通知・通達

消防予第118号 消防法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(平成10年7月24日)

消防予第118号
平成10年7月24日


各都道府県消防主管部長
  殿



消防庁予防課長     

消防法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(通知)


 消防法施行規則の一部を改正する省令(平成10年自治省令第31号。以下「31号省令」という。)が平成10年7月24日に公布された。今回の改正は、ラック式倉庫に設けるスプリンクラー設備に係る技術基準について合理化を図ること、放送設備のスピーカーについて性能に応じた設置方法を設定すること等を目的として行われたものである。
 また、これに伴い所要の細目規定を整備するため、同日付けで、ラック式倉庫のラック等を設けた部分におけるスプリンクラーヘッドの設置に関する基準(平成10年消防庁告示第5号。以下「5号告示」という。)が制定、公布されるとともに、非常警報設備の基準の一部を改正する告示(平成10年消防庁告示第6号。以下「6号告示」という。)が公布された。
 ついては、下記事項に留意のうえ、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨を通知し、その運用に遺漏のないよう格別の御配慮をお願いする。



第1 消防法施行規則の一部改正について

 1 改正事項

  (1) ラック式倉庫に設けるスプリンクラー設備に係る技術基準の合理化に関する事項
    平成7年11月に発生した埼玉県に存する製缶工場のラック式倉庫火災を契機に、学識経験者等から構成される委員会で行われた検討結果等を踏まえ、ラック式倉庫に設けるスプリンクラー設備について、消火能力の充実等その技術基準の合理化が図られたこと。
   ア ラック式倉庫に設けるスプリンクラーヘッドの種別、設置方法等について、次のように規定されたこと(31号省令による改正後の消防法施行規則(以下「新規則」という。)第13条の5関係)。
    (ア) ラック式倉庫に設けるスプリンクラーヘッドの種別は、標準型ヘッド(有効散水半径が2.3であって、ヘッドの呼びが20のものに限る。)とされたこと。
    (イ) ラック式倉庫は、収納物及び収納容器、梱包材等の種類及び数量に応じ、4つの等級に区分することとされたこと。
    (ウ) ラック等を設けた部分には原則として水平遮へい板を設けることとされ、ラック式倉庫の等級及び水平遮へい板の設置状況に応じたスプリンクラーヘッドの設置方法(水平距離、設置高さの間隔等)が規定されたこと。
   イ ラック式倉庫に設けるスプリンクラー設備の水源水量及び性能について、次のように規定されたこと(新規則第13条の6関係)。
    (ア) スプリンクラー設備の水源水量の算定について、ラック式倉庫の等級及び水平遮へい板の設置状況に応じた単位水量が設定されるとともに、ラック式倉庫の等級及びスプリンクラーヘッドの感度種別に応じた同時開放個数が設定されたこと。
    (イ) スプリンクラー設備の性能について、放水圧力が一重量キログラム毎平方センチメートル以上で、かつ、放水量が114リットル毎分以上で放水することができるものとされたこと。
   ウ ラック式倉庫に設けるスプリンクラー設備に関する基準の細目について、次のように規定されたこと(新規則第14条関係)。
    (ア) 制御弁及び自動警報装置の発信部は、配管の系統ごとに設けることとされたこと。
    (イ) 流水検知装置は、予作動式以外のものとすることとされたこと。
    (ウ) ポンプの吐出量は、ラック式倉庫の等級及びスプリンクラーヘッドの感度種別に応じた同時開放個数に、130リットル毎分を乗じて得た量以上の量とすることとされたこと。

  (2) 放送設備のスピーカーの性能に応じた設置方法の設定に関する事項
    放送設備のスピーカーは、原則として居室を単位とする放送区域ごとに、その面積に応じた一定の種類(L級、M級又はS級)のものを設けることとされ、その設置間隔等も一律に定められていたが(新規則第25条の2第2項第3号イ及びロ)、今回の改正により、スピーカーの性能、設置状況等に応じ、警報内容の確実な伝達に必要十分な設置方法とすることができる規定(同号ハ)が次のとおり整備され、従来の規定との選択が可能とされたこと(新規則第25条の2第2項第3号関係)。
   ア 階段又は傾斜路以外の場所に設置する場合にあっては、次によることとされたこと(新規則第25条の2第2項第3号ハ(イ)及び(ロ)関係)。
    (ア) 音量の確保の観点から、スピーカーは、放送区域ごとに、次の式により求めた音圧レベルが当該放送区域の床面からの高さが1メートルの箇所において75デシベル以上となるように設けることとされたこと。

     

     Pは、音圧レベル(単位 デシベル)
     pは、スピーカーの音響パワーレベル(単位 デシベル)
     Qは、スピーカーの指向係数
     rは、当該箇所からスピーカーまでの距離(単位 メートル)
     αは、放送区域の平均吸音率
     Sは、放送区域の壁、床及び天井又は屋根の面積の合計(単位 平方メートル)
    (イ) 明瞭度の確保の観点から、スピーカーは、当該放送区域の残響時間が3秒以上となるときは、当該放送区域の床面からの高さが1メートルの箇所から一のスピーカーまでの距離が次の式により求めた値以下になるように設けることとされたこと。

