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行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく処分に係る審査基準

○消防庁訓令第18号
行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく処分に係る審査基準を次のとおり定める。

平成13年3月30日 消防庁長官 中川 浩明

行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく処分に係る審査基準

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。以下「法」という。)に基づき消防庁長官が行う処分に係る行政手続法(平成5年法律第88号)第5条第1項の規定による審査基準は、次のとおりとする。

第1 開示決定等の審査基準

法第9条の規定に基づく開示又は不開示の決定(以下「開示決定等」という。)は、以下により行う。

  1. 開示する旨の決定(法第9条第1項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。
    (1) 開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されていない場合。
    (2) 開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合であって、当該不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるとき。ただし、この場合には、不開示情報が記録されている部分を除いて開示する。
    (3) 開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されている場合であっても、公益上特に当該行政文書を開示する必要があると認めるとき(法第7条)。
  2. 開示しない旨の決定(法第9条第2項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。
    (1) 開示請求書に法第4条第1項各号に規定する事項の記載の不備がある場合又は開示請求手数料が納付されていない場合。ただし、当該不備を補正することができると認められる場合は、原則として、開示請求者に補正を求めるものとする。
    (2) 開示請求に係る行政文書を消防庁(消防大学校を除く。)において保有していない場合(開示請求の対象が法第2条第2項に規定する行政文書に該当しない場合及び開示請求の対象が、法以外の法律における適用除外規定により、開示請求の対象外のもの(登記簿及びその附属書類、特許原簿、訴訟に関する書類等)である場合を含む。)。
    (3) 開示請求に係る行政文書に記録されている情報がすべて不開示情報に該当する場合。
    (4) 開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合であって、当該不開示情報が記録されている部分と他の部分とを容易に区分して除くことができないとき。
    (5) 開示請求に係る行政文書の存在の有無を明らかにするだけで、不開示情報を開示することになる場合(法第8条)。
    (6) 開示請求が権利濫用に当たる場合。この場合において、権利濫用に当たるか否かの判断は、開示請求の態様、開示請求に応じた場合の行政機関の業務への支障及び国民一般の被る不利益等を勘案し、社会通念上妥当と認められる範囲を超えるものであるか否かを個別に判断して行う。行政機関の事務を混乱又は停滞させることを目的とする等開示請求権の本来の目的を著しく逸脱する開示請求は、権利の濫用に当たる。
  3. 前2項の判断に当たっては、行政文書に該当するかどうかの判断は「第2 行政文書該当性に関する判断基準」に、開示請求に係る行政文書に記録されている情報が不開示情報に該当するかどうかの判断は「第3 不開示情報該当性に関する判断基準」に、部分開示をすべき場合に該当するかどうかの判断は「第4 部分開示に関する判断基準」に、公益上の理由による裁量的開示を行うかどうかの判断は「第5 公益上の理由による裁量的開示に関する判断基準」に、行政文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否すべき場合に該当するかどうかの判断は「第6 行政文書の存否に関する情報に関する判断基準」に、それぞれよる。
第2 行政文書該当性に関する判断基準

開示請求の対象が法第2条第2項に規定する行政文書に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

  1. 「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した」とは、行政機関の職員が当該職員に割り当てられた仕事を遂行する立場で、すなわち公的立場において作成し、又は取得したことをいい、作成したこと又は取得したことについて、文書管理のための帳簿に記載すること、収受印があること等の手続的な要件を満たすことを必要とするものではない。
  2. 「文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。」とは、行政機関において現に事務又は事業において用いられている記録の形式を網羅するものである。  「文書、図画」とは、人の思想等を文字若しくは記号又は象形を用いて有体物に可視的状態で表現したものをいい、紙の文書のほか、図面、写真、これらを写したマイクロフィルム等が含まれる。  「電磁的記録」とは、電子計算機による情報処理の用に供されるいわゆる電子情報の記録に限られず、録音テープ、ビデオテープ等の内容の確認に再生用の専用機器を用いる必要のある記録も含まれる。また、電子計算機による情報処理のためのプログラムについても、電磁的記録に該当する。  なお、「電磁的記録」には、ディスプレイに情報を表示するため一時的にメモリに蓄積される情報、ハードディスク上に一時的に生成されるテンポラリファイル等は含まれない。
  3. 「当該行政機関の職員が組織的に用いるもの」とは、作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該行政機関の組織において、業務上必要なものとして、利用又は保存されている状態のものを意味する。
    したがって、①職員が単独で作成し、又は取得した文書、図画又は電磁的記録であって、専ら自己の職務の遂行の便宜のためにのみ利用し、組織としての利用を予定していないもの(自己研さんのための研究資料、備忘録等)、②職員が自己の職務の遂行の便宜のために利用する正式文書と重複する当該文書の写し、③職員の個人的な検討段階に留まるもの(決裁文書の起案前の職員の検討段階の文書、図画又は電磁的記録等。ただし、担当職員が原案の検討過程で作成する文書、図画又は電磁的記録であっても、組織において業務上必要なものとして保存されているものは除く。)等は、「組織的に用いるもの」には該当しない。
    作成又は取得された文書、図画又は電磁的記録が組織的に用いるものに当たるかどうかの判断は、①作成又は取得の状況(職員個人の便宜のためにのみ作成又は取得するものであるかどうか、直接的又は間接的に当該行政機関の長等の管理監督者の指示等の関与があったものであるかどうか)、②利用の状況(業務上必要として他の職員又は部外に配付されたものであるかどうか、他の職員がその職務上利用しているものであるかどうか)、③保存又は廃棄の状況(専ら当該職員の判断で処理できる性質のものであるかどうか、組織として管理している職員共用の保存場所で保存されているものであるかどうか)などを総合的に考慮して行う。
    また、組織として共用文書たる実質を備えた状態になる時点については、当該組織における文書、図画又は電磁的記録の利用又は保存の実態により判断するものであるが、例えば、①決裁を要するものについては起案文書が作成され、りん議に付された時点、②会議に提出した時点、③申請書等が行政機関の事務所に到達した時点、④組織として管理している職員共用の保存場所に保存した時点等が挙げられる。
  4. 「保有している」とは、所持すなわち物を事実上支配している状態を意味する。文書、図画又は電磁的記録を書庫等で保管し、又は倉庫業者等に保管させている場合であっても、当該文書、図画又は電磁的記録を事実上支配(当該文書、図画又は電磁的記録の作成、保存、閲覧・提供、移管・廃棄等の取扱いを判断する権限を有していることを意味する。例えば、法律に基づく調査権限により関係人に対し帳簿書類を提出させこれを留め置く場合に、当該行政文書については返還することとなり、廃棄はできないなど、法令の定めにより取扱いを判断する権限について制限されることはあり得る。)していれば、所持に該当し、「保有している」に該当する。
    なお、一時的に文書を借用し、又は預かっている場合等、当該文書、図画又は電磁的記録を支配していると認められない場合は、「保有している」には当たらない。
  5. 「官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの」(法第2条第2項第1号)とは、紙媒体のものに限られるものではなく、インターネット上で不特定多数の者への有償頒布を目的として発行される新聞、雑誌、書籍等も含まれる。
    なお、行政機関が公表資料等の情報提供を行っているものについては、法第2条第2項第1号に該当せず、開示請求の対象となる。
第3 不開示情報該当性に関する判断基準

