平成28年版 消防白書

1.サミット開催までの取組

平成27年6月5日に当地域におけるサミット開催が決定されたことを受け、サミットの成功に向けて政府が一丸となって準備に取り組むため、内閣官房副長官を議長とする「伊勢志摩サミット準備会議」が、本会議の下には「伊勢志摩サミット準備会議警備対策部会」が設置された。9月15日には「伊勢志摩サミットにおける警備対策の基本方針」が決定され、テロ災害対応の強化、重要施設における警戒の強化などが定められた。
過去に3回開催された東京サミット、平成12年の九州・沖縄サミット、平成20年の北海道洞爺湖サミットと同様、警戒を行ってきた。今回のサミットにおいても消防特別警戒を行うこととし、警戒エリアの消防力を強化することにより、災害の未然防止や被害の軽減を図り、消防責任を果たしていくため、全国的な応援体制を構築することとした。
消防庁においては、平成27年6月15日に消防庁に「消防庁伊勢志摩サミット等対策準備本部」を設置し、関係省庁と警戒に係る具体的な協議・調整を重ねた。また、7月29日には、サミット警戒期間中における円滑な警戒活動の推進を目的として、消防庁次長を委員長とし、三重県、愛知県、開催地消防本部、応援消防本部、全国消防長会の職員を委員とした「伊勢志摩サミット消防・救急対策委員会」を設置するとともに、本委員会の下、個別具体的な活動計画を策定するための警防・予防部会をそれぞれ設置し、サミット開催期間中における警防計画・予防計画の策定に着手した。
これらを踏まえ、警防対策としては、テロ対応車両及び資機材の増強配備によるテロ対応体制の強化、各警戒対象施設、現地警戒本部におけるNBC災害対応訓練、警戒に当たる各部隊長を対象とした警防視察及び災害活動要領の確認を行った。
予防対策としては、地元消防本部と応援消防本部が協力して、サミット関係施設において立入検査及び防火指導の実施した。
さらに、主会場、首脳宿泊場所をはじめとした各警戒対象物における、施設関係者と連携した災害対応訓練、統括警戒本部運営訓練、ヘリテレ及びヘリサットシステムの映像受信訓練を実施するなど、火災等の未然防止とテロ災害等発生時の確実な対応要領を確認し、体制の構築を図った。
消防特別警戒の実施に先立ち、サミット警戒に従事する消防隊員を激励し、隊員の士気高揚を図るため、平成28年5月24日に三重県志摩市「サンアール磯部」に消防職員約640人、消防車両46台が集結し、結団式が行われた。式の中では、消防庁長官(代理:消防・救急課長)をはじめ、三重県知事、全国消防長会会長、志摩市長から激励を受けた。また、同日、愛知県常滑市「常滑市消防本部」においても、消防職員約130人、消防車両13台が集結し、中部国際空港の警戒に当たる消防部隊の結団式が行われた。

消防・救急対策委員会警防部会
主会場におけるNBC対応訓練

(1) 実施期間

G7会合は平成28年5月26日及び27日であったが、警戒活動の準備期間及びG7以外の国々の首脳等を含めた要人の三重県滞在期間を考慮し、5月24日17時から5月29日9時までの6日間を警戒期間とした。

(2) 応援体制

サミット開催地の消防体制やサミット関係施設の状況、テロ災害が発生している近年の社会情勢を踏まえ、実施期間中は常時三重県内外から消防車両99台、消防ヘリ6機、消防職員等1,014人(警防要員912人、予防要員102人)の消防特別警戒体制を構築した。
特にテロ災害対応を重視し、特殊災害対応車、大型除染車、ヘリコプター等を増強配備した。

結団式会場に全国から集結した消防隊と消防車両

(3) 警戒対象施設等

首脳会議が開催される首脳が宿泊するホテル、志摩市及び鳥羽市内の主な宿泊施設、各国マスコミ関係者の活動拠点となった国際メディアセンター、各国首脳の航空機が離発着した中部国際空港、要人の移動経路となった高速道路等を警戒対象とした。

(4) 警戒体制の概要

ア 警戒部隊

サミット関係施設を中心に警戒部隊が待機するためのプレハブ等を設置し、部隊を配備するとともに、救急隊は緊急事態に迅速に対応するため、主会場のホテルと国際メディアセンターの敷地内に車両を配備し、救急隊員も施設内にて待機するなど、2交代24時間体制で消防車両を配備して警戒活動を実施した。
ヘリコプターについては、津市(伊勢湾ヘリポート)に三重県の消防防災ヘリを駐機し、伊勢市(県伊勢志摩広域防災拠点)に東京消防庁及び京都市消防局のヘリを駐機し、警戒体制を整えた。

引継ぎをする消防隊
ヘリ警戒

イ 予防警戒員

警戒期間中、予防警戒員は各サミット警戒対象施設内の防災センター等に24時間体制で常駐し、防災設備による監視警戒や防火安全上の巡回点検などにより火災等の未然防止を図るとともに、火災等の災害発生時の初動対応や現地警戒本部等との連絡調整、消防・防災設備作動時の対応など事案発生時の即応体制の確保を図った。

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