平成29年版 消防白書

1.全国火災予防運動等

(1)全国火災予防運動

近年、都市構造や建築構造、生活様式の変化等に伴い、火災等の災害要因の多様化が進行している。このような状況において、火災をはじめとする災害の発生を未然に防止し、また、その被害を最小限にするためには、国民の一人一人が日頃から防災の重要性を深く認識するとともに、防火防災に対して十分な備えをすることが最も重要である。このことから、消防庁では、毎年2回、春と秋に全国火災予防運動を実施することで、国民に対し防火防災意識の高揚及び火災予防対策の実践を呼び掛けている。

ア 秋季全国火災予防運動(平成28年11月9日~11月15日)

秋季全国火災予防運動は、火災が発生しやすい時季を迎えるに当たり、火災予防思想の一層の普及を図り、もって火災の発生を防止し、死傷事故や財産の損失を防ぐことを目的として行われるもので、消防庁では「消しましょう その火その時 その場所で」を平成28年度の全国統一防火標語に掲げ、各省庁、各都道府県及び関係団体の協力の下に、「住宅防火対策の推進」、「放火火災防止対策の推進」、「特定防火対象物等における防火安全対策の徹底」、「製品火災の発生防止に向けた取組の推進」、「多数の者が集合する催しに対する火災予防指導等の徹底」を重点目標として、各種広報媒体を通じて広報活動を実施した。これと併せて、各地の消防機関においても、予防運動の趣旨に基づき、各種イベントや消防訓練の実施、住宅防火診断等様々な行事が行われた。

秋季火災予防運動ポスターの画像
秋季火災予防運動ポスター

イ 春季全国火災予防運動(平成29年3月1日~3月7日)

平成29年春季全国火災予防運動では、前年の秋季全国火災予防運動と同一の全国統一防火標語の下に、「住宅防火対策の推進」、「乾燥時及び強風時火災発生防止対策の徹底」、「放火火災防止対策の推進」、「特定防火対象物等における防火安全対策の徹底」、「製品火災の発生防止に向けた取組の推進」、「多数の者が集合する催しに対する火災予防指導等の徹底」、「林野火災予防対策の推進」を重点目標として、秋季同様、様々な行事が実施された。

春季火災予防運動ポスターの画像
春季火災予防運動ポスター

(2)文化財防火デー(1月26日)

昭和24年(1949年)1月26日の法隆寺金堂火災を契機として、昭和30年(1955年)以降、消防庁と文化庁の共同主唱により、毎年1月26日を「文化財防火デー」と定め、全国的に文化財防火運動を展開している。
また、この日を中心として、文化財の所有者及び管理者により、管轄する消防本部の指導の下、重要物件の搬出や消火、通報及び避難訓練などが積極的に実施され、文化財の防火・防災対策が講じられている。

文化財防火デーポスターの画像
文化財防火デーポスター

(3)全国山火事予防運動(平成29年3月1日~3月7日)

全国山火事予防運動は、広く国民に山火事予防思想の普及を図るとともに、予防活動をより効果的なものとするため、消防庁と林野庁の共同により、春季全国火災予防運動と併せて同期間に実施している。
平成29年の全国山火事予防運動では、「火の用心 森から聞こえる ありがとう」を統一標語として、ハイカー等の入山者、地域住民、小中学校生徒等を重点対象とした啓発活動、駅、市町村の庁舎、登山口等への警報旗の設置やポスター等の掲示、報道機関等を通じた山火事予防思想の普及啓発、消防訓練の実施や研究会の開催、地域住民、森林所有者等による山火事予防組織と女性(婦人)防火クラブ等民間防火組織が連携した予防活動等を通じ、林野火災の未然防止を訴えた。

(4)車両火災予防運動(平成29年3月1日~3月7日)

車両火災予防運動は、車両交通の関係者及び利用者の火災予防思想の高揚を図り、もって車両火災を予防し、安全な輸送を確保することを目的として、消防庁と国土交通省が共同し、春季全国火災予防運動と併せて同期間に実施している。平成29年の車両火災予防運動では、車両カバーにおける防炎製品の使用を推進し、放火火災防止対策を図るとともに、駅舎及びトンネルの防火安全対策の徹底として、初期消火、通報及び避難などの消防訓練の実施及び設置されている消防用設備等の点検整備の推進を実施した。