開示請求に係る行政文書に記録されている情報が不開示情報に該当するかどうかの判断は、「会議等の開催に関する会計文書等(類型)の開示・不開示の取扱い」(別添)によるほか、以下の基準により行う。なお、当該判断は、開示決定等を行う時点における状況に基づき行う。

  1. 個人に関する情報(法第5条第1号)についての判断基準
    (1) 特定の個人を識別することができる情報等(法第5条第1号本文)について
    (ア)「個人に関する情報」とは、個人(死亡した者を含む。)の内心、身体、身分、地位、経歴その他個人に関する一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての情報を含むものであり、個人に関連する情報全般を意味する。したがって、個人の属性、人格及び私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。 また、不開示情報該当性の判断に当たっては、開示請求者が誰であるかは考慮しないことから、開示請求者本人に関する情報であっても、他の個人に関する情報と同様に取り扱う。 ただし、事業を営む個人の当該事業に関する情報は、法第5条第2号の規定により判断する。
    (イ)特定の個人を識別することができる情報は、通常、特定の個人を識別させる部分(例えば、個人の氏名)とその他の部分(例えば、当該個人の行動の記録)とから成り立っており、その全体が一つの不開示情報を構成するものである。 ただし、法第6条第2項の規定により、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができる記述等の部分を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められる場合には、当該部分以外の部分は法第5条第1号の情報に含まれないものとみなして、法第6条第1項の規定(部分開示)を適用することに留意する。
    (ウ)「その他の記述等」には、住所、電話番号、役職名、個人別に付された記号・番号(振込口座番号、試験の受験番号、保険証の記号番号等)等が含まれる。氏名以外の記述等単独では特定の個人を識別することができない場合であっても、当該情報に含まれるいくつかの記述等が組み合わされることにより特定の個人を識別することができる場合は「特定の個人を識別することができる」に該当する。
    (エ)当該情報単独では特定の個人を識別することができないものであっても、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができる情報には、法第5条第1号の規定が適用される。照合の対象となる「他の情報」としては、公知の情報、図書館等の公共施設で一般に入手可能な情報など一般人が通常入手し得る情報が含まれる。また、当該個人の近親者、地域住民等であれば保有しているか又は入手可能であると通常考えられる情報も含む。他方、特別の調査をすれば入手し得るかもしれないと考えられる情報については、一般的には、「他の情報」に含まれない。照合の対象となる「他の情報」の範囲については、当該個人に関する情報の性質、内容等に応じ、個別に判断する。
    (オ)厳密には特定の個人を識別することができる情報でない場合であっても、特定の集団に属する者に関する情報を開示すると、当該集団に属する個々人に不利益を及ぼすおそれがある場合には、当該情報の性質、集団の性格又は規模等により、個人の権利利益の十全な保護を図る観点から、個人識別性を認めるべき場合があり得ることに留意する。
    (カ)「公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」には、匿名の作文、無記名の個人の著作物等、個人の人格と密接に関連するもの及び公にすれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものが含まれる。

    (2) 法令の規定により公にされている情報等(法第5条第1号イ)について
    (ア)「法令の規定」とは、何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている規定に限られる。したがって、公開を求める者又は公開を求める理由によって公開を拒否する場合が定められている規定は含まれない。
    (イ)「慣行として」とは、公にすることが慣習として行われていることを意味するが、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。ただし、当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらない。
    (ウ)「公にされ」とは、当該情報が現に公衆が知り得る状態に置かれていれば足り、現に周知の事実であるかどうかは問わない。ただし、過去に公にされた情報について、時の経過により、開示決定等の時点では「公にされ」に当たらない場合があることに留意する。
    (エ)「公にすることが予定されている情報」とは、将来的に公にする予定(具体的に公表が予定されている場合に限らず、求めがあれば何人にも提供することを予定しているものを含む。)の下に保有されている情報をいう。ある情報と同種の情報が公にされている場合であって、当該情報のみ公にしないとする合理的な理由がない場合等、当該情報の性質上通例公にされるものも含まれる。

