令和7年版 消防白書

4.切迫する大規模災害への備え

(1)国土強靱化に向けた取組の推進

気候変動に伴い激甚化・頻発化する気象災害や、切迫する南海トラフ地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの大規模地震から、国民の生命・財産・暮らしを守り、国家・社会の重要な機能を維持するため、防災・減災、国土強靱化に向けた取組を切れ目なく推進する必要がある。
政府は「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(平成30年12月14日閣議決定)や「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(令和2年12月11日閣議決定)として、ハード・ソフト両面からの国土強靱化のための対策を進めてきた。加えて、令和7年6月6日、「第1次国土強靱化実施中期計画」を閣議決定し、計画期間である令和8年度から令和12年度までの5年間の取組を定めた。
同計画には「推進が特に必要となる施策」のうち、消防関連施策としては、緊急消防援助隊の車両整備等による災害対応能力の強化、消防団の更なる災害対応能力の強化、消防分野におけるDX・新技術の活用、マイナ救急の全国展開・機能拡充、Jアラートによる住民に対する災害情報の迅速かつ確実な伝達等の施策が位置付けられ、今後、同計画に基づき、消防防災力強化を着実に推進していく。

(2)南海トラフ地震に係る防災対策の推進

南海トラフ地震については、平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う甚大な被害を踏まえ、「科学的に想定し得る最大規模の地震・津波」を想定した防災対策の検討が必要となり、その検討を踏まえた「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」を平成26年3月に策定した。
令和6年3月に同基本計画の策定から10年を迎えたことを踏まえ「南海トラフ巨大地震モデル・被害想定手法検討会」及び「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」において、近年の社会変化や自然災害等の特徴を踏まえた被害想定の見直しや新たな防災対策の検討がなされた。これを受けて、南海トラフ地震に係る地震防災対策の円滑かつ迅速な推進のため、令和7年7月の第45回中央防災会議において同基本計画の変更が行われ、地震・津波から命と社会を守るための「命を守る」対策と直接的被害から助かった命や生活を維持するための「命をつなぐ」対策を新たに定め、重点的に推進することとされた。
新たに定められた対策のうち、消防関連施策として、電気に起因する出火の防止を図るための感震ブレーカーの普及や緊急消防援助隊、消防団等の充実強化、防災行政無線等の多様な防災情報伝達手段の整備等に関する対策が盛り込まれた。消防庁としては、今後、同基本計画に基づき、消防防災力強化を着実に推進していく。

(3)首都直下地震に係る防災対策の推進

首都直下地震については、平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う甚大な被害を踏まえ「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」を設置し、地震モデルと首都直下地震対策の検討を行い、その検討を踏まえた「首都直下地震緊急対策推進基本計画」を平成27年3月に策定した。
令和7年3月に同基本計画の策定から10年が経過したことを踏まえ、「首都直下地震モデル・被害想定手法検討会」及び「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」において、最新の科学的知見や東京圏を取り巻く状況の変化、これまでの防災対策の進捗状況を踏まえた被害想定の見直しや新たな防災対策の検討がなされ、令和7年12月に報告書が取りまとめられた。首都直下地震の死者数と全壊・焼失棟数の多くは、火災によるものであり、火災対策が重要である。このため、報告書においては、火災対策について、地域の特性・事情に合わせて、感震ブレーカーの普及促進や初期消火機材の配置などのソフト対策を講じていく必要性が提言されている。
この報告書を受けて、現在、政府内においては、首都直下地震緊急対策推進基本計画及び政府業務継続計画の見直しに向けて検討を進めているところである。