(5)消防記念日(3月7日)

昭和23年(1948年)3月7日に「消防組織法」が施行され、我が国の消防は、市町村消防を原則とする今日の「自治体消防」として誕生した。そして、同法が施行されて2周年を迎えた昭和25年(1950年)、広く消防関係職員及び住民の方々に「自らの地域を自らの手で火災その他の災害から守る」ということへの理解と認識を深めていただくため「消防記念日」が制定された。
消防記念日である3月7日は、例年春季全国火災予防運動(毎年3月1日~3月7日)の最終日となっており、全国の消防本部等において、消防訓練、記念式典や消防防災功労者に対する表彰など、様々な行事が行われている。
また、来る平成30年3月7日をもって「消防組織法」が施行されて70周年を迎えることから、これを記念して消防記念日当日に自治体消防制度70周年記念式典を実施することとしている。また、式典に先立ち、気運の醸成を図るため、「自治体消防70周年記念シンボルマーク」を作成し、平成29年8月27日には、プロ野球始球式を通じた自治体消防制度70周年記念事業として、消防庁長官等によるパレードに続き、野田総務大臣によるプロ野球始球式を行った。そのほか、毎年春に実施していた火災予防コンサートとは別に、11月8日には、横浜市消防音楽隊及び東京消防庁音楽隊の協力の下、秋の火災予防コンサートを実施するなど、記念事業を開催した。

自治体消防70周年記念シンボルマークのイラスト
自治体消防70周年記念シンボルマーク
プロ野球始球式において投球する野田総務大臣の写真
プロ野球始球式において投球する野田総務大臣(中央)
横断幕を掲げてパレードする消防庁長官の写真
横断幕を掲げてパレードする消防庁長官(前列左側から3番目)
秋の火災予防コンサート(横浜市消防音楽隊)の写真
秋の火災予防コンサート(横浜市消防音楽隊)
秋の火災予防コンサート(東京消防庁音楽隊)の写真
秋の火災予防コンサート(東京消防庁音楽隊)

明治150年明治時代と公設消防制度のはじまり自治体消防70周年記念

【消防制度の変遷】
明治元年(1868年)、明治新政府は「武家火消」に代わる「火災防御隊」という定火消の役員等で編成される組織を誕生させた。さらに、明治5年(1872年)に「町火消」を「消防組」と改め、組織改編を行った。
また、明治7年(1874年)に、消防組員に対して、旧来の鳶人足という古い概念を打破するとともに、規律を正して進退賞罰を明らかにし、服務の心得を説くために、消防人のあり方を示した「消防章程」を制定した。
そして、明治13年(1880年)には、消防事務は内務省警視局のもとに創設された消防本部の所管となり、今日の消防吏員にあたる消防職員(官)が採用されることとなった。この時、併せて「消防本部職制度」も制定されることとなり、ここに我が国初の公設消防機関が誕生した。

【消防機器の変遷】
明治期には、それまでの我が国では見ることのなかった優れた消防機器が、西洋から我が国に登場してくる。消防ポンプや救助はしご車等がその例である。
消防ポンプを最初に輸入したのは、明治3年(1870年)であった。東京府がイギリスから腕用ポンプ4台と蒸気ポンプ1台を輸入している。明治9年(1876年)から開始された腕用ポンプの国産化と並行して蒸気ポンプの輸入も進み、明治22年(1889年)には東京市内に8台設置されている。なお、蒸気ポンプの国産化に成功したのは明治32年(1899年)のことであり、その後、徐々に全国的に普及していき、明治後期から大正初期にかけて大いに活躍した。
一方、我が国初のはしご車は、明治36年(1903年)にドイツからの輸入品であった。はしご部分が木鉄混合製の三連になっており、はしごの長さは18m、2頭の馬で引くというものであったという。

腕用ポンプ(東京消防庁提供)の写真
腕用ポンプ(東京消防庁提供)
蒸気ポンプ(東京消防庁提供)の写真
蒸気ポンプ(東京消防庁提供)
救助はしご車(東京消防庁提供)の写真
救助はしご車(東京消防庁提供)

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