      

     rは、当該箇所からスピーカーまでの距離(単位 メートル)
     Qは、スピーカーの指向係数
     Sは、放送区域の壁、床及び天井又は屋根の面積の合計(単位 平方メートル)
     αは、放送区域の平均吸音率
   イ 階段又は傾斜路に設置する場合にあっては、垂直距離15mにつきL級のものを1個以上設けることとされたこと(新規則第25条の2第2項第3号ハ(ハ)関係)。

  (3) その他の事項
   ア ラック式倉庫及び指定可燃物貯蔵・取扱施設に設けるスプリンクラー設備の同時開放個数について、感度種別に応じた緩和が図られたこと(新規則第13条の6第1項第1号関係)。
   イ 消防用設備等の維持台帳について、従前からの運用を踏まえ、編冊する書類が明確化されたこと(新規則第31条の4第2項関係)。
   ウ 消防用設備等設置届出書及び消防用設備等着工届出書について、従前からの運用を踏まえつつ、工事の種別が整合化されたこと(新規則別記様式第1号の2の3及び別記様式第1号の7関係)。
   エ その他所要の規定の整備が行われたこと。

 2 施行期日等

  (1) 施行期日
    31号省令は、公布の日から施行することとされたこと。ただし、第13条の2第1項の改正規定、第13条の5の改正規定、第13条の6の改正規定及び第14条の改正規定は、平成11年4月1日から施行することとされたこと(31号省令附則第1項関係)。

  (2) 経過措置
    31号省令の施行の際現に存する改正前の消防法施行規則別記様式第1号の2の3及び別記様式第1号の7による消防用設備等設置届出書及び消防用設備等着工届出書は、新規則別記様式第1号の2の3及び別記様式第1号の7にかかわらず、当分の間、これを使用することができることとされたこと(31号省令附則第2項関係)。

第2 ラック式倉庫のラック等を設けた部分におけるスプリンクラーヘッドの設置に関する基準の制定について

 1 内容
   新規則第13条の5第3項第1号ハ及び第4号の規定に基づき、ラック式倉庫のラック等を設けた部分におけるスプリンクラーヘッドの設置に関する基準が、次のように制定されたこと。

  (1) 所要の用語の意義が定められたこと(5号告示第2関係)。

  (2) ラック式倉庫の等級及び水平遮へい板の設置状況に応じ、ラック等を設けた部分におけるスプリンクラーヘッドの設置位置、設置間隔、他のスプリンクラーヘッドとの位置関係等が定められたこと(5号告示第3から第5まで関係)。

 2 施行期日
   5号告示は、平成11年4月1日から施行することとされたこと(5号告示附則関係)。

第3 非常警報設備の基準の一部改正について

 1 改正事項
   新規則第25条の2第2項第3号ハ(イ)の規定において、スピーカーの音響パワーレベルに応じた設置方法が導入されたことに伴い、新規則第25条の2第3項の規定に基づき、非常警報設備の基準(昭和48年消防庁告示第6号)の一部が次のように改正されたこと。

  (1) スピーカーの音響パワーレベルの測定方法に係る規定が整備されたこと(6号告示による改正後の非常警報設備の基準(以下「新非常警報設備基準」という。)第4第6号(1)関係)。

  (2) 非常ベル及び自動式サイレンの音響装置にあっては音圧、放送設備のスピーカーにあっては種類(L級、M級又はS級)又は音響パワーレベルを表示することとされたこと(新非常警報設備基準第5第5号関係)。

 2 施行期日等

  (1) 施行期日
    6号告示は、公布の日から施行することとされたこと(6号告示附則第1項関係)。

  (2) 経過措置
    6号告示の施行の際現に存する非常ベル若しくは自動式サイレンの音響装置又は放送設備のスピーカーのうち、新非常警報設備基準第5第5号の規定に適合しないものに係る技術上の基準については、この規定にかかわらず、当分の間、なお従前の例によることとされたこと(6号告示附則第2項関係)。
    なお、これには、6号告示の施行の際現に存する防火対象物若しくはその部分又は現に新築、増築、改築、移転、修繕若しくは模様替えの工事中の防火対象物若しくはその部分における放送設備のスピーカーのほか、この時点において現に製造されている放送設備のスピーカーが該当するものであること。

  (3) 運用上の留意事項
    新非常警報設備基準第5第5号の規定に基づく放送設備のスピーカーの表示については、新規則第25条の2第2項第3号イ及びロの規定によりスピーカーを設置する場合にあっては種類を、同号ハの規定による場合にあっては音響パワーレベルを表示することとすること。

第4 その他
   今回の法令改正等を踏まえ、技術基準の統一的かつ円滑な運用を図るとともに、防火対象物の防火安全対策の充実に資するため、ラック式倉庫の防火安全対策及び放送設備のスピーカーの設置について、ガイドラインを示すこととしていること。