通知・通達

消防危第31号 特定屋外タンク貯蔵所における緊急遮断弁に係る運用について (平成10年3月20日)

消防危第31号
平成10年3月20日


各都道府県消防主管部長
  殿



消防庁危険物規制課長     

特定屋外タンク貯蔵所における緊急遮断弁に係る運用について(通知)


 危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令(平成10年政令第31号)及び危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(平成10年自治省令第6号)が公布され、屋外タンク貯蔵所の配管に係る耐震対策が強化された。
 今回の政省令改正は、阪神・淡路大震災の被害状況を踏まえ、容量が1万キロリットル以上の特定屋外タンク貯蔵所のタンク直近の配管に緊急遮断弁の設置を義務づけるものであるが、下記の事項に留意し危険物施設の地震対策を一層推進されるようお願いする。
 なお、貴管下市町村に対してもこの旨示達され、よろしく御指導願いたい。
政令:危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)
規則:危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)




1 政省令改正の趣旨
 阪神・淡路大震災においては、予想し得ない地盤の変位や地震力により、配管に大きな被害が発生した。
 屋外貯蔵タンクにおいては多量の危険物が貯蔵されており、配管が万一破断した場合、危険物が配管破断部から大量に流出するおそれがある。このような事態を防ぐためには、配管の耐震性能を向上させることがもっとも有効な手段であるが、現時点では地震時、特に地盤の液状化による側方流動等の際の地盤の変位量の推定等が困難であり、定量的かつ確実な配管の耐震設計法を確立するに至っていない。このため、危険物の貯蔵量が特に大きな屋外タンク貯蔵所について、非常の場合早急にタンク直近の弁を閉鎖し、タンク内の危険物の流出を防止する目的で緊急遮断弁を設けることとしたものである。

2 改正の内容
 政省令改正の内容は、次のとおりである。

 (1) 対象タンク
  緊急遮断弁の設置が義務づけられたタンクは、液体の危険物を貯蔵する容量1万キロリットル以上の屋外貯蔵タンクであること(政令第11条第1項第12号の3)。

 (2) 緊急遮断弁の取付け位置
  緊急遮断弁の取付け位置は、液体の危険物を移送するための配管とタンクとの結合部分の直近であること(政令第11条第1項第12号の3)。これは、タンク元弁が緊急遮断弁としての機能を有するか、あるいはタンク元弁に隣接した位置に緊急遮断弁を設置することを意味しているものであること。
  なお、危険物を移送するための配管とは、危険物の受け払いのための配管はもとより、危険物をミキシングするための配管、バイパス配管など危険物が配管内を移送されるすべての配管を意味しているものであること。

 (3) 緊急遮断弁の操作機構
  緊急遮断弁は、非常の場合に遠隔操作によって閉鎖する機能を有するとともに、当該操作を行うための予備動力源が確保されたものであること(規則第21条の6)。これは、緊急遮断弁の操作機構には、遮断弁の構造に応じて、液圧、気圧、電気又はバネ等を予備動力源として用いることを要求しているものであり、いずれも停電等主動力が使用不能になった場合においても、これらの予備動力源によって弁が閉鎖できる機能を有することを意味しているものであること。

 (4) 緊急遮断弁の遠隔操作を行う場所
  緊急遮断弁の遮断操作を行う場所は、当該タンクの防油堤外にあり、かつ、予想される危険物の大量流出に対して十分安全な場所であること。

 (5) 緊急遮断弁の設置を要しない配管の構造
  次のような配管の構造を有する場合においては政令第23条を適用し、緊急遮断弁の設置は要しないものであること。
  ア 配管とタンクとの結合部分の直近に逆止弁が設置され、配管が破断した場合においても、タンクから配管側に危険物が流れ得ない構造。
  イ タンク屋根部など、当該タンクの最高液面より上部の位置から配管が出ており、配管が破断した場合においても、タンクから配管側に危険物が流れ得ない構造。