通知・通達

消防危第16号 危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令の施行について(平成10年2月25日)

消防危第16号
平成10年2月25日


各都道府県知事
  殿



消防庁次長     

危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令の施行について(通知)


 危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令(平成10年政令第31号)が、本日公布され、原則として平成10年3月16日(一部の事項については平成10年4月1日又は平成11年10月1日)から施行されることとされた。
 今回の改正は、製造所又は一般取扱所の危険物を取り扱うタンク及び製造所等の危険物を取り扱う配管の位置、構造及び設備の技術上の基準、給油取扱所に係る位置、構造及び設備の技術上の基準並びに取扱いの技術上の基準並びに一般取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準について新たな規定の整備等を図ること、特定屋外タンク貯蔵所の設備について耐震対策上一層の安全の確保を図るため新たな技術上の基準を定めること、製造所等の位置、構造及び設備の技術上の基準等に使用される計量単位を国際単位系に係る計量単位に改めること等をその内容とするものである。
 貴職におかれては、下記事項に十分留意の上、その運用に遺憾のないよう配慮されるとともに、貴管下市町村に対してもこの旨示達の上、よろしく御指導願いたい。
 なお、本通達中においては、法令名について次のとおり略称を用いたので承知されたい。
 消防法(昭和23年法律第186号)……法
 危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令……改正令
 改正令による改正前の危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)……旧令
 改正令による改正後の危険物の規制に関する政令……令
 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)……規則




第1 製造所又は一般取扱所の危険物を取り扱うタンクに関する事項

 1 容量の算定方法に関する事項
 従来から、製造所等の危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンクの容量は、規則で定める計算方法に従ってそれぞれ算出される内容積から空間容積を差し引いた容積とすること(令第5条第2項)とされているが、今回の改正により、製造所又は一般取扱所の危険物を取り扱うタンク(以下「20号タンク」という。)の容量について、その形態に応じた算定方法が定められたこと。
 すなわち、20号タンクのうち、特殊の構造又は設備を用いることにより当該タンク内の危険物の量が令第5条第2項で算出される容量未満の一定量を超えることのないものについては、その一定量を当該タンクの容量とするものとされたこと(令第5条第3項関係)。
 なお、容量の算定等に関する運用方法については、別途通知するものであること。

 2 位置、構造及び設備の技術上の基準に関する事項
 従来、20号タンクの位置、構造及び設備については、その容量に関係なく、屋外タンク貯蔵所、屋内タンク貯蔵所又は地下タンク貯蔵所の危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンクの位置、構造及び設備の技術上の基準のうち一定の基準の例によるものとされていたが、今回の改正により、20号タンクのうち、屋外にあるタンク又は屋内にあるタンクであって、その容量が指定数量の5分の1未満のものについては、屋外タンク貯蔵所又は屋内タンク貯蔵所の危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンクの位置、構造及び設備の技術上の基準の例による必要がないものとされたこと(令第9条第1項第20号関係)。
 また、今回の改正により令第9条第1項第20号の適用がなくなる20号タンクについても、従来と同様、危険物を取り扱う設備としてのその他の位置、構造及び設備の技術上の基準に適合しなければならないものであること。
 なお、この改正に伴う運用方法については、別途通知するものであること。

第2 製造所等の危険物を取り扱う配管に関する事項
 従来、製造所等の危険物を取り扱う配管は、鋼製その他の金属製のもの(旧令第9条第1項第21号イ)に限定されていたが、今回の改正により、金属製以外の配管であっても使用することができるよう製造所等の危険物を取り扱う配管の位置、構造及び設備の技術上の基準について、強度、耐薬品性、耐熱性及び耐腐食性の観点から、次のように整理されたこと(令第9条第1項第21号イからニまで関係)。

 1 配管は、その設置される条件及び使用される状況に照らして十分な強度を有するものとし、かつ、当該配管に係る最大常用圧力の1.5倍以上の圧力で水圧試験(水以外の不燃性の液体又は不燃性の気体を用いて行う試験を含む。)を行ったとき漏えいその他の異常がないものであること。