    (3) 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報(法第5条第1号ロ)について
    個人に関する情報を公にすることにより害されるおそれがある当該個人の権利利益よりも、当該情報を公にすることにより人の生命、健康、生活又は財産を保護する必要性が上回ると認められる場合には、当該情報は開示する。現実に、人の生命、健康、生活又は財産に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。この比較衡量に当たっては、個人の権利利益には様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活又は財産の保護についても、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討を行うものとする。

    (4) 公務員に関する情報の取扱いについて
    (ア)公務員に関する情報も個人に関する情報に含まれるが、このうち、公務員の職務遂行に係る情報については、当該情報のうち、当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分については、個人に関する情報としては不開示情報に当たらない(法第5条第1号ハ)。  なお、公務員の職務遂行に係る情報が職務遂行の相手方等公務員以外の個人に関する情報でもある場合には、各個人ごとに不開示情報該当性を判断する。すなわち、当該公務員にとっての不開示情報該当性と他の個人にとっての不開示情報該当性とを別個に検討し、そのいずれかに該当すれば、当該部分は不開示とする。
    (イ)「公務員」とは、広く公務遂行を担任する者を含むものであり、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国及び地方公共団体の職員のほか、国務大臣、国会議員、裁判官等を含む。また、退職した者であっても、公務員であった当時の情報については、当該規定は適用される。
    (ウ)「職務の遂行に係る情報」とは、公務員が行政機関その他の国の機関又は地方公共団体の機関の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に係る情報等がこれに含まれる。ただし、法第5条第1号ハの規定は、具体的な職務の遂行との直接の関連を有する情報を対象とするものであるので、公務員に関する情報であっても、職員の人事管理上保有する健康情報、休暇情報等は、「職務の遂行に係る情報」には含まれない。
    (エ)公務員の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員の氏名は、法第5条第1号ハには該当しないが、同号イに該当する場合があることに留意する。すなわち、当該公務員の職及び氏名が、法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている場合には、公務員の職務遂行に係る情報全体について、個人に関する情報としては不開示情報に当たらないことになる。人事異動の官報への掲載その他行政機関により職名と氏名とを公表する慣行がある場合、行政機関により作成され、又は行政機関が公にする意思をもって(又は公にされることを前提に)提供した情報を基に作成され、現に一般に販売されている職員録に職と氏名とが掲載されている場合には、「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当する。
  2. 法人等又は事業を営む個人の当該事業に関する情報(法第5条第2号)についての判断基準
    (1) 法人その他の団体に関する情報及び事業を営む個人の当該事業に関する情報(法第5条第2号本文)について
    (ア)「法人その他の団体」(以下「法人等」という。)には、株式会社等の商法上の会社、財団法人、社団法人、学校法人、宗教法人等の民間の法人のほか、独立行政法人、特殊法人、認可法人、政治団体、外国法人、権利能力なき社団等も含まれる。ただし、国及び地方公共団体は、法第5条第2号の対象から除かれており、その事務又は事業に係る情報は、法第5条第6号等の規定に基づき判断する。
    (イ)「法人その他の団体に関する情報」とは、法人等の組織及び事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する情報等法人等と何らかの関連性を有する情報を意味する。なお、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもあり、法第5条第1号の不開示情報に当たるかどうかも検討する必要がある。
    (ウ)「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により、事業を営む上での正当な利益等について不開示情報該当性を判断する。

    (2) 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報(法第5条第2号ただし書)について
    法人等又は事業を営む個人の当該事業に関する情報を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを公にしないことにより保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が上回ると認められる場合は、当該情報は法第5条第2号の不開示情報に該当しない。現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害等との明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり得ることに留意する。

    (3) 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ(法第5条第2号イ)について
    (ア)「権利」とは、信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等法的保護に値する権利一切を指し、「競争上の地位」とは、法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位をいう。また、「その他正当な利益」には、ノウハウ、信用等法人等又は事業を営む個人の運営上の地位が広く含まれる。
    (イ)権利、競争上の地位その他正当な利益を「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人には様々な種類、性格のものがあり、その権利利益にも様々のものがあるので、法人等又は事業を営む個人の性格、権利利益の内容及び性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の憲法上の権利(信教の自由、学問の自由等)の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と行政との関係等を十分考慮して適切に判断する必要があることに留意する。なお、この「おそれ」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。

