機でシュレッダーダストの束を崩して放水、砂をかけることを繰り返す消火活動を行った。 &nbsp
岡山県   2月 10時間38分  産業廃棄物処分場埋立地が、100m&times 150mの範囲で延焼したもの。    風上からの放水により消火活動を行った。 &nbsp
        平成9年
都道府県 火災発生 出火~鎮火所要時間 火災概要 火災防ぎょ方法 環境問題
富山県       8月 1日5時間  敷地面積24,857m2に、プレス廃車約25,200台を10mの高さに野積みした置場から出火し、約16,800台の廃車内の可燃物を焼損したもの。  重機により燃焼物を除去しながら消火活動を実施した。 また、富山県消防防災ヘリによる消火バケットでの放水を47回(36,400リットル) 実施した。  油を含んだ消火水が川及び用水路に流出し水田50アールに被害をもたらした。
岐阜県       11月 2日23時間20分  山林に野積みされている廃タイヤ約7,500立方メートル及び他の廃棄物(紙及びプラスティック) 約2,500m2の範囲を焼損したもの。  重機による未燃廃棄物の排除及び泡消火剤の使用等による消火活動を行った。  現場付近が水源地であったため水質調査を実施した。
大分県       11月 2時間30分  廃車置き場から出火、山積みされていた廃車約200台、古タイヤ及び周辺工場の外壁を焼損したもの。  重機2台で廃車を除去しながら泡消火剤による消火活動を行った。 &nbsp