平成28年版 消防白書

3.消防財政

(1) 市町村の消防費

ア 消防費の決算状況
市町村の普通会計(地方公営事業会計以外の会計をいう。)における平成26年度の消防費歳出決算額(東京消防庁を含む。以下同じ。)は2兆1,273億円で、前年度に比べ1,342億円(6.7%)の増加となっている。
なお、市町村の普通会計歳出決算額56兆2,256億円に占める消防費決算額の割合は3.8%となっている(第2-1-4表)。
第2-1-4表 普通会計決算額と消防費決算額との比較並びに1世帯当たり及び住民1人当たり消防費の推移
イ 1世帯当たり及び住民1人当たりの消防費
平成26年度の1世帯当たりの消防費の全国平均額は3万7,710円であり、住民1人当たりでは1万6,590円となっている(第2-1-4表)。
ウ 経費の性質別内訳
平成26年度消防費決算額2兆1,273億円の性質別内訳は、人件費1兆3,114億円(全体の61.6%)、普通建設事業費5,337億円(同25.1%)、物件費1,997億円(同9.4%)となっており、およそ6割を人件費が占めている。
これを前年度と比較すると、普通建設事業費が1,042億円(24.3%)、人件費が246億円(1.9%)、物件費が89億円(4.7%)増加している(第2-1-5表)。
第2-1-5表 市町村消防費の性質別歳出決算額の推移

(2) 市町村消防費の財源

ア 財源構成
平成26年度の市町村の消防費決算額の財源内訳をみると、一般財源等(地方税、地方交付税、地方譲与税等使途が特定されていない財源)が1兆6,537億円(全体の77.7%)、次いで地方債3,486億円(同16.4%)、国庫支出金377億円(同1.8%)となっている(第2-1-6表)。
第2-1-6表 市町村消防費決算額の財源内訳
イ 地方交付税
地方交付税における消防費の基準財政需要額については、市町村における消防費の実情を勘案して算定されており(地方債の元利償還金等、他の費目で算定されているものもある。)、平成28年度は、
  • 消防救急無線のアナログ方式からデジタル方式への移行により、デジタル化したシステムの運用に係る経費を計上したこと
  • 平成の合併により、市町村の面積が拡大するなど、市町村の姿が大きく変化した中で、標準団体における面積の見直しの実施に伴い、必要となる人員・設備等に係る経費の増加分を平成27年度から平成29年度にかけて段階的に反映することとしていること

等により、単位費用は1万1,300円となり、基準財政需要額は1兆6,556億円(対前年度比0.5%増)となっている(第2-1-7表)。

第2-1-7表 消防費の単位費用及び基準財政需要額の推移
ウ 国庫補助金
市町村の消防防災施設等の整備に対する補助金は、国庫補助金と都道府県補助金があり、消防庁所管の国庫補助金には消防防災施設整備費補助金(以下「施設補助金」という。)と緊急消防援助隊設備整備費補助金(以下「緊援隊補助金」という。)等がある。
施設補助金は、市町村等の消防防災施設等の整備に対して、原則として補助基準額の3分の1又は2分の1の補助を行っている。なお、補助率の嵩上げが規定されているものがある。例えば、過疎地域自立促進特別措置法、離島振興法等に基づく整備計画等に掲げる施設に対しては10分の5.5の補助を行っている。
緊援隊補助金については、消防組織法第49条第2項による法律補助として、緊急消防援助隊のための一定の設備の整備に対して補助基準額の2分の1の補助を行っている。
施設補助金は、平成23年度から都道府県分、平成24年度から指定都市分が地域自主戦略交付金の対象とされ、内閣府に一括して予算計上されていた。しかし、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(平成25年1月11日閣議決定)において、地域自主戦略交付金を廃止し、各省庁の交付金等に移行することとされたことから、平成24年度補正予算(第1号)から都道府県分及び指定都市分は施設補助金の対象となっている。ただし、都道府県分のうち沖縄県分については、平成24年度から沖縄振興公共投資交付金の対象とされているが、平成28年度においても引き続き内閣府に一括して予算計上されている。
平成28年度の当初予算額については、施設補助金は14.4億円、緊援隊補助金は49.0億円となっている。
なお、施設補助金及び緊援隊補助金のほか、消防庁以外の予算により消防費に関する財源とされる国庫補助金等については、「オ その他」に記載している。
エ 地方債
消防防災施設等の整備のためには多額の経費を必要とするが、国庫補助金や一般財源に加えて重要な役割を果たしているのが地方債である(第2-1-8表)。
第2-1-8表 市町村等の消防防災施設等整備に係る地方債発行(予定)額の推移

