消防予第53号 平成11年3月17日
消防庁次長 
 
消防法施行令の一部を改正する政令等の施行について (通知)
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消防法施行令の一部を改正する政令(平成11年政令第42号。以下「改正令」という。)及び消防法施行規則の一部を改正する省令(平成11年自治省令第5号。以下「改正規則」という。)が平成11年3月17日に公布された。 今回の改正は、最近における規制緩和の要請、消防用設備等に係る技術の向上等にかんがみ、スプリンクラー設備、誘導灯及び誘導標識、排煙設備、連結散水設備並びに連結送水管について、性能に応じた設置方法の設定や基準の合理化等を行ったものである。 また、これに伴い所要の細目規定を整備するため、同日付けで、誘導灯及び誘導標識の基準の全部を改正する件(平成11年消防庁告示第2号。以下「誘導灯告示」という。)が公布された。 貴職におかれては、下記事項に留意のうえ、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨を通知し、その運用に遺漏のないよう格別の御配慮をお願いする。
記
第1 スプリンクラー設備に関する事項
1 スプリンクラーヘッドの設置間隔に係る基準の合理化 防火対象物の各部分からスプリンクラーヘッドまでの水平距離については、設置場所の用途・構造とスプリンクラーヘッドの種別(設置基準上は二区分)に応じ一律に規定されていたが、個別のスプリンクラーヘッドの性能に応じて拡大することができるよう合理化が図られたこと。
(1) 高感度型ヘッドの定義について、「閉鎖型スプリンクラーヘッドのうち標準型ヘッドで感度種別が一種であり、かつ、有効散水半径が2.6以上であるもの」として、その範囲が拡大されたこと。(改正規則による改正後の消防法施行規則(以下「規則」という。)第13条の2第2項関係)
(2) 高感度型ヘッドについて、防火対象物の各部分からの水平距離が、現行の一律の数値から「当該スプリンクラーヘッドの性能に応じ自治省令で定める距離」とされたこと。(改正令による改正後の消防法施行令(以下「令」という。)第12条第2項第2号イ関係)
(3) (2)の自治省令で定める距離について、スプリンクラーヘッドの有効散水半径に、防火対象物又はその部分の用途、構造又は設備に応じた係数を乗じる算定方法が定められたこと。(規則第13条の2第3項並びに第13条の5第5項第2号及び第7項第2号関係)
2 有料老人ホームに係るスプリンクラー設備の設置に関する基準の見直し 平成6年9月の「シルバーサービスに関する調査結果に基づく勧告」(総務庁)において、「自ら避難することが困難な要介護者が入居する有料老人ホームにおけるスプリンクラーの設置基準の見直し」を行うべき旨の勧告がなされたことを契機に、有料老人ホームに係るスプリンクラー設備等の実態調査の結果等を踏まえ、「有料老人ホーム(主として要介護状態にある者を入所させるものに限る。)」に係るスプリンクラー設備の設置について、防火安全上の観点から、特別養護老人ホーム等と同様の取扱いとなるよう見直しが図られたこと。(規則第13条第2項関係) なお、「主として要介護状態にある者を入所させるもの」とは、介護居室の定員の割合が一般居室を含めた施設全体の定員の半数以上のものをいうものであること。
第2 誘導灯及び誘導標識に関する事項 新しい機能、性能等を有する誘導灯の開発、建築物の用途及び形態の多様化等に対応するため、「規制緩和推進三か年計画」に基づき、誘導灯及び誘導標識に係る技術基準について、全面的な見直しが図られたこと。
1 政令改正に関する事項
(1) 避難口誘導灯の設置位置は、「避難口の上部に」限定されていたが、「避難口に、避難上有効なものとなるように」設ければよいこととされたこと。(令第26条第2項第1号関係)
(2) 通路誘導灯について、他法令による避難経路の照度の確保や省エネルギータイプの誘導灯(高輝度誘導灯)の開発・普及等を踏まえ、照度に係る規定が削除されるとともに、避難口誘導灯と表示内容、色彩及び設置方法に係る表現の整合が図られたこと。(令第26条第2項第2号関係)