    (4) 任意提供情報(法第5条第2号ロ)について
    (ア)法人等又は事業を営む個人から公にしないとの条件の下に任意に提供された情報については、当該条件が合理的なものと認められる限り、不開示情報とすることにより、情報提供者の信頼と期待を基本的に保護するものである。なお、行政機関の情報収集能力の保護は、法第5条第6号等の規定によって判断する。
    (イ)「行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの」には、行政機関の要請を受けずに、法人等又は事業を営む個人から提供された情報は含まれない。ただし、行政機関の要請を受けずに法人等又は事業を営む個人から情報の提供を申し出た場合であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人から非公開の条件が提示され、行政機関が合理的理由があるとしてこれを受諾した上で提供を受けた場合は含まれる。
    (ウ)「行政機関の要請」には、法令に基づく報告又は提出の命令は含まれないが、行政機関の長が報告徴収権限を有する場合であっても、当該権限を行使することなく、任意に提出を求めた場合は含まれる。
    (エ)「公にしないとの条件」とは、情報の提供を受けた行政機関が第三者に対して当該情報を提供しないとの条件を意味する。また、特定の行政目的以外の目的には使用しないとの条件も含まれる。
    (オ)「条件」については、行政機関の側から公にしないとの条件で情報の提供を申し入れた場合も、法人等又は事業を営む個人の側から公にしないとの条件を付すことを申し出た場合も含まれるが、いずれの場合も双方の合意により成立するものである。また、条件を設ける方法としては、黙示的なものも含まれる。
    (カ)「法人等又は個人における通例として公にしないこととされているもの」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、当該法人等又は個人が属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等において公にしていないことだけでは足りない。
    (キ)公にしないとの条件を付することの合理性の判断に当たっては、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時の諸般の事情を考慮して判断するが、必要に応じ、その後の事情の変化も考慮する。公にしないとの条件が付されていても、現に当該情報が公にされている場合には、法第5条第2号ロには該当しない。
  3. 国の安全等に関する情報(法第5条第3号)についての判断基準
    (1) 「国の安全」とは、国家の構成要素である国土、国民及び統治体制が害されることなく平和で平穏な状態に保たれていること、すなわち、国としての基本的な秩序が平穏に維持されている状態をいう。具体的には、直接侵略及び間接侵略に対し、独立と平和が守られていること、国民の生命が国外からの脅威等から保護されていること、国の存立基盤としての基本的な政治方式及び経済・社会秩序の安定が保たれていることなどが考えられる。「国の安全が害されるおそれ」とは、これらの国の重大な利益に対する侵害のおそれ(当該重大な利益を維持するための手段の有効性を阻害され、国の安全が害されるおそれがあると考えられる場合を含む。)をいう。
    (2) 「他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ」とは、「他国若しくは国際機関」(我が国が承認していない地域、政府機関その他これらに準ずるもの(各国の中央銀行等)、外国の地方政府又は国際会議その他国際協調の枠組みに係る組織等(アジア太平洋経済協力、国際刑事警察機構等)の事務局等を含む。以下「他国等」という。)との間で、相互の信頼に基づき保たれている正常な関係に支障を及ぼすようなおそれをいう。例えば、公にすることにより、他国等との取決め又は国際慣行に反することとなるもの、他国等の意思に一方的に反することとなるもの、他国等に不当に不利益を与えることとなるもの等、我が国との関係に悪影響を及ぼすおそれがある情報が該当する。
    (3) 「他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ」とは、他国等との現在進行中の又は将来予想される交渉において、我が国が望む交渉成果が得られなくなる、我が国の交渉上の地位が低下する等のおそれをいう。例えば、国際会議における対処方針等交渉(過去のものを含む。)に関する情報であって、公にすることにより、現在進行中の又は将来予想される交渉に関して我が国が執ろうとしている立場が明らかにされ、又は具体的に推測されることになり、交渉上の不利益を被るおそれがある情報が該当する。
  4. 公共の安全等に関する情報(法第5条第4号)についての判断基準
    (1) 「犯罪の予防」とは、犯罪の発生を未然に防止することをいう。したがって、国民の防犯意識の啓発、防犯資機材の普及等、一般に公にしても犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがない防犯活動に関する情報は、含まれない。「犯罪の鎮圧」とは、犯罪が正に発生しようとするのを未然に防止し、又は犯罪が発生した後において、その拡大を防止し、若しくは終息させることをいう。「犯罪の捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起(検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを内容とする訴訟行為をいう。)等のために犯人及び証拠を発見、収集又は保全することをいう。
    (2) 「公訴の維持」とは、提起された公訴の目的を達成するため、終局判決を得るまでに検察官が行う公判廷における主張・立証、公判準備等の活動を指す。
    (3) 「刑の執行」とは、刑法(明治40年法律第45号)第2章に規定されている刑又は処分を具体的に実施することをいう。保護観察、勾留の執行、保護処分の執行、観護措置の執行、補導処分の執行及び監置の執行についても、刑の執行に密接に関連するものでもあることから、公にすることにより保護観察等に支障を及ぼし、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報は、法第5条第4号に該当する。
    (4) 「公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を中心としたものを意味する。刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)以外の特別法により、臨検、捜索、差押え、告発等が規定され、犯罪の予防・捜査とも関連し、刑事司法手続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)違反の調査等や、犯罪の予防・捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)の規制、暴力団員による不当な行為の防止、つきまとい等の規制、強制退去手続に関する情報であって、公にすることにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものは、法第5条第4号に含まれる。また、公にすることにより、テロ等の人の生命、身体、財産等への不法な侵害や、特定の建造物又はシステムへの不法な侵入又は破壊を招くおそれがあるなど、犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報及び被疑者又は被告人の留置又は勾留に関する施設保安に支障を生ずるおそれのある情報も、法第5条第4号に含まれる。法第5条第4号に該当する情報の具体例としては、情報システムの設計仕様書、構成図等情報セキュリティに関する情報、電子署名を行うために必要なかぎ情報等が挙げられる。一方、風俗営業等の許可、伝染病予防、食品、環境、薬事等の衛生監視、建築規制、災害警備等の一般に公にしても犯罪の予防、鎮圧等に支障が生じるおそれのない行政警察活動に関する情報については、法第5条第6号の規定により判断する。
  5.  審議、検討等情報(法第5条第5号)についての判断基準
    (1) 「国の機関及び地方公共団体の内部又は相互間」とは、国会、内閣、裁判所及び会計検査院(これらに属する機関を含む。)並びに地方公共団体について、それぞれの機関の内部又は他の機関との相互間を意味する。
    (2) 「審議、検討又は協議に関する情報」とは、国の機関又は地方公共団体としての意思決定に至るまでの過程の各段階において行われている様々な審議、検討及び協議に関連して作成され、又は取得された情報をいう。
    (3) 「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」とは、公にすることにより、外部からの圧力、干渉等の影響を受けることなどにより、率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合が想定されているものであり、適正な意思決定手続の確保を保護利益とするものである。
    例えば、「率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれ」には、審議、検討等の場における発言内容が公になることにより、発言者やその家族に対して危害が及ぶおそれが生じる場合が含まれる(この場合には、法第5条第4号等の不開示情報に該当する可能性もある。)。また、「意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」には、行政機関内部における政策の検討が不十分な段階での情報が公になることにより、外部からの圧力によって当該政策に不当な影響を受けるおそれが生じる場合が含まれる。
    (4) 「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」とは、未成熟な情報、事実関係の確認が不十分な情報等を公にすることにより、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合をいう。適正な意思決定を行うことそのものを保護するのではなく、情報が公にされることによる国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。
    例えば、特定の物資が将来不足することが見込まれることから、政府として取引の規制が検討されている段階において、その検討情報を公にすれば、買い占め、売り惜しみ等が起こるおそれがある場合などがこれに該当する。
