令和2年版 消防白書

2.消防防災施設等

(1)消防車両等の整備

消防本部及び消防署においては、消防活動に必要となる消防ポンプ自動車、はしご自動車(屈折はしご自動車を含む。)、化学消防車、救急自動車、救助工作車等が整備されている。
また、消防団においては、消防ポンプ自動車、小型動力ポンプ付積載車、救助資機材搭載型車両等が整備されている(第2-1-2表)。

第2-1-2表 消防車両等の保有数

(令和2年4月1日現在)(単位:台、艇、機)

第2-1-2表 消防車両等の保有数

(備考)「消防防災・震災対策現況調査」、「救急年報報告」、「救助年報報告」により作成

(2)消防通信施設

火災等の被害を最小限に抑えるためには、火災等を早期に覚知し、消防機関が素早く現場に到着するとともに、現場においては、情報の収集及び指揮命令の伝達を迅速かつ的確に行うことが重要である。この面で消防通信施設の果たす役割は大きい。消防通信施設には、火災報知専用電話、消防通信網等がある。

ア 119番通報

火災報知専用電話は、通報者等が行う火災や救急等に関する緊急通報を消防機関が受信するための専用電話をいう。
なお、電気通信番号計画において、消防機関への緊急通報に関する電気通信番号は「119」と定められている。
令和元年中の119番通報件数は、878万6,855件となっており、その通報内容の内訳は、救急・救助に関する通報件数が全体の70.9%を占めている(第2-1-3図)。
近年の携帯電話・IP電話等(以下「携帯電話等」という。)の普及に伴い、携帯電話等による119番通報の件数が増加し、通報総数に占める割合は、携帯電話が47.7%、IP電話が24.2%となっている(第2-1-4図)。

第2-1-3図 119番通報件数(通報内容別)

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(令和元年中)

第2-1-3図 119番通報件数(通報内容別)

(備考)
1 「消防防災・震災対策現況調査」より作成
2 小数点第二位を四捨五入のため、合計等が一致しない場合がある。

第2-1-4図 119番通報件数(回線区分別)

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(令和元年中)

第2-1-4図 119番通報件数(回線区分別)

(備考)「消防防災・震災対策現況調査」より作成

(ア)119番緊急通報での位置情報通知
119番通報を受信する消防機関では、通報者とのやり取りの中で、災害地点や災害情報の聞き取りを行っているが、高機能消防指令センターを導入する消防機関では119番通報を受けた際にモニター上の地図に通報場所などの位置情報を表示することが可能となっている。
平成19年4月から、携帯電話等からの119番通報時に発信場所の位置情報が消防機関に通知される「位置情報通知システム」の運用が始まり、平成21年10月からは、この位置情報通知システムと従前より固定電話からの通報のために運用している「新発信地表示システム」*1を統合した「統合型位置情報通知システム」の運用を開始した。
令和2年4月1日現在、「位置情報通知システム」や「統合型位置情報通知システム」により、携帯電話等からの119番通報時に位置情報を把握できる消防本部数は、712本部(うち統合型位置情報通知システム598本部)となっている。
(イ)音声によらない通報
119番通報は音声による意思疎通を前提とした仕組みであるため、聴覚・言語障害者が緊急通報を行う手段として、FAXや電子メールを用いた音声によらない代替手段が導入されている。しかし、FAXが置かれている場所からしか通報ができない、通報