(3) 誘導標識についても、避難口誘導灯と表示内容、色彩及び設置方法に係る表現の整合が図られたこと。(令第26条第2項第5号関係)
2 省令改正に関する事項
(1) 誘導灯及び誘導標識の設置を要しない防火対象物又はその部分の拡大 誘導灯及び誘導標識の設置を要しない防火対象物又はその部分の要件については、主要な避難口の視認性及び主要な避難口までの歩行距離により規定されているが、通路誘導灯について、主要な避難口までの歩行距離が緩和されるとともに、設置を要しない部分として非常用の照明装置が設けられている階段又は傾斜路が追加されたこと。また、防火対象物の用途に応じて設定されていた主要な避難口までの歩行距離について見直しが図られるとともに、誘導灯及び誘導標識の設置免除の単位が「階」であることが明確化されたこと。(規則第28条の2関係)
(2) 誘導灯及び誘導標識の設置及び維持に関する技術上の基準の細目の見直し 誘導灯及び誘導標識の設置及び維持に関する技術上の基準の細目について、現行基準による一律の設置間隔や誘導灯のサイズに係る規定等を定め、誘導灯の見え方に応じた設置方法とされるとともに、新しい機能、性能等を有する誘導灯に関する技術基準を整備することとしたこと。 ア 誘導灯の区分について、従前の「大形」、「中形」及び「小形」の区分から、新たに「A級」、「B級」及び「C級」の区分として、これまで特例により設置が認められていた高輝度誘導灯の導入が図られるとともに、表示面の横寸法と縦寸法の比が原則として自由化されたこと。(規則第28条の3第1項関係) なお、現行の区分と改正後の区分の対応は、次表のとおりであること。
現行 |
改正後 |
従来タイプの誘導灯 |
高輝度誘導灯 |
大形(比較的サイズ大) |
40形 |
A級 |
大形(比較的サイズ小)
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20A形 |
B級 |
中形 |
20B形 |
小形 |
10形 |
C級 |
※概念的には上表のような対応関係となるが、表示面の明るさや横寸法と縦寸法の比などについて、規定の仕方が異なることに注意。 イ 誘導灯の寸法等に応じた有効範囲が設定されるとともに、当該誘導灯の有効範囲により設置間隔を拡大することが可能とされたこと。また、避難口誘導灯と通路誘導灯の位置関係について、明確化が図られたこと。(規則第28条の3第2項及び第3項関係) ウ 誘導灯の設置位置について、避難口の下面又は床面からの高さや壁体から表示面までの距離を一律に定めていた規定が削除されたこと。(改正規則による改正前の消防法施行規則(以下「旧規則」という。)第28条の3第1項第3号及び第4号関係) エ 誘導灯を消灯することができる場合の要件が明確化されたこと。(規則第28条の3第4項第2号関係) オ 設置する誘導灯のサイズについては、誘目性(気づきやすさ)の確保の観点から、防火対象物又はその部分の用途及び規模に応じて「大形」のものに限定される場合と「大形」又は「中形」のものに限定される場合が存していたが、サイズの限定が「A級」又は「B級」に緩和されるとともに、当該規定の対象となる防火対象物の規模が一部緩和され、これまでよりも小さいサイズの誘導灯の設置が可能とされたこと。(規則第28条の3第4項第3号関係) カ 階段又は傾斜路以外の部分に設ける通路誘導灯について照度に係る規定が削除されたこと。(規則第28条の3第4項第4号関係) キ 誘導灯に点滅機能又は音声誘導機能を設ける場合の要件が明確化されたこと。(規則第28条の3第4項第6号関係) ク 非常電源について、「蓄電池設備によるものとし、その容量を当該設備を有効に20分間作動できる容量以上とする」こととされていたが、消防庁長官が定める要件に該当する大規模・高層の防火対象物の主要な避難経路(階段、避難階の廊下・通路等)に設けるものにあっては、容量を60分間以上(20分間を超える時間における作動に係る容量にあっては、自家発電設備によるものを含む。)とされたこと。(規則第28条の3第4項第10号関係) ケ 誘導標識の設置位置について、現行基準において避難口の下面又は床面からの高さを一律に定めていた規定が削除されたこと。(旧規則第28条の3第2項第1号関係)
