令和4年版 消防白書

[風水害対策の現況と課題]

1.避難情報の適時適切な発令

令和元年東日本台風等において明らかになった、警戒レベル4の中に「避難勧告」及び「避難指示(緊急)」の2段階ある仕組みが正しく理解されていない等の課題を踏まえ、令和3年5月に改正された災害対策基本法では、避難勧告及び避難指示が「避難指示」に一本化される等、避難情報のあり方が包括的に見直された。
また、これに伴い各市町村が避難情報の発令基準や伝達方法、防災体制等を検討するにあたって、参考とすべき事項を示した「避難情報に関するガイドライン」(令和3年5月内閣府)が改定された。
市町村においては、同法や内閣府が定める避難情報に関するガイドラインを踏まえ、避難情報の適切な発令基準の策定、運用が求められる。こうした取組を支援できるよう、消防庁では内閣府と連携して避難情報に関するガイドラインのより一層の周知を図るとともに、発令を行う市町村長の災害対応力強化のための研修を行うなど、引き続き避難情報の適時適切な発令に向けて取り組む。

(1)令和3年7月からの一連の豪雨災害を踏まえた避難に関する検討会

令和3年5月の災害対策基本法の改正による、新たな避難情報の運用や住民の避難行動について検証するため、内閣府において「令和3年7月からの一連の豪雨災害を踏まえた避難に関する検討会」が開催され、住民一人一人の「自らの命は自らが守る」意識の定着に向けて、平時からの防災に関する教育や啓発活動を粘り強く持続的に推進していくことや、市町村による避難情報の適切な発令に向けて、市町村の人材育成をより一層促進すること、専門家等から市町村への支援の充実を図ることなどの対策が取りまとめられた。
消防庁では、避難情報の適切な発令に関して、検討会で示された実施すべき取組を地方公共団体に周知するとともに、適切なタイミングでの避難情報の発令や発令対象区域の絞り込み等に関する市町村長向けの研修内容の充実に取り組んだ。

(2)市町村長の災害対応力強化のための研修の実施

災害発生時には、市町村長がリーダーシップを十分発揮し、的確な災害対応を行う必要があることから、消防庁では「市町村長の災害対応力強化のための研修」を実施している。当該研修は、市町村長と講師が1対1となり、災害の警戒段階から発災後に至る重要な局面ごとに講師が市町村長へ災害に関連して想定される状況を付与し、的確かつ迅速な判断・指示を求める実践的なシミュレーションを行うものとなっており、これまで約600名の市町村長が参加している。