 2 配管は、取り扱う危険物により容易に劣化するおそれのないものであること。

 3 配管は、火災等による熱によって容易に変形するおそれのないものであること。ただし、当該配管が地下その他の火災等による熱により悪影響を受けるおそれのない場所に設置される場合にあっては、この限りでないものであること。

 4 配管には、省令で定めるところにより、外面の腐食を防止するための措置を講ずること。ただし、当該配管が設置される条件の下で腐食するおそれのないものである場合にあっては、この限りでないものであること。
  また、漏えい点検のための措置を講ずる必要がない地下配管の接合部分については、金属製以外の配管において、金属製配管における溶接と同等の漏えい防止効果が期待できる接合方法によるものがあることから、規定の整備が図られたこと(令第9条第1項第21号ホ関係)。
  今回の整理に伴い、旧令第9条第1項第21号ロに規定する地上配管の外面腐食の防止措置については、令第9条第1項第21号ニの規定に基づき、今後、規則において規定される予定であること。
  なお、この改正に伴う運用方法については、別途通知するものであること。

第3 特定屋外タンク貯蔵所の屋外貯蔵タンクに関する事項
 阪神・淡路大震災における危険物施設の被害状況等を踏まえ、耐震対策の観点から、特定屋外タンク貯蔵所の液体の危険物を移送するための屋外貯蔵タンク(容量が1万キロリットル以上のものに限る。)の配管には、当該配管とタンクとの結合部分の直近に、非常の場合に直ちに閉鎖することができる弁を設けるものとされたこと(令第11条第1項第12号及び第12号の3関係)。
 非常の場合に直ちに閉鎖することができる弁の具体的要件については、今後、規則において規定される予定であること。

第4 給油取扱所における軽油の注油行為に関する事項

 1 給油取扱所の定義に関する事項
  給油取扱所の定義が改められ、給油取扱所において、灯油のほか軽油についても固定した注油設備を使用して容器に詰め替え、又は車両に固定された容量4千リットル以下のタンク(容量二千リットル以下ごとに仕切ったものに限る。以下単に「車両に固定されたタンク」という。)に注入することができるものとされたこと(令第3条第1号関係)。

 2 位置、構造及び設備の技術上の基準に関する事項
  給油取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準に関し、軽油を容器に詰め替え、又は車両に固定されたタンクに注入するための固定注油設備に係る位置、構造及び設備の技術上の基準については、従来の灯油用固定注油設備に係る位置、構造及び設備の技術上の基準と同様の基準が盛り込まれたこと(令第17条第1項第1号の2、第5号、第6号の2から第7号の2まで及び第8号の2から第8号の4まで関係)。

 3 取扱いの技術上の基準に関する事項
  給油取扱所における取扱いの技術上の基準に関し、軽油を容器に詰め替え、又は車両に固定されたタンクに注入するための固定注油設備に係る取扱いの技術上の基準については、従来の灯油用固定注油設備に係る取扱いの技術上の基準と同様の基準が盛り込まれたこと(令第27条第6項第1号ニ、へ及びト関係)。

 4 その他
  今回の改正に伴い、軽油を容器に詰め替え、又は車両に固定されたタンクに注入するための固定注油設備を従来の灯油用固定注油設備と合わせ、「固定注油設備」というものと整理されたこと。

第5 圧縮天然ガスその他のガスの充てん設備を設置する給油取扱所に関する事項
 従来から、圧縮天然ガスを燃料として用いる自動車等に当該圧縮天然ガスを充てんする設備を設ける給油取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準が定められていたが、今回の改正により、圧縮天然ガス以外にも、一定のガスを燃料として用いる自動車等に当該ガスを充てんするための設備を設ける給油取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準について、令第17条第1項及び第2項の基準の特例を定めることができるものとされたこと(令第17条第3項第4号関係)。
 当該給油取扱所において充てんすることができるガスの種類及びその基準の特例については、今後、規則において規定される予定であること。

第6 顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所に関する事項

 1 位置、構造及び設備の技術上の基準に関する事項
  顧客に自ら自動車等に給油させ、又は灯油若しくは軽油を容器に詰め替えさせる給油取扱所(以下「顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所」という。)については、令第17条第1項から第4項までに掲げる基準を超える特例を省令で定めることができるものとされたこと(令第17条第5項関係)。
  顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所の具体的内容及びその基準の特例については、今後、規則において規定される予定であること。
  なお、令第17条第5項により規則において規定される基準は、令第17条第1項から第4項までに掲げる基準を「超える」特例であるため、特例を定めない事項については令第17条第1項から第4項までの基準が適用になるものであること。

