平成28年版 消防白書

2.国民保護法に基づく国民の保護に関する措置の概要

国民保護法では、国は、武力攻撃事態等及び緊急対処事態が現実に発生した場合には、その組織及び機能の全てを挙げて自ら国民の保護に関する措置(以下「国民保護措置」という。)を的確かつ迅速に実施するとともに、地方公共団体及び指定公共機関が実施する国民保護措置を的確かつ迅速に支援することとされており、国の方針の下で、国全体として万全の措置を講ずることとしている。
このため、あらかじめ政府は国民の保護に関する基本指針(以下「基本指針」という。)を、指定行政機関(各府省等)及び地方公共団体は国民の保護に関する計画(以下「国民保護計画」という。)を定め(4.基本指針・国民保護計画 参照)、武力攻撃事態等及び緊急対処事態の際には、国民保護法に加えてこれらの基本指針や国民保護計画に基づき、国、都道府県、市町村(特別区を含む。以下同じ。)等が連携して避難、救援、武力攻撃災害への対処等の国民保護措置を実施する(第3-1-1図)。

第3-1-1図 国民の保護に関する措置の仕組み

(1) 住民の避難に関する措置

対策本部長(内閣総理大臣)は、武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護するため緊急の必要があると認めるときは、警報を発令しなければならない。警報では、武力攻撃事態等の現状及び予測、武力攻撃が迫り、又は武力攻撃が発生したと認められる地域、その他住民及び公私の団体に対し周知させるべき事項が示される。発令された警報は総務大臣を経由して都道府県知事に通知され、都道府県知事は、直ちにその内容を都道府県の区域内の市町村長等に通知し、市町村長はその内容を住民等に伝達する。
対策本部長は、警報を発令した場合において、住民の避難が必要であると認めるときは、総務大臣を経由して都道府県知事に対し、直ちに避難に関する措置を講ずべきことを指示する。この指示(以下「避難措置の指示」という。)を行うときは、対策本部長は、要避難地域、避難先地域及び避難に関して関係機関が講ずべき措置の概要を示さなければならない。避難措置の指示を受けた要避難地域を管轄する都道府県知事は、住民に対して直ちに避難すべき旨を指示する。この場合、都道府県知事は、主要な避難の経路、避難のための交通手段その他避難の方法を示さなければならない。避難の指示は市町村長を通じて住民に伝達される。住民に対して避難の指示がなされた市町村長は、直ちに避難実施要領(5.(2)市町村における避難実施要領のパターンの作成 参照)を定め、避難住民の誘導を行う。

(2) 避難住民等の救援に関する措置

対策本部長は、避難措置の指示をしたときは、避難先地域を管轄する都道府県知事に対し、直ちに、救援に関する措置を講ずべきことを指示し、当該指示を受けた都道府県知事は、食品・生活必需品等の給与、収容施設の供与等の救援に関する措置を実施する。

(3) 武力攻撃災害への対処に関する措置

国、都道府県及び市町村は、生活関連等施設の安全確保等、武力攻撃災害への対処のための措置をそれぞれ講ずることとされている。また、対策本部長は、都道府県知事に対し、必要に応じて、武力攻撃災害への対処及び武力攻撃災害の防除等に関して所要の措置を講ずべきことを指示することができる。

(4) その他の措置等

以上のほか、国民保護法及び国民保護計画等に基づき国民生活の安定に関する措置等の必要な措置が行われる。また、都道府県は対策本部長に対し、市町村は都道府県に対し、必要に応じて国民保護措置の実施要請、総合調整の要請等を行うことができる。

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