    (5) 「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」とは、尚早な時期に事実関係等の確認が不十分な情報等を公にすることにより、投機を助長するなどによって、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼす場合が想定されており、事務及び事業の公正な遂行を図るとともに、国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。
    例えば、施設等の建設計画の検討状況に関する情報が開示されることにより、土地の買占めが行われて地価が高騰し、開示を受けた者等が不当な利益を得るおそれがある場合や、違法行為の有無に関する事実関係の調査中の情報が開示されることにより、違法又は不当な行為を行っていない者が不利益を被るおそれがある場合が含まれる。
    (6) 法第5条第5号の「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を公にすることの公益性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、公にすることによる利益と不開示にすることによる利益とを比較衡量した上で判断する。
    (7) 国の機関又は地方公共団体としての意思決定が行われた後は、審議、検討等に関する情報を公にしても、一般的には、「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」が生じる可能性が少なくなるものと考えられることに留意する。ただし、当該意思決定が政策決定の一部の構成要素である場合、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われる場合等審議、検討等の過程が重層的又は連続的な場合には、当該意思決定が行われた後であっても、政策全体の意思決定又は次の意思決定に関して法第5条第5号に該当するかどうか判断する必要があることに留意する。また、意思決定が行われた後であっても、審議、検討等に関する情報が公になることにより、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある場合は、法第5条第5号に該当する。なお、審議、検討等に関する情報であっても、当該情報が専門的な検討を経た調査データ等の客観的、科学的事実又はこれに基づく分析等を記録したものについては、一般的には、法第5条第5号に該当する可能性が低いものと考えられることに留意する。
  6. 事務又は事業に関する情報(法第5条第6号)についての判断基準
    (1) 「公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」
    (ア)国の機関又は地方公共団体が行う事務又は事業は、公共の利益のために行われるものであり、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報は、不開示情報に該当する。なお、法第5条第6号イからホまでの規定は、各機関に共通的に見られる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、公にすることにより、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的な支障が挙げられているものであり、法第5条第6号の規定の対象となる事務及び事業は、これらに限られない。
    (イ)「当該事務又は事業の性質上」とは、当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断するとの趣旨である。
    (ウ)「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」とは、行政機関の長に広範な裁量権限を与えるものではなく、各規定の要件の該当性を客観的に判断する必要がある。また、事務若しくは事業の根拠となる規定又はその趣旨に照らし、公益的な開示の必要性等の種々の利益を衡量した上での「適正な遂行」と言えるものであることが求められる。
    (エ)「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求される。また、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性があると認められるかどうかにより判断する。
    (2) 「監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」(法第5条第6号イ)
    (ア)「監査」(主として監察的見地から、事務又は事業の執行又は財産の状況の正否を調べること。)、「検査」(法令の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格、等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べること。)、「取締り」(行政上の目的による一定の行為の禁止又は制限について適法又は適正な状態を確保すること。)及び「試験」(人の知識、能力等又は物の性能等を試すこと。)に係る事務は、いずれも事実を正確に把握し、その事実に基づいて評価又は判断を加えて、一定の決定を伴うことがあるものである。
    (イ)これらの事務に関する情報の中には、例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報、試験問題等のように、事前に公にすると、適正かつ公正な評価又は判断の前提となる事実の把握が困難となるもの、行政客体における法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長し、又はこれらの行為を巧妙に行うことにより隠蔽をすることを容易にするおそれがあるものがあり、このような情報は、不開示とする。また、監査等の終了後であっても、例えば、違反事例等の詳細を公にすることにより、他の行政客体に法規制を免れる方法を示唆することになるものは、法第5条第6号イに該当する。
    (3) 「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国又は地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」(法第5条第6号ロ)
    (ア)国又は地方公共団体が一方の当事者となる契約、交渉又は争訟に係る事務においては、自己の意思により又は訴訟手続上、相手方と対等な立場で遂行する必要があり、当事者としての利益を保護する必要がある。
    (イ)これらの契約、交渉又は争訟に係る事務に関する情報の中には、例えば、入札予定価格等を公にすることにより、公正な競争により形成されるべき適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれるものや、交渉、争訟等の対処方針等を公にすることにより、当事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがあるものがあり、このような情報は、不開示とする。
    (4) 「調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」(法第5条第6号ハ)
    (ア)国の機関又は地方公共団体が行う調査研究の成果については、社会、国民等にあまねく還元することが原則であるが、成果を上げるためには、従事する職員が、その発想、創意工夫等を最大限に発揮できるようにすることも重要である。
    (イ)国の機関又は地方公共団体が行う調査研究に係る事務に関する情報の中には、例えば、①知的所有権に関する情報、調査研究の途中段階の情報等であって、一定の期日以前に公にすることにより成果を適正に広く国民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがあるもの、②試行錯誤の段階の情報について公にすることにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがある場合があり、このような情報は不開示とする。
    (5) 「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」(法第5条第6号ニ)
    国の機関又は地方公共団体が行う人事管理(職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分、能力等の管理に関すること。)に係る事務については、当該機関の組織としての維持の観点から行われる一定の範囲で当該組織の独自性を有するものであり、人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評価や、人事異動、昇格等の人事構想等を公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。
    (6) 「国又は地方公共団体が経営する企業に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」(法第5条第6号ホ)
    国又は地方公共団体が経営する企業(国営企業及び特定独立行政法人の労働関係に関する法律(昭和23年法律第257号)第2条第1号の国営企業及び地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第2条の適用を受ける企業をいう。)に係る事業については、企業経営という事業の性質上、その正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがあるものは不開示とする。ただし、「企業経営上の正当な利益」の内容については、経営主体、事業の性格及び内容等に応じて判断する必要があり、その範囲は、法第5条第2号の法人等に関する情報と比べて、より狭いものとなる場合があり得ることに留意する。
  7.  具体例
    (1) パブリック・コメント手続において意見又は情報を提出した個人又は法人等の氏名、名称その他の属性に関する情報については,案等の公表に際して,これらを公表又は公にすることが予定されていることを明示している場合を除き、法第5条第1号又は第2号に該当することから不開示とする。
    (2) 行政相談等における相談者の氏名、住所、相談内容等については、原則として、法第5条第1号又は第2号及び第6号に該当することから不開示とする。
    (3) 恩給請求書類、恩給受給権調査申立書等に含まれる請求者に関する情報については、原則として、法第5条第1号に該当することから不開示とする。
    (4) 公益法人の定款又は寄附行為、役員名簿、社員名簿、事業報告書、収支計算書、正味財産増減計算書、貸借対照表、財産目録、事業計画書及び収支予算書については、原則として、開示する。ただし、役員の住所及び略歴、役職員の給与及び各種手当、退職金に関する個人名等については、法第5条第1号又は第2号に該当する可能性があることから、個別に判断する。
第4 部分開示に関する判断基準

