通知・通達

消防安第43号 新築の工事中の建築物等に係る防火管理及び防火管理者の業務の外部委託等に係る運用について

消防安第43号
                             消平成16年3月26日


各都道府県消防主管部長 殿


消防庁防火安全室長     




新築の工事中の建築物等に係る防火管理及び防火管理者の業務の外部委託
等に係る運用について


   消防法施行令の一部を改正する政令(平成16年政令第19号。以下「改正政令」という。)及び消防法施行規則の一部を改正する規則(平成16年総務省令第54号。以下「改正省令」という。)により新たに規定された大規模な新築の工事中の建築物及び建造中の旅客船(以下「新築の工事中の建築物等」という。)に係る防火管理の新たな義務付け並びに防火管理者の業務の外部委託等に係る運用上の留意事項を下記のとおりまとめましたので、その適正な運用に十分配慮されるようお願いします。
   なお、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨周知されるようお願いします。




第一    新築の工事中の建築物等に係る防火管理に関する事項
   管理権原者について
 新築の工事中の建築物等は、発注者に引き渡される前の状態であり、当該新築の工事中の建築物等の管理権原者は、工事現場の作業管理、工事に関する物品管理等に係る管理権原を有する者である受注者(建築会社、造船会社等)がなるものと考えられること。なお、新築の工事中の建築物において、建築基準法(昭和25年法律第201号)第7条の6第1項第1号の仮使用の承認を受けた部分の管理権原者は、所有者、占有者等の当該部分の管理について権原を有する者がなるものと考えられること。
新築の工事中の建築物の管理権原者は、施主からの典型的な発注の方法に応じ、別紙1(PDF)のとおりと考えられること。
 また、分離発注方式で行われる新築工事の場合、管理権原が分かれることとなるが、同一建築物内で各種の工事が行われることとなることから、防火管理者間で十分な連携を行うことが望ましいこと。なお、新築の工事中の建築物等に係る防火管理については、消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第8条の2の規定は適用されないものであること(改正政令による改正後の消防法施行令(以下「令」という。)第1条の2第3項第2号及び第3号関係)。
   建造中の旅客船について
 防火管理を義務付けられた建造中の旅客船とは、船舶安全法(昭和8年法律第11号)第8条に規定する旅客船(12人を超える旅客定員を有する船舶をいう。)であること。また、「甲板」とは、船舶に水平に設置されている仕切りであり、かつ、建築物の床に該当する部分であること(令第1条の2第3項第3号関係)。
  ※甲板数11以上の旅客船の例
  パシフィックビーナス  甲板数12
(26,518総トン、全長183.4m、旅客定員696名)
  飛鳥          甲板数11
(28,856総トン、全長192.8m、旅客定員592名)
 防火管理者の資格について
 新築の工事中の建築物等に係る防火管理者の資格を有する者は、当該防火対象物において防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にある者であり、かつ、令第3条第1項第1号イからニまでのいずれかに該当する者であること(令第3条第1項関係)。
 防火管理が義務付けられる期間について
 (1)   新築の工事中の建築物関係
 新築の工事中の建築物において防火管理が義務付けられる期間は、次のいずれかのときから、発注者に引き渡されるまでであって、かつ、建築物内部において工事(電気工事、設備工事、内装仕上工事等)を行っているものであること。
 外壁及び床又は屋根で囲まれた部分が11階以上であり、かつ、当該部分の延べ面積の合計が1万平方メートル以上となったとき
 外壁及び床又は屋根で囲まれた部分の延べ床面積が5万平方メートル以上となったとき
 地階の外壁及び床で囲まれた部分の床面積の合計が5千平方メートル以上となったとき
 なお、当該新築の工事中の建築物において、建築基準法第7条の6第1項第1号の仮使用の承認を受けた部分についても、上記期間内であれば、防火管理が義務づけられるものであること。
また、今回対象となる建築物については、法第7条に規定する消防長又は消防署長の同意を行う必要があり、その際に、当該同意の申請者に対し、当該同意とは別に、防火管理を義務付けられることとなる予定時期を事前に確認しておくこと。
新築の工事中の建築物の工程例を別紙2(PDF)に示すこと(改正省令による改正後の消防法施行規則(以下「規則」という。)第1条の2関係)。
 (2)   建造中の旅客船関係
 建造中の旅客船において防火管理の義務付けられる期間は、進水後、ぎ装を行う間であること。なお、ぎ装とは、建造中の船舶を進水させた後に行う旅客船の設備等を取り付けるための工事をいうこと。
 建造中の旅客船の工程例を別紙3(PDF)に示すこと(規則第1条の2関係)。
 収容人員について
 収容人員の算定方法は、次のとおりであること(規則第1条の3関係)。
 (1)   新築の工事中の建築物のうち、建築基準法第7条の6第1項第1号の仮使用の承認を受けたもの
次のア及びイに掲げる数を合算して算定すること。
 仮使用の承認を受けていない部分 
 従業者の数
 仮使用の承認を受けた部分    
 仮使用の承認を受けた部分の用途に応じ、それと同等の用途の防火対象物の収容人員の算定方法により算定した数(例えば、店舗として利用する場合は、従業者の数及び主として従業者以外の者の使用に供する部分について算定した数を合算して算定すること。)
 (2)   新築の工事中の建築物((1) の建築物を除く。)及び建造中の旅客船
 従業者の数により算定すること。また、「従業者の数」は、工事期間中で1日の工事従事者の数が最大となる数とすること。
 消防計画の作成について
 新築の工事中の建築物等における防火管理について、消防計画に定める事項が規定されたところであるが、当該事項に関する作成要領は、別紙4(PDF)によること。
なお、建築基準法第7条の6第1項第1号の仮使用の承認を受けた部分にあっては、規則第3条第1項第1号に掲げる事項について作成するとともに、仮使用承認を受けた部分以外の部分については、必要に応じ適切に見直しを行うこと。(規則第3条第1項関係)。
 その他
 (1)   新築の工事中の建築物が、建築基準法第7条の6第1項第1号に基づく建築主事等への仮使用の承認の申請を行う場合には、建築基準法施行規則(昭和25年建設省令第40号)第4条の16に規定する安全計画書を提出することとされているが、当該安全計画書は消防計画と内容的に重複する事項が多いことから、重複部分については、安全計画書を消防計画の一部とみなす等関係者に過度の負担が生ずることがないように留意すること。
 (2)   新築の工事中の建築物が、建築基準法第7条の6第1項第1号に基づく特定行政庁等による仮使用の承認を受けた場合には、管轄消防本部と当該特定行政庁等が相互に協力・連携して防火管理の適正な指導を行うよう努めること。