このうち、防災対策事業は、地域における「災害等に強い安心安全なまちづくり」を目指し、住民の安心・安全の確保と被害の軽減を図るため、防災基盤整備事業及び公共施設等耐震化事業等を対象とし、地方債の元利償還金の一部について地方交付税措置が講じられている。
防災基盤整備事業は、防災・減災に資する消防防災施設の整備に関する事業で地域防災計画と整合性を図りつつ行う事業、公共施設及び公用施設の津波浸水想定区域内からの移転事業、消防広域化関連事業等を対象としている。
公共施設等耐震化事業は、地域防災計画上、その耐震改修を進める必要のある公共施設及び公用施設の耐震化を対象としている。
また、東日本大震災を教訓として、全国的に緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災・減災のための地方単独事業等に取り組むため、<1>大規模災害時の防災・減災対策のために必要な施設の整備、<2>大規模災害に迅速に対応するための情報網の構築、<3>津波対策の観点から移転が必要と位置付けられた公共施設等の移設、<4>消防広域化事業、<5>地域防災計画上に定められた公共施設・公用施設の耐震化等を実施する場合には、緊急防災・減災事業の対象とし、地方債の元利償還金の一部について地方交付税措置が講じられている。なお、緊急防災・減災事業に関しては、「未来への投資を実現する経済対策」(平成28年8月2日閣議決定)及び熊本地震の被害状況を踏まえ、

  • 指定避難所における空調設備
  • 被災者関連機能(被災者台帳管理、罹災証明書発行、建物被害調査、仮設住宅管理、義援金交付)、避難所関連機能(避難所のニーズ把握、避難所運営、備蓄物資・救援物資管理)、避難行動要支援者関連機能、関係機関等との災害情報等共有機能、職員参集連絡機能等を有する防災情報システム
  • 災害時オペレーションシステム(災害対策本部や消防本部等に設置する、ヘリテレや地上設置カメラによる画像等をリアルタイムで大型スクリーンに表示し、同時に関係機関間で共有する機能等を有するシステム)

の整備について、その対象を拡充している。
このほか、消防防災施設等の整備に係る地方債には、教育・福祉施設等整備事業、一般単独事業(一般事業(消防・防災施設))、辺地対策事業及び過疎対策事業等がある。

オ その他
前記イ~エのほか、特に消防費に関する財源として、入湯税、航空機燃料譲与税、交通安全対策特別交付金、電源立地地域対策交付金、石油貯蔵施設立地対策等交付金、高速自動車国道救急業務実施市町村支弁金、防衛施設周辺民生安定施設整備事業補助金等がある。

(3) 都道府県の防災費

都道府県の防災費の状況をみると、平成26年度における歳出決算額は1,474億円であり、平成26年度都道府県普通会計歳出決算額に占める割合は0.29%である(第2-1-9表)。その内容は、消防防災ヘリコプター、防災資機材及び防災施設の整備・管理運営費、消防学校費、危険物及び高圧ガス取締り、火災予防、国民保護対策等に要する事務費等である。

第2-1-9表 都道府県の普通会計歳出決算額と防災費歳出決算額等の推移

(4) 消防庁予算額

ア 平成28年度当初予算
消防庁の平成28年度の当初予算額は、一般会計分と復興庁一括計上を合わせて189億78百万円となっており、平成27年度補正予算において計上した7億98百万円と合わせれば197億76百万円の予算を確保している。また、一般会計予算の規模は、128億77百万円であり、対前年度比で13億43百万円(△9.4%)の減額となっており、人件費を除く事業費ベースでは、114億4百万円であり、うち緊急消防援助隊設備整備費補助金等の消防補助負担金は、64億31百万円となっている。
主な事業として、巨大地震・火山災害等に備えた緊急消防援助隊の強化58億5百万円、複雑多様化、高度化する消防需要に対応するための常備消防力等の強化30億84百万円、地域防災力の中核となる消防団の強化6億51百万円、多様な主体による地域防災力の充実強化と火災予防対策の推進4億3百万円、消防防災分野における女性の活躍促進47百万円、伊勢志摩サミット等における消防・救急体制の確保4億43百万円、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等の円滑な開催に向けた大都市等の安心・安全対策の推進2億55百万円となっている(第2-1-10表、第2-1-5図)。
第2-1-10表 平成28年度 消防庁予算の内訳
第2-1-5図 平成28年度 消防庁予算の概要
イ 復興庁一括計上予算
平成27年度に引き続き、東日本大震災で大きな被害を受けた被災地における消防防災施設・設備の復旧を実施するため、復興庁の東日本大震災復興特別会計において61億1百万円の予算措置を講じた。
○消防防災施設災害復旧費補助金(56億8百万円)
○消防防災設備災害復旧費補助金(82百万円)
東日本大震災で大きな被害を受けた被災地における消防防災施設・設備の復旧を緊急に実施するために必要となる経費を補助金として被災地方公共団体に交付するもの(国庫2/3)。
○原子力災害避難指示区域消防活動費交付金(3億85百万円)
東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い設定された避難指示区域における大規模林野火災等の災害に対応するため、当該区域の消防活動に伴い必要となる消防車両等の整備等に要する経費、福島県内消防本部の消防車両等及び福島県外からのヘリコプターによる消防応援活動に要する経費、福島県内外の消防本部等の消防応援に係る訓練の実施に要する経費を全額交付するもの。
○緊急消防援助隊活動費負担金(東日本大震災派遣ヘリ除染)(26百万円)
消防庁長官の指示により緊急消防援助隊として出動したヘリコプターに関し、平成28年度においてエンジン整備時の内部の除染に要する経費を負担するもの。

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