平成28年版 消防白書

2.災害に強い消防防災通信ネットワークの整備

被害状況等に係る情報の収集及び伝達を行うためには、通信ネットワークが必要である。災害時には、安否確認等により、平常時の数十倍もの通信量が発生することから、公衆網においては通話規制が行われることが多く、また通信施設の被災や停電により、これらの通信ネットワークの使用が困難となる場合もある。
このため、災害時においても通信を確実に確保できるよう、国、都道府県、市町村等においては、公衆網のほか、災害に強い自営網である消防防災通信ネットワーク、非常用電源等の整備を行っている。
現在、国、消防庁、地方公共団体、住民等を結ぶ消防防災通信ネットワークを構成する主要な通信網として、<1>政府内の情報収集・伝達を行う中央防災無線網、<2>消防庁と都道府県を結ぶ消防防災無線、<3>都道府県と市町村等を結ぶ都道府県防災行政無線、<4>市町村と住民等を結ぶ市町村防災行政無線並びに<5>国と地方公共団体及び地方公共団体間を結ぶ衛星通信ネットワーク等が構築されている(第2-10-2図)。

第2-10-2図 消防防災通信ネットワークの概要

消防庁では、緊急防災・減災事業、防災基盤整備事業等を活用し、これらの消防防災通信ネットワークの整備促進及び充実強化を図っている。

(1) 災害時対応支援システムの導入と活用

ア 地震被害想定システム
消防庁では、災害発生時に正確かつ迅速な状況判断の下に的確な応急活動を遂行する必要がある。そのため、災害発生時はシミュレーションにより被害を推測することができ、かつ、平時には円滑な災害対応訓練に活用できるシステムを導入することが有効であることから、地震被害想定システム等の開発・普及に努めている。
特に、消防研究センターで開発した「簡易型地震被害想定システム」(第2-10-6図)は、地震発生時に自動的に被害を推計することが可能であり、迅速な状況判断、初動措置の確保、日常の指揮訓練等に役立つシステムである。
第2-10-6図 簡易型地震被害想定システムの画面表示例

消防庁では、当該システムによる被害推定結果を全都道府県等にメール配信するなど活用を図っている。
地震直後の自動推計においては、気象庁が公開している点震源を用いていることから、本システムは平成23年東北地方太平洋沖地震のような一定規模を超えた巨大地震への適用には限界を有している。
広い範囲の断層の破壊現象によって引き起こされる巨大地震に対応するために、震度情報や線震源モデルなどを活用し、地震発生直後においても精度の高い被害推計が可能なシステムへの改良について研究開発を行っている。

イ 震度情報ネットワーク
全国の市町村で計測された震度情報を消防庁へ即時送信するシステム(震度情報ネットワーク)は、平成9年(1997年)4月から運用しており、本システムで収集された震度データは、緊急消防援助隊の派遣等、広域応援活動に活用するとともに、気象庁にも提供され震度情報として発表されている。

(2) 各種統計報告オンライン処理システム

行政事務の情報化に対応し、統計事務の効率化・迅速化を図るため、平成14年度から各種統計報告を行っており、平成15年度から順次運用を開始している。

  • 火災報告等オンライン処理システム
  • 防火対象物実態等調査オンライン処理システム
  • ウツタイン様式調査オンライン処理システム
  • 「危険物規制事務調査」及び「危険物に係る事故及びコンビナート等特別防災区域における事故報告」オンライン処理システム
  • 救急救助調査オンライン処理システム
  • 石油コンビナート等実態調査オンライン処理システム
  • 消防防災・震災対策現況調査オンライン処理システム

消防庁では、これらのデータを迅速かつ的確に収集・整理することにより、都道府県、消防本部への速やかな情報提供を行い、各種施策への反映を支援している。
さらに、平成24年1月からは、各システムを統合した「統計調査系システム」として、ハードウエア等の管理を一元化し、入力の利便性の確保を行うことなどにより効率的な運用を行っている。

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