第二    防火管理者の業務の外部委託等に関する事項
 防火管理者は、防火対象物は自らが守るという防火管理の本旨に基づき、当該防火対象物において防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にある者であることが必要であること。しかし、共同住宅等管理的又は監督的な地位にあるいずれの者も防火管理上必要な業務を適切に遂行することが困難な防火対象物については、防火管理者の業務の外部委託等をすることができることとしたこと。
 共同住宅その他総務省令で定める防火対象物について
 共同住宅及び規則第2条の2第1項各号に規定する防火対象物のうち、管理的又は監督的な地位にあるいずれの者も防火管理上必要な業務を適切に遂行することが困難な防火対象物として、消防長(消防本部を置かない市町村においては、市町村長。以下同じ。)又は消防署長として認めたものについて、防火管理者の業務の外部委託等が認められたこと。
 消防長又は消防署長として認める際には、当該防火対象物の状況(規模、用途、収容人員等)、当該防火対象物の管理の状況(防火管理上必要な業務を遂行するための組織、人員とその勤務状況等)、管理権原者の勤務状況等を確認した上で判断すること。
 (1)  共同住宅関係
 「分譲マンションにおける防火管理者の選任について」(昭和45年5月14日付消防予第96号)において防火管理者の共同選任を行うことが適当とされ、また、「共同住宅における防火管理に関する運用について」(平成4年9月11日付消防予第187号)及び「共同住宅における防火管理に関する運用について」(平成6年1019日付消防予第271号)において防火管理者を管理会社の従業員の中から選任すべきことについて示しているが、平成16年6月1日以降は、共同選任等を行っている防火対象物のうち、防火管理上必要な業務が適切に遂行されていない防火対象物については、令第3条第2項の規定を適用するよう指導すること(令第3条第2項関係)。
 (2)  規則第2条の2第1項第2号関係
 「消防法の一部を改正する法律等の施行について」(昭和36年5月10日自消甲予発第28号)において、複合用途防火対象物について、防火管理者の共同選任を行うことについて示しているが、平成16年6月1日以降は、共同選任を行っている防火対象物のうち、特に防火管理上必要な業務を適切に遂行されていない防火対象物については、令第3条第2項の規定を適用するよう指導すること(規則第2条の2第1項第2号関係)。
 防火管理者の業務の外部委託等を行う際の要件について
 (1)  防火管理者の責務を遂行するために必要な権限の付与
 「防火管理者の責務を遂行するために必要な権限」とは、次に掲げる権限であること(令第3条第2項関係)。
 消防計画の作成、見直し及び変更に関する権限
 避難施設等に置かれた物を除去する権限
 消火、通報及び避難訓練の実施に関する権限
 消防用設備等の点検・整備の実施に関する権限
 不適切な工事に対する中断、器具の使用停止、危険物の持ち込みの制限に関する権限
 収容人員の適正な管理に関する権限
 防火管理業務従事者に対する指示、監督に関する権限
 その他、防火管理者の責務を遂行するために必要な権限
 (2)  管理権原者からの文書の交付
 管理権原者が交付する文書の「防火管理上必要な業務の内容」は、次に掲げる内容であること(規則第2条の2第2項第1号関係)。
 消防計画の作成、見直し及び変更に関すること
 避難施設等の管理に関すること
 消火、通報及び避難訓練の実施に関すること
 消防用設備等の点検・整備の監督に関すること
 火気の使用等危険な行為の監督に関すること
 収容人員の適正な管理に関すること
 防火管理業務従事者に対する指示、監督に関すること
 その他、防火管理者として行うべき業務に関すること
 (3)  防火対象物の防火管理上必要な事項に関する十分な知識を有していること
 防火対象物の位置、構造及び設備の状況その他防火管理上必要な事項に関する十分な知識を有するため、防火管理者に選任される者は、当該防火対象物の管理権原者等から説明を受ける必要があること。なお、防火管理上必要な事項は、次に掲げる事項であること(規則第2条の2第2項第2号関係)。
 防火管理体制及び自衛消防組織の編成等従業者の配置等に関すること
 従業員等に対する防火上必要な教育の状況に関すること
 消火、通報及び避難訓練の実施状況に関すること
 その他防火管理上必要な事項

