通知・通達

消防予第116号 ガス系消火設備等の設置及び維持に係る留意事項について(平成10年7月17日)

消防予第116号
平成10年7月17日


各都道府県消防主管部長
  殿



消防庁予防課長     

ガス系消火設備等の設置及び維持に係る留意事項に
ついて(通知)




 ガス系消火設備等(ハロンの代替等として開発されているガス系消火剤を使用する消火設備・機器をいう。以下同じ。)の取扱いについては、「ガス系消火設備等に係る取扱いについて」(平成7年5月10日付け消防予第89号)により通知しているところであるが、消火性能及び安全性の確保に係るこれまでの知見の集積、温室効果ガスの排出抑制に係る「京都議定書」の趣旨等を踏まえ、ガス系消火設備等の設置及び維持に係る留意事項を下記のとおりとりまとめたので通知する。
 ついては、貴都道府県内の市町村に対しても、この旨を通知し、運用に遺漏のないよう格別の御配慮をお願いする。



1 設置場所について

 (1) ガス系消火設備等は、消防法施行令第13条第1項(二酸化炭素消火設備又はハロゲン化物消火設備に係る部分に限る。)及び「ハロゲン化物消火設備・機器の使用抑制等について」(平成3年8月16日付け消防予第161号・消防危第88号。以下「抑制通知」という。)第1、1(1)に掲げる防火対象物又はその部分その他これらに類する場所に設置することを原則とすること。

 (2) 前(1)に掲げる場合にあっても、不特定の者が出入りするおそれのある場所については、原則として設置を避けること。
   なお、やむを得ず設置する場合には、消防法施行規則(以下「規則」という。)第19条第4項第17号及び第19号の規定、「全域放出方式の二酸化炭素消火設備の安全対策ガイドラインについて」(平成9年8月19日付け消防予第133号・消防危第85号。以下「ガイドライン」という。)第4及び第10の例によるなど、十分な安全対策を講ずる必要があること。また、ガス系消火剤の毒性、防護区画の位置・構造等を勘案して、保安上の危険性がある場合には、規則第19条第4項第19号の2の規定、ガイドライン第5の例によるなど、防護区画に隣接する部分についても安全対策を講ずる必要があること。

2 設置方法について

 (1) 起動方式
   ガス系消火設備等は、その消火原理、消火剤の特性等により、確実かつ安全な消火のために早期作動及び避難安全の確保がともに重要となることから、起動方式について次の点に留意する必要があること。
  ア 通常の使用形態において無人の防護区画(無人の電気室等)にあっては、次によること。
   (ア) 原則として自動起動とし、点検時など人がいる場合には手動起動とすること。
   (イ) 遅延時間は、極力短いものとすること。
  イ 通常の使用形態において有人の防護区画(オペレーターのいる通信機械室等)にあっては、次によること。
   (ア) 原則として手動起動とし、当該防護区画内の避難安全を確保のうえ起動すること。
   (イ) 遅延時間は避難のための必要最小限のものとすること。特に、防災センターのように特別に訓練された人のみが存する場合など、避難上支障のない場合にあっては、極力遅延時間を短くすること。

 (2) 防護区画の形成
   ガス系消火設備等が消火効果を発揮するためには、防護区画内の消火剤濃度を所定の値に維持することが不可欠であることから、防護区画の形成について次の点に留意する必要があること。
  ア 防護区画には、当該開口部に自動閉鎖装置が設けられている場合及び当該部分から外部に漏れる量以上のガス系消火剤を有効に追加して放出することができる場合を除き、常時開となっている開口部を設けないこと。特に、高さのある防護区画(立体駐車場等)について空気より比重の大きいガス系消火剤を用いる場合にあっては、外気流入の原因となる上部へのガラリ等の設置を避けること。
  イ 防護区画に設ける開口部は、人の出入り、換気等のための必要最小限のものとすること。特に、大きい寸法とすることが可能な種類のもの(シャッター等)については、自動閉鎖装置が設けられている場合であっても、その寸法を必要以上に大きいものとしないよう留意するとともに、速やかに降下させることができるものを選定する必要があること。
  ウ 防護区画に空調設備、換気設備、火気使用設備等が設けられている場合にあっては、これらの設備をガス系消火設備等の作動と連動して制御する必要があること。特に、多量の給排気を伴うとともに、当該機器の急激な停止が難しいもの(ガスタービン等)にあっては、給排気に専用のダクトを設ける、速やかに停止しても支障を生じない構造のものとする等の措置を講じる必要があること。

 (3) 消火後の防護区画内の気体には当該消火剤のほか火災の際に生じた有害物質が含まれているおそれがあることから、消火後の防護区画内における安全性を確保するために、放出された消火剤等を排出するための措置を講じる場合にあっては、安全な場所(人が直接吸入するおそれがない場所、高濃度の有害物質が滞留するおそれがない場所等)に排出することができるものとする必要があること。

3 維持管理等について

 (1) 常時十分な点検整備を行い、配管の腐食による漏えい等が生じないようにすること。
   また、ガス系消火設備等の工事、整備、点検等を行うに当たっては、抑制通知第3、4の例によるなど、誤放出防止対策を講ずる必要があること。

 (2) ガス系消火設備等については、財団法人日本消防設備安全センターとハロンバンク推進協議会の連携により設置状況に係るデータベースが整備されているところであるが、その設置状況に変更(撤去を含む。)がある場合には、ハロンバンク推進協議会に情報提供するよう関係者の協力を求めること。

 (3) ガス系消火剤のうち温室効果ガスとして排出抑制の対象となっているもの(HFC)については、容器、取扱説明書事項等に使用・廃棄に係る留意事項を表示するとともに、廃棄に際して有効に回収、再利用、破壊等を行い、その排出抑制に努めるよう関係団体を指導しているところであるが、消防機関においても、防火対象物の関係者にその周知徹底を図ること。