開示請求に係る行政文書について、法第6条に基づき部分開示をすべき場合に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

  1. 「開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合」とは、一件の行政文書に複数の情報が記録されている場合に、各情報ごとに、法第5条各号に規定する不開示情報に該当するかどうかを審査した結果、不開示情報に該当する情報がある場合を意味する。開示請求は、行政文書単位に行われるものであるため、法第5条では行政文書に全く不開示情報が記録されていない場合の開示義務が定められているが、法第6条第1項の規定により、開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されている場合に、部分的に開示できるか否かの判断を行わなければならない。
  2.  「容易に区分して除くことができるとき」
    (1) 当該行政文書のどの部分に不開示情報が記載されているかという記載部分の区分けが困難な場合だけではなく、区分けは容易であるがその部分の分離が技術的に困難な場合も、部分開示を行う義務はない。
    「区分」とは、不開示情報が記録されている部分とそれ以外の部分とを概念上区分けすることを意味し、「除く」とは、不開示情報が記録されている部分を、当該部分の内容が分からないように墨塗り、被覆等を行い、行政文書から物理的に除去することを意味する。  例えば、文章として記録されている内容そのものには不開示情報は含まれないが、特徴のある筆跡により特定の個人を識別することができる場合には、識別性のある部分を区分して除くことは困難である。また、録音されている発言内容自体には不開示情報が含まれていないとしても声により特定の個人を識別できる場合も同様である。
    (2) 文書の記載の一部を除くことは、コピー機で作成したその複写物に墨を塗り再複写するなどして行うことができ、一般的には容易であると考えられる。なお、部分開示の作業に多くの時間・労力を要することは、直ちに、区分し、分離することが困難であるということにはならない。一方、録音テープ、録画テープ、磁気ディスクに記録されたデータベース等の電磁的記録については、区分して除くことの容易性が問題となる。例えば、複数の人の発言が同時に録音されているがそのうち一部の発言内容のみに不開示情報が含まれている場合や、録画されている映像中に不開示情報が含まれている場合などでは、不開示情報部分のみを除去することが容易ではないことがあり得る。このような場合には、容易に区分して除くことができる範囲で、開示すべき部分を決定することになる。なお、電磁的記録について、不開示部分と開示部分の分離が既存のプログラムでは行えない場合は、「容易に区分して除くことができないとき」に該当する。
  3. 「当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。」
    (1) 部分的に削除すべき範囲は、文書であれば、一般的には、文、段落等、表であれば個々の欄等を単位として判断することをもって足りる。
    (2) 本項は、義務的に開示すべき範囲が定められているものであり、部分開示の実施に当たり、具体的な記述をどのように削除するかについては、行政機関の長の本法の目的に沿った合目的的な裁量に委ねられている。すなわち、不開示情報の記録部分の全体を完全に黒く塗るか、文字が判読できない程度に被覆するか、当該記録中の主要な部分だけ塗りつぶすかなどの方法の選択は、不開示情報を開示した結果とならない範囲内において、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して判断することとなる。その結果、観念的にはひとまとまりの不開示情報を構成する一部が開示されることになるとしても、実質的に不開示情報が開示されたと認められないのであれば、行政機関の長の不開示義務に反するものではない。
  4. 「有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りではない。」
    (1) 「有意の情報が記録されていないと認められるとき」とは、不開示情報が記録されている部分を除いた残りの部分に記載されている情報の内容が、開示をしても意味がないと認められる場合を意味する。例えば、残りの部分に記載されている内容が、無意味な文字、数字等の羅列となる場合等である。この「有意」性の判断に当たっては、同時に開示される他の情報があれば、これも併せて判断する。
    (2) 「有意の情報」かどうかの判断は、請求の趣旨を損なうか否か、すなわち、開示請求者が知りたいと考える事柄との関連によって判断すべきものではなく、個々の請求者の意図によらず、客観的に決めるべきものである。
  5. 特定の個人を識別することができる情報が記録されている場合について(法第6条第2項)
    (1) 特定の個人を識別することができる情報について、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、残りの部分を開示しても個人の権利利益の保護の観点から支障が生じないと認められるときは、当該残りの部分については、法第5条第1号に規定する不開示情報には該当しないものとして取り扱う。したがって、当該部分は、他の不開示情報の規定に該当しない限り、法第6条第1項の規定により開示することになる。ただし、法第6条第1項の規定を適用するに当たっては、容易に区分して除くことができるかどうかが要件となるので、特定の個人を識別することができることとなる部分とそれ以外の部分とを容易に区分して除くことができない場合は、当該個人に関する情報は全体として不開示とする。なお、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる部分は、法第5条第1号イからハまでのいずれかの規定に該当しない限り、部分開示の対象とならない。
    (2) 特定の個人を識別することができることとなる部分を除くことにより誰に関する情報であるかが分からなくなれば、残りの部分については、通常、個人に関する情報としての保護の必要性は乏しくなるが、当該部分を除いても、開示することが不適当であると認められるものもある。例えば、カルテ、作文等個人の人格と密接に関連する情報が記録された行政文書、個人の未公表の研究論文等、特定の個人を識別させる部分を除いても開示することが不適当であると認められるものは、不開示とする。
    (3) なお、個人に関する情報であっても、「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」(法第5条第1号)については、法第6条第2項の規定の適用はない。
第5 公益上の理由による裁量的開示に関する判断基準

