平成28年版 消防白書

2.最近の爆発事故等を踏まえた石油コンビナート等における災害対策の推進

(1) 石油コンビナート等における災害防止対策検討関係省庁連絡会議

前述の事故のうち、平成26年1月に発生した三菱マテリアル(株)四日市工場における爆発火災事故を契機として、平成26年2月に内閣官房の主導により、石油コンビナート等の保安に関する規制を行う消防庁、厚生労働省及び経済産業省(以下「3省」という。)が参加して、「石油コンビナート等における災害防止対策検討関係省庁連絡会議」が設置された。
当該連絡会議では、石油コンビナート等における重大事故の発生防止に向けて事業者及び業界団体が取り組むべき事項並びに国及び地方公共団体も含めた関係機関が連携して取り組む事項等について平成26年5月に報告書として取りまとめた。3省では連携して、関係業界団体*8に対し連名で当該報告書に基づく取組を要請するとともに、各都道府県に対して石油コンビナート等における災害防止対策の推進に引き続き努めるよう通知した。
また、報告書を踏まえ、「石油コンビナート等災害防止3省連絡会議」を設置し、定期的に連絡会議を開催し、3省で事故情報や政策動向を共有するとともに、インターネット上に「石油コンビナート等災害防止3省連絡会議3省共同運営サイト」を共同で開設し、事故情報等を発信している。重大事故が発生した際には、連絡会議を随時開催する等、原因調査や再発防止について連携して対応している。
石油コンビナート等災害防止3省連絡会議3省共同運営サイト:http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList4_16.html

*8 石油コンビナート等災害防止法の特定事業所を多く会員に有する業界団体。具体的には、一般社団法人新金属協会、石油化学工業協会、石油連盟、電気事業連合会、日本LPガス協会、一般社団法人日本化学工業協会、一般社団法人日本ガス協会、日本タンクターミナル協会及び一般社団法人日本鉄鋼連盟

(2) 石油コンビナート等の防災体制の強化

近年の石油コンビナート等特別防災区域での大規模な爆発事故や南海トラフ地震や首都直下地震による被害の発生が懸念されること等を踏まえ、消防庁では「石油コンビナート等防災体制検討会」等の検討会を開催し、平成24年度に防災アセスメント指針の改訂、平成25年度には自衛防災組織等の防災活動の手引きの改定を行うなど、石油コンビナート等における防災体制の充実強化を図っている。
平成25年度に開催された「石油コンビナート等防災体制検討会」においては、災害を想定した<1>関係機関の情報共有、<2>関係機関の連携体制、<3>住民等への情報伝達、<4>教育・訓練体制の充実が必要であり、そのための一元的な連絡調整等を行う組織である石油コンビナート等防災本部の役割が重要であることが提言されている。これを踏まえ、災害の拡大防止、早期鎮圧、二次災害防止等の観点から、災害時において特定事業所が消防機関等へ情報提供を行う体制の整備について、特定事業者の策定する防災規程に定めることが義務付けられた(平成27年4月1日施行)。平成25年度の検討結果を踏まえ、平成26年度の検討会では、石油コンビナート等防災本部の機能強化を図るための訓練に活用するため、地震・津波に起因する災害と大規模な爆発火災の2つの標準的な災害シナリオを作成した。さらに、平成27年度は、平成26年度に作成した「標準災害シナリオ」を活用した防災本部訓練の検証や「新たな標準災害シナリオ」としてさらに2つのシナリオを追加する等、引き続き防災本部の機能強化に資するための訓練のあり方等について検討を行い、「石油コンビナート等防災本部の訓練マニュアル」を作成した。
このほか、防災施設の耐災害性を確保する観点から、設置の日から40年を経過した消火用屋外給水施設の配管及び加圧ポンプに関する点検基準が強化された(平成27年4月1日施行)。
また、消火用屋外給水施設の配管は、従来、鋼製のものに限定されていたが、合成樹脂製の管は、耐腐食性や耐震性等が鋼製の管に比べて優れており、一般の消防用設備(屋外消火栓設備等)としても広く利用されていることから、新たに使用できるようにし(平成27年10月1日施行)、今後、増加が見込まれる配管の更新や改修の増加等に対応することとしている。
石油コンビナート等の防災体制の強化について、消防庁では、国土強靱化基本計画で示されたサプライチェーン等の維持や石油コンビナートの損壊、火災、爆発等への対応として、平成25年3月に改訂した「石油コンビナートの防災アセスメント指針」に基づく、関係道府県が作成する石油コンビナート等防災計画の見直しの促進を行うとともに、緊急消防援助隊のエネルギー・産業基盤災害即応部隊(ドラゴンハイパー・コマンドユニット)の体制整備、高度な消防ロボットの研究開発、関係機関による合同訓練の実施の推進を行っている。

(3) 石油コンビナート等における自衛防災組織の技能コンテスト

石油コンビナート等における特定事業所には、災害対応を行うための消防車等を備えた自衛防災組織や共同防災組織(以下「自衛防災組織等」という。)が置かれている。これらの自衛防災組織等において、保有する消防車両の操作技能を高めるとともに防災要員の士気の向上を図り、石油コンビナート等の防災体制を充実強化することを目的とした「石油コンビナート等における自衛防災組織の技能コンテスト」を平成26年度から開催している。
当該コンテストは、11月5日の「津波防災の日」の前後に実施し、特定事業所内で大型化学高所放水車及び泡原液搬送車又は高所放水車(大型化学高所放水車、大型高所放水車又は普通高所放水車をいう。)及び化学消防車(大型化学消防車又は甲種普通化学消防車をいう。)を使用して行い、優秀な成績を収めた自衛防災組織等に対し総務大臣表彰及び消防庁長官表彰を授与している。

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