平成28年版 消防白書

第5節 救急体制

1.救急業務の実施状況

(1) 救急出動の状況

平成27年中の救急自動車による全国の救急出動件数は、605万4,815件(対前年比6万9,894件増、1.2%増)となっており、初めて500万件を超えた平成16年以降もほぼ一貫して増加傾向を続けている。救急出動件数は1日平均とすると約1万6,589件(前年1万6,397件)で、約5.2秒(同5.3秒)に1回の割合で救急隊が出動したことになる。
また、救急自動車による搬送人員も一貫して増加傾向を続け、547万8,370人(対前年比7万2,453人増、1.3%増)となっており、国民の23人に1人(前年24人に1人)が救急隊によって搬送されたことになる。救急自動車による搬送の原因となった事故種別にみると、急病が349万1,374人(63.7%)、一般負傷が81万7,931人(14.9%)、交通事故が49万797人(9.0%)などとなっている(第2-5-1表、第2-5-2表、附属資料4041)。

第2-5-1表 救急出動件数及び搬送人員の推移
第2-5-2表 救急自動車による事故種別出動件数及び搬送人員

なお、消防防災ヘリコプターによる出動件数は3,375件(前年3,456件)、搬送人員は2,882人(前年2,718人)となっている。

(2) 傷病程度別搬送人員の状況

平成27年中の救急自動車による搬送人員547万8,370人のうち、死亡、重症及び中等症の傷病者の割合は全体の50.4%、入院加療を必要としない軽症傷病者及びその他(医師の診断がないもの等)の割合は49.6%となっている(第2-5-3表)。

第2-5-3表 救急自動車による事故種別傷病程度別搬送人員の状況

(3) 年齢区分別事故種別搬送人員の状況

平成27年中の救急自動車による搬送人員547万8,370人の内訳を年齢区分別にみると、新生児が1万3,054人(0.2%)、乳幼児が25万3,818人(4.6%)、少年が19万7,552人(3.6%)、成人が190万9,578人(34.9%)、高齢者が310万4,368人(56.7%)となっており、高齢化の進展等により高齢者の占める割合が年々高まる傾向にある(前年55.5%)。
また、急病では高齢者(210万6,867人、60.3%)、交通事故では成人(30万9,253人、63.0%)、一般負傷では高齢者(52万7,533人、64.5%)が高い割合で搬送されている(第2-5-4表、第2-5-1図)。

第2-5-4表 救急自動車による年齢区分別事故種別搬送人員の状況
第2-5-1図 年齢区分別搬送人員構成比率の推移

(4) 急病に係る疾病分類別搬送人員の状況

平成27年中の急病の救急自動車による搬送人員349万1,374人の内訳をWHOの国際疾病分類(ICD10)の項目別にみると、脳疾患が28万1,703人(8.1%)、心疾患等が30万2,081人(8.6%)、消化器系が34万1,483人(9.8%)、呼吸器系が32万6,964人(9.4%)などとなっている(第2-5-2図)。

第2-5-2図 急病に係る疾病分類別搬送人員の状況

(5) 現場到着所要時間の状況

平成27年中の救急自動車による出動件数605万4,815件の内訳を現場到着所要時間(119番通報を受けてから現場に到着するまでに要した時間)別にみると、5分以上10分未満が378万7,142件で最も多く、全体の62.5%となっている(第2-5-3図)。

第2-5-3図 救急自動車による現場到着所要時間別出動件数の状況

また、現場到着所要時間の平均は8.6分(前年8.6分)となっており、10年前(平成17年)と比べ、2.1分延伸している(第2-5-5図)。

第2-5-5図 救急自動車による現場等到着所要時間及び病院収容所要時間の推移

(6) 病院収容所要時間の状況

平成27年中の救急自動車による搬送人員547万8,370人の内訳を病院収容所要時間(119番通報を受けてから病院に収容するまでに要した時間)別にみると、30分以上60分未満が334万9,560人(61.2%)で最も多く、次いで20分以上30分未満が139万8,607人(25.5%)となっている(第2-5-4図)。

第2-5-4図 救急自動車による病院収容所要時間別搬送人員の状況

また、病院収容所要時間の平均は39.4分(前年39.4分)となっており、10年前(平成17年)と比べ、8.3分延伸している(第2-5-5図)。

第2-5-5図 救急自動車による現場等到着所要時間及び病院収容所要時間の推移

(7) 救急隊員の行った応急処置等の状況

平成27年中の救急自動車による搬送人員547万8,370人のうち、救急隊員が応急処置等を行った傷病者は536万6,739人(98.0%)となっており、救急隊員が行った応急処置等の総件数は2,024万6,134件である。
また、平成3年(1991年)以降に拡大された救急隊員が行った応急処置等(第2-5-5表における※の項目)の総件数は、1,414万4,953件(対前年比3.2%増)となっているが、このうち救急救命士が傷病者の蘇生等のために行う救急救命処置(除細動*1(救急救命士以外の救急隊員が行うものを含む。)、ラリンゲアルマスク*2等による気道確保、気管挿管、除細動、静脈路確保*3、薬剤投与*4、エピペン投与*5、血糖測定*6、ブドウ糖投与*7)の件数は16万1,381件(前年13万5,668件)に上り、前年比で約19%増となっている。

第2-5-5表 救急隊員が行った応急処置等の状況

*1 除細動:心臓が痙攣したように細かく震えて血液が拍出できない致死的不整脈(心室細動)に電気ショックをかけることにより、その震えを取り除く処置のことをいう。

*2 ラリンゲアルマスク:気道確保に用いられる換気チューブの一つ。喉頭を覆い隠すように接着し、換気路を確保する。

*3 静脈路確保:静脈内に針やチューブを留置して輸液路を確保する処置。静脈路確保により、薬剤を必要時に直ちに静脈内投与することが可能になる。

*4 薬剤投与:医師の具体的な指示の下での、アドレナリン(エピネフリンともいう。以下単に「アドレナリン」という。)の投与をいう。

*5 エピペン投与:アナフィラキシーショックにより生命が危険な状態にある傷病者が、あらかじめ自己注射が可能なアドレナリン製剤(エピペン)を処方されている者であった場合には、救急救命士が、アドレナリン製剤(エピペン)の投与を行うこと。

*6 血糖測定:意識障害のある傷病者に対して血糖値を測定すること。

*7 ブドウ糖投与:医師の具体的な指示の下での、ブドウ糖投与をいう。

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