3 告示改正に関する事項 規則で委任することとされた事項について規定されるとともに、誘導灯及び誘導標識の構造、性能等について、基準の性能規定化、JIS規格との整合化等が図られたこと。
第3 排煙設備に関する事項 消防法及び建築基準法においては、排煙設備についてそれぞれ独自の観点から規定が設けられているが、関係者の負担を軽減するため、「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」に基づく排煙設備の建築基準法との整合の一環として、両法の趣旨の違いを踏まえつつ、消防法施行令の技術基準について見直しが図られたこと。
1 令別表第1(1)項に掲げる防火対象物(劇場、公会堂等)の舞台部について、設置対象となる床面積が200平方メートルから500平方メートルに緩和されたこと。(令第28条第1項第2号関係)
2 排煙設備の自動起動装置の起動要件については、「火災により温度が急激に上昇した場合」とされていたが、煙濃度の上昇等により起動することとしてもさしつかえないことから、「火災の発生を感知した場合」とされたこと。(令第28条第2項第2号関係)
3 火災により発生した煙を有効に排除するため、煙に接する部分の材質について、「排煙口、風道その他煙に接する部分は、煙の熱及び成分により機能に支障を生ずるおそれのない材料で造ること」とされたこと。(令第28条第2項第3号関係)
4 排煙設備の設置を要しない場合の要件については、「排煙上有効な窓その他の開口部があるとき」に限定されているが、「排煙上有効な窓等の開口部が設けられている部分その他の消火活動上支障がないものとして自治省令で定める部分」には、「排煙設備を設置しないことができる」こととして、規則に委任する免除要件の範囲が拡大されたこと。(令第28条第3項関係)
第4 連結散水設備に関する事項 熱や煙の滞留による消火活動の困難性にかんがみ、一定規模以上の地下階については、消防隊が火点に接近しなくても散水することが可能な連結散水設備の設置が義務づけられているが、消火活動上支障がない場合にあっては、連結送水管による代替が可能となるよう措置が講じられたこと。
1 連結送水管をその技術基準に適合するように設置したときは、「消火活動上支障がないものとして自治省令で定める防火対象物の部分」には、連結散水設備を設置しないことができることとされたこと。(令第28条の2第4項関係)
2 1の消火活動上支障がないものとして自治省令で定める部分として、排煙設備を令第28条に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置した部分及び規則第29条の規定に適合する部分(排煙設備の設置を要しない防火対象物の部分)が定められたこと。(規則第30条の2の2関係)
第5 連結送水管に関する事項 連結送水管の主管の内径については、消防隊の消火活動において比較的多量の棒状放水(呼称65のホースの使用)が行われることを前提に定められているが、近年、水損防止の観点から高圧・小水量の放水用器具(いわゆる「フォグガン」)の使用が一般的になっていることから、高圧・小水量の放水用器具を使用した場合の規定を整備して合理化が図られたこと。 また、地階を除く階数が11階以上の建築物については、消防隊の消火活動を容易にするため、放水用器具を格納した箱を放水口に附置することとされているが、消防隊の活用状況を勘案し、その免除要件が整備されたこと。
1 連結送水管の主管の内径については、現行基準において100ミリメートル以上に限定されていたが、「自治省令で定める場合」(消防長又は消防署長が、その位置、構造及び設備の状況並びに使用状況から判断して、フォグガン等(フォグガンその他の霧状に放水することができる放水用器具)のうち定格放水量が200リットル毎分以下のもののみを使用するものとして指定する防火対象物において、主管の内径が水力計算により算出された管径以上である場合)にあっては、100ミリメートル未満のものでもよいとされたこと。(令第29条第2項第2号ただし書及び規則第30条の4第1項関係)