公益上の理由による裁量的開示(法第7条)を行うかどうかの判断は、以下の基準により行う。

  1. 「公益上特に必要があると認めるとき」とは、法第5条各号の不開示情報の規定に該当する情報であるが、行政機関の長の高度の行政的な判断により、公にすることに、当該保護すべき利益を上回る公益上の必要性があると認められる場合を意味する。法第5条各号においても、第1号ロ、第2号ただし書等、当該規定により保護する利益と当該情報を公にすることの公益上の必要性との比較衡量が行われる場合があるが、法第7条では、法第5条の規定を適用した場合に不開示となる場合であっても、なお公にすることに公益上の必要性があると認められる場合には、開示することができるとするものである。
  2. 本条の規定は、「公益上特に必要があると認めるとき」との規定からも、不開示情報を開示するという処分の性質からも明らかなとおり、公益上の必要性の認定についての行政機関の長の要件裁量を認めるものである。
第6 行政文書の存否に関する情報に関する判断基準

開示請求に対し、行政文書の存否を明らかにしないで当該開示請求を拒否すべき場合(法第8条)に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

  1. 「開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」とは、開示請求に係る行政文書が具体的にあるかないかにかかわらず、開示請求された行政文書の存否について回答すれば、不開示情報を開示することとなる場合をいう。  なお、存否を明らかにしないで拒否することが必要な類型の情報については、常に存否を明らかにしないで拒否することが必要であることに留意する。
  2. 開示請求に含まれる情報と不開示情報該当性とが結合することにより、当該行政文書の存否を回答できない場合がある。例えば、特定の個人の名を挙げて、その病歴情報が記録された行政文書の開示請求が行われた場合、当該行政文書に記録されている情報は不開示情報に該当するので不開示であると回答するだけで、当該個人の病歴の存在が明らかになることになる。このような特定の者又は特定の事項を名指しした探索的請求は、法第5条各号の不開示情報の類型すべてについて生じ得る。
    具体的には、次のような例は、本条の規定を適用することとする。
    ①特定の個人の病歴に関する情報(法第5条第1号関係)
    ②先端技術に関する特定企業の設備投資計画に関する情報(法第5条第2号関係)
    ③ 情報交換の存在を明らかにしない約束で他国等との間で交換された情報(法第5条第3号関係)
    ④犯罪の内偵捜査に関する情報(法第5条第4号関係)
    ⑤買い占めを招くなど国民生活に重大な影響を及ぼすおそれのある特定の物質に関する政策決定の検討状況の情報(法第5条第5号関係)
    ⑥特定分野に限定しての試験問題の出題予定に関する情報(法第5条第6号関係)
第7 開示実施手数料の減額又は免除に関する審査基準

行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令(平成12年政令第41号。以下「施行令」という。)第14条第1項に基づく開示実施手数料の減額又は免除は、以下により行う。

  1. 行政文書の開示を受ける者が経済的困難により開示実施手数料を納付する資力がないと認められるかどうかについては、施行令第14条第3項の規定により申請書に添付される書面等を基に判断する。この場合において、生活保護法(昭和25年法律第144号)に基づく扶助を受けていること以外の事実を理由とする場合の当該事実を証明する書面については、生活保護法に基づく扶助を受けてはいないが、これに準ずる状態にあることを証明する書面を想定しており、例えば、同一の世帯に属する者のすべてについて市町村民税が非課税であることを証明する書面等が挙げられる。
  2. 開示実施手数料を減免することが適当と認めるときは、開示決定通知書に記載された開示実施手数料の額を基に算定した額が2,000円を超える場合には2,000円を減額し、2,000円以下となる場合には当該2,000円以下の額を免除することとする。

附則
この訓令は、平成13年4月1日から施行する。
(別添)

会議等の開催に関する会計文書等(類型)の開示・不開示の取扱い

以下の会議等の開催に関する会計文書及び職員の勤務状況に関する文書(類型)が請求された場合の開示・不開示の取扱いは、個々の文書におけるその作成目的、内容等が特殊な場合を捨象した一般的な例を想定したものである。その運用に当たっては、開示請求に係る行政文書に記載されている個々の情報の内容、性質を踏まえ、画一的又は一律的にならないよう留意し、法第5条各号の規定等の趣旨に沿って個々に判断する必要がある。