 2 取扱いの技術上の基準に関する事項
  顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所における取扱いの基準は、令第27条第6項第1号(カを除く。)の規定の例によるほか、省令で定めるところによるものとされたこと(令第27条第6項第1号の3関係)。
  当該取扱いの基準については、今後、規則において規定される予定であること。

 3 その他
  顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準の特例が定められることに伴い、顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所以外の給油取扱所において顧客に自ら自動車等に給油させ、又は灯油若しくは軽油を容器に詰め替えさせ、若しくは車両に固定されたタンクに注入させてはならない旨が明示されたこと(令第27条第6項第1号カ関係)。

第7 一般取扱所の特例に関する事項
 一般取扱所のうち、その施設における危険物の取扱形態が類型化できる次のものについて、令第19条第1項の基準の特例を定めることができるものとされたこと(令第19条第2項第1号の2、第7号及び第8号関係)。

 1 洗浄の作業を行う一般取扱所その他これに類する一般取扱所

 2 切削油として危険物を用いた切削装置又は研削装置を設置する一般取扱所その他これに類する一般取扱所

 3 危険物以外の物を加熱するため危険物を用いた熱媒体油循環装置を設置する一般取扱所その他これに類する一般取扱所
  これらの一般取扱所の具体的内容及びその基準の特例については、今後、規則において規定される予定であること。

第8 その他の事項

 1 国際単位系に係る計量単位への変更に関する事項
  計量法の改正に伴い、取引又は証明に使用される計量単位を国際単位系に係る計量単位に変更するものとされたことを踏まえ、今回の改正により、製造所等の位置、構造及び設備に係る技術上の基準並びに指定可燃物の範囲に使用する計量単位を国際単位系に係る計量単位に改めるものとされたこと(令第8条の3、第13条第1項第6号、第14条第6号、第15条第1項第2号、第40条第1項の表の(2)の項及び(2)の項並びに別表第4備考第5号ハ及びニ関係)。

 2 その他、今回の改正に合わせ、規定の整備が図られたこと。

第9 施行期日等

 1 施行期日
  改正令は、原則として平成10年3月16日から施行するものとされたが、特定屋外タンク貯蔵所の屋外貯蔵タンクに関する事項及び顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所に関する事項については平成10年4月1日から、国際単位系に係る計量単位への変更に関する事項については平成11年10月1日から施行するものとされたこと(改正令附則第1項関係)。

 2 経過措置

  (1) 平成10年4月1日において現に法第11条第1項の規定により許可を受けている屋外タンク貯蔵所で、その設備が令第11条第1項第12号の3に定める技術上の基準に適合しないものに係る技術上の基準については、同号の規定にかかわらず、平成21年3月31日までの間は、なお従前の例によるものとされたこと(改正令附則第2項関係)。
   なお、この経過措置の期間は、容量1万キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所の開放周期の時期等を考慮の上、設けられたものであるため、保安検査等により屋外貯蔵タンクを開放する際には、令第11条第1項第12号の3に定める技術上の基準に適合する弁を設けるよう指導されたいこと。

  (2) 平成11年10月1日において現に法第11条第1項の規定により許可を受けている製造所、貯蔵所又は取扱所の構造で、同日において現に存するもののうち、令第13条第1項第6号に定める技術上の基準(令第9条第1項第20号ハ(令第19条第1項において準用する場合を含む。)、令第13条第2項若しくは第3項又は令第17条第1項第6号イ若しくは第2項第2号においてその例によるものとされる場合を含む。)、令第14条第6号に定める技術上の基準(令第17条第1項第6号ロにおいてその例によるものとされる場合を含む。)又は令第15条第1項第2号に定める技術上の基準に適合しないものの構造に係る技術上の基準については、これらの規定にかかわらず、なお従前の例によるものとされたこと(改正令附則第3項関係)。

  (3) 改正令(附則第1項各号に掲げる規定については、当該各規定)の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例によるものとされたこと(改正令附則第4項関係)。