2 地階を除く階数が11以上の建築物に設置する連結送水管のポンプの吐出量について、一律の数値(800リットル毎分)をベースとした算定方法から、規則第30条の4第1項の指定を受けた防火対象物にあっては、水力計算に用いた量をベースとした算定方法によることとされたこと。(規則第31条第6号イ(イ)関係)
3 連結送水管の放水用器具を格納した箱については、現行基準において地階を除く階数が11以上の建築物に設置が義務づけられているが、「放水用器具の搬送が容易である建築物として自治省令で定めるもの」(非常用エレベーターが設置されており、消火活動上必要な放水用器具を容易に搬送することができるものとして消防長又は消防署長が認める建築物)については、設置を要しないこととされたこと。(令第29条第2項第4号ハただし書及び規則第30条の4第2項関係)
4 送水口及び放水口の呼称並びに配管の材質については、従前から消防長又は消防署長が指定する場合にあっては当該指定によることとされていたが、これらの規定がフォグガン等の使用に対応するためのものであることが明確化されたこと。(規則第31条第3号及び第5号ロ関係)
第6 その他の事項
1 規則第28条の3の改正に伴い、操作盤の基準(平成9年消防庁告示第2号)及び操作盤の設置免除の要件を定める件(平成9年消防庁告示第3号)についても、規定の整備が図られたこと。
2 その他所要の規定の整備が図られたこと。
第7 施行期日等
1 施行期日
(1) 改正令及び改正規則は、平成11年4月1日から施行することとされたこと。ただし、有料老人ホームに係るスプリンクラー設備の設置に関する基準の見直し(規則第13条第2項)、誘導灯の設置に関する基準の見直し及びそれに伴う所要の規定整備(規則第3条第2項、第28条の2及び第28条の3)並びに排煙設備の建築基準法との整合化(令第28条)については、平成11年10月1日から施行することとされたこと。(改正令附則及び改正規則附則第1項関係)
(2) 誘導灯告示並びに操作盤の基準の一部を改正する件(平成11年消防庁告示第3号)及び操作盤の設置免除の要件を定める件の一部を改正する件(平成11年消防庁告示第4号)は、平成11年10月1日から施行することとされたこと。(誘導灯告示附則第1項等関係)
2 経過措置
(1) 平成11年10月1日において現に存する有料老人ホーム若しくはその部分又は現に新築、増築、改築、移転、修繕若しくは模様替えの工事中の有料老人ホーム若しくはその部分におけるスプリンクラー設備のうち、規則第13条第2項の規定に適合しないものに係る技術上の基準については、同項の規定にかかわらず、平成19年9月30日までの間、なお従前の例によることとされたこと。(改正規則附則第2項関係)
(2) 平成11年10月1日において現に存する防火対象物若しくはその部分又は現に新築、増築、改築、移転、修繕若しくは模様替えの工事中の防火対象物若しくはその部分における誘導灯のうち、規則第28条の3第1項から第4項までの規定に適合しないものに係る技術上の基準については、これらの規定にかかわらず、なお従前の例によることとされたこと。(改正規則附則第3項関係) また、平成11年10月1日において現に存する防火対象物又は現に新築、増築、改築、移転若しくは模様替えの工事中の防火対象物における誘導灯及び誘導標識のうち、誘導灯告示第4の規定に適合しないものに係る技術上の基準については、この規定にかかわらず、なお従前の例によることとされたこと。(誘導灯告示附則第2項関係)
3 運用上の留意事項
(1) 既存の有料老人ホームについては、改正省令附則第2項のよる経過措置のほか、消防用設備等の技術上の特例基準の適用について、別途通知する予定であること。
(2) 誘導灯の設置については、技術基準の統一的かつ円滑な運用を図るとともに、防火対象物の防火安全対策の充実に資するため、ガイドラインを示す予定であること。
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