  1. 会議等の開催に関する会計文書
    (1) 該当する文書
    各行政機関において日常的に開催されている会議等(①各行政機関の部内の会議、②他の行政機関、地方公共団体、民間団体等の職員を交えた連絡、協議、打合せ会議、③B審議会等又は行政運営上の懇談会等)の開催に関する会議費、諸謝金、借料及び旅費の支出に係る書類(決裁伺い、支出負担行為即支出決定決議書、証拠書類(確認書、業者からの請求書、諸謝金支給調書、旅費請求書等))
    (2) 記載情報ごとの開示・不開示の取扱い
    記載情報ごとの開示・不開示の取扱いについては、一般的に次のように整理することができる。ただし、アに該当する場合にあっても、例えば、情報収集、協議、交渉等のための会議等であって、会議名、開催の目的、開催の日時、場所等の情報を公にすることにより事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすこととなるなど、個別の事情により不開示情報に該当するような場合には、個別具体的に判断する必要がある。

    (ア)一般的に法第5条各号の不開示情報には該当せず、開示可能と考えられるもの
    起案(決裁)年月日、決裁者職名、合議者職名、起案者職名、会議等名、開催目的、開催日時、開催場所、出席予定者数、経費所要見込額、支出科目、出席者数、出席者の所属機関・職名(出席者が公務員の場合)
    諸謝金支給総額
    債権者名、請求内容・金額、債権者への振込金額
    会議等出席のための出張者の所属部局・官職・職名(出席者が公務員の場合)、用務(業務内容)、用務先、旅行命令権者印(公印)、旅費概算(精算)額、出張年月日、出発地・経路・到着地等、旅費請求(受領)年月日

    (イ)個別ケースにより開示と不開示について慎重な判断が必要なもの
    決裁者氏名(署名又は印影)、合議者氏名(署名又は印影)、起案者氏名(署名又は印影)、出席者の所属団体・役職名(出席者が公務員以外の場合)、出席者氏名
    謝金受領(予定)者の所属機関・職名・受領者名
    会議等出席のための出張者の所属団体名・役職名(出席者が公務員以外の場合)、出張者氏名
    (参考)以下のような場合は、開示されることとなる。
    ① 公務員の氏名については、例えば、行政機関により作成され、又は行政機関から提供された情報を基に作成され、市販されている名簿に職と氏名が掲載されている場合や幹部職員として異動時に職とその氏名が行政機関により公表されている場合は、法第5条第1号イに該当する。
    ② 出席者等が公務員以外における所属団体等名・役職名・氏名については、例えば、商業登記法に基づく登記事項である等により法人名、役員及びその氏名が公にされている場合は、同号イに該当する。
    ③ 謝金支給(予定)額(公務員の場合)については、例えば、国家公務員倫理法第9条の規定により何人も閲覧の請求ができることとされている贈与等報告書の対象となっている場合は、同号イに該当する。
    ④ 謝金受領(予定)者の所属機関・職名(公務員の場合)については、当該謝金支払の対象となる会議等への出席が職務の遂行に当たる場合は法第5条第1号ハに該当し、当該会議等への出席が職務の遂行に該当しないと解される場合は、③と同様となる。
    ⑤ 会議等が出席者の役職名(公務員以外の場合)、氏名その他の事項を公にすることを前提に開催されている場合においては、当該事項は、不開示情報に該当しない。

    (ウ)一般的に法第5条第1号又は第2号に該当し、不開示と考えられるもの
    謝金受領(予定)者の謝金支給(予定)額(出席者が公務員以外の場合)、謝金受領者住所、諸謝金振込金融機関名、諸謝金振込口座番号
    債権者(茶菓弁当、貸会議室関係事業者)印影、債権者金融機関名、債権者口座番号
    会議等出席のための出張者の住所、職務の級、旅費振込金融機関名、旅費振込口座番号
     
  2. 職員の勤務状況に関する文書
    (1) 該当する文書
    出勤簿、旅行命令簿、休暇簿
    なお、各行政機関において一般的な職務につき共通的に作成されるものを想定しており、職務の性質等が特殊なものを除く。

    (2) 記載情報ごとの開示・不開示の取扱い
    記載情報ごとの開示・不開示の取扱いについては、一般的に次のように整理することができる。ただし、アに該当する場合にあっても、例えば、用務、用務先等を公にすることにより事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすこととなるなど、個別の事情により不開示情報に該当するような場合には、個別具体的に判断する必要がある。

    (ア)一般的に法第5条各号の不開示情報には該当せず、開示可能と考えられるもの
    旅行命令簿における所属部局課、官職、旅行命令発令年月日、用務、用務先、旅行期間、概算払の年月日及び金額、精算払の年月日及び金額

    (イ)個別ケースにより開示と不開示について慎重な判断が必要なもの
    旅行命令簿における職員の氏名、旅行命令権者印(印影)、旅行者氏名(印影)、支出官等印(印影)
    (注)1-(2)-イの(参考)参照。

    (ウ)一般的に、法第5条第1号に該当すると考えられ、不開示と考えられるもの
    出勤簿における氏名、日付欄に記載される出勤の表記(印影)・出張の表記・休暇・レクリエーション参加・休職・停職等の表記、年次休暇付与日数、年次休暇日数・時間(月計・累計・残)、病気休暇日数(月計)、特別休暇日数(月計)、レクリエーション(月計)、介護休暇日数(月計)、欠勤日数(月計)
    旅行命令簿における職務の級、住所
    休暇簿における所属、氏名、年次休暇の日数(前年からの繰越し日数・本年分の日数)、休暇期間、休暇残日数・時間、本人印(印影)、請求年月日、承認の可否、決裁印(印影)、勤務時間管理員処理(印影)

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