  防火管理業務を委託された防火管理者の選任届出について
 防火管理者の選任の届出については、規則第4条第1項により行うこととされているが、委託された防火管理者の選任の届出が提出された際には、特に次の事項に留意すること(規則第4条関係)。
 (1)  規則別記様式第1号の2の2の「その他必要な事項」の欄に、「管理的又は監督的な地位にある者のいずれもが防火管理上必要な業務を適切に遂行することができない理由」が記載されているかどうかを確認するとともに、当該内容について妥当かどうかを判断すること。なお、管理的又は監督的な地位にある者のいずれもが防火管理上必要な業務を適切に遂行することができないと管轄の消防長又は消防署長が認めたものしか防火管理者の業務の外部委託等は行えないことから、防火管理者の業務の外部委託等を行う者は、防火管理者の選任の届出の前に認められるかどうかを管轄消防本部に確認するよう指導すること。
 (2)  令第3条第2項の「防火管理者の責務を遂行するために必要な権限が付与されていること」については、契約等で行われることが想定されるが、防火管理者の選任の届出の際にその写しを添付するよう指導すること。また、契約等は、防火管理者に必要な権限が付与されていることを明確にすることが必要であり、法人間の契約の場合も当該事項を明確にする必要があること。
 (3)  規則第2条の2第2項第1号の「防火管理上必要な業務の内容を明らかにした文書」の写しは、規則第4条第2項の防火管理者の資格を証する書面であること。したがって、防火管理者の業務を外部委託等された防火管理者の選任の届出の際に添えなければならない「資格を有する書面」は、「防火管理講習の修了証」及び「防火管理上必要な業務の内容を明らかにした文書」等であること。
 (4)  規則第2条の2第2項第2号の要件は、防火管理者の選任の届出の際に口頭で確認することが望ましいこと。