通知・通達

消防予第126号 舞台幕の取扱いについて(平成10年8月4日)

消防予第126号
平成10年8月4日


各都道府県消防主管部長
  殿



消防庁予防課長     

舞台幕の取扱いについて(通知)


  消防法第8条の3の規定に基づく防炎対象物品については、消防法施行令第4条の3及び消防法施行規則第4条の3の規定により、どん帳その他舞台において使用する幕(以下「舞台幕」という。)を含め、防炎性能の基準等が定められている。
 近年、舞台用機器、利用形態の多様化等により、特定の条件下においては、所定の防炎性能を有する舞台幕であっても着火及び燃焼の継続・拡大が起きた火災事例が発生したことから、こうした現象の解明のため、財団法人日本防炎協会において「舞台幕火災調査委員会」が設置され、検討が行われてきたところである。
 今般、当該検討結果を踏まえ、舞台幕の取扱いについて、下記のとおりとりまとめたので、その運用について配慮されるとともに、貴都道府県内の市町村に対しても、この趣旨を十分伝えられ、査察等の機会において舞台関係者等に対して周知が図られるよう、よろしくお願いする。



1 防炎加工された舞台幕について
  防炎加工された舞台幕は、通常の使用状態においては特段の問題はないが、以下のような特定の条件下にあっては、着火及び燃焼の継続・拡大のおそれがある。
 (1) 高出力の照明器具が接触・近接すること等により、継続的に過度の加熱が行われる場合
 (2) 幕が重なったり束ねられている等、熱が蓄積しやすい状態にある場合

2 舞台において使用される照明器具について
 (1) 至近距離で舞台幕を照射する際に、高出力で収光性の高い舞台用照明器具(ハロゲンランプを使用したスポットライト等)を使用した場合は、面積当たりの照射熱量が大きいため、定められた最小照射距離を守らない等、使用法を誤ると着火源となる可能性がある。また、光学的にホットスポット(光の焦点)がある照明器具は、特に注意を要する。
 (2) 照明器具の光源表面が舞台幕に接触した場合、容易に着火するため、舞台幕の開閉時に接触する可能性が高い舞台袖に設置された照明器具や、舞台幕の直下付近に設置されたローホリゾントライト等の床置式照明器具については、十分な注意が必要である。

3 舞台幕を使用する場合における留意事項
  1(1)及び(2)に示す条件を現出させないため以下のことに留意すること。
 (1) セッティング時における舞台幕と照明器具との最小照射距離及び離隔距離を十分に確保すること。特に可搬式の照明器具並びに追加又は移動して設置された照明器具については、舞台幕との距離、開閉の際の引っかかり等に十分注意すること。
 (2) 照明器具が衝撃等によって向きが変わり、舞台幕を至近距離で照射することがないよう、器具の固定を確実に行うこと。
 (3) 舞台幕の昇降、開閉動作時には、照明器具に接触しないよう常に監視を怠らないこと。
 (4) 防炎加工された舞台幕であっても着火の可能性があることに留意し、万が一に備え、初期消火体制を確立すること。

4 その他
  「舞台幕火災調査委員会」における実験の結果、素材が「貫八別珍」等の綿素材等であって当該素材に防炎処理を行う舞台幕よりも、原糸原料の合成反応の段階から難燃化された素材の舞台幕の方が、熱分解温度が高く、着火の可能性は低いことが明らかになったので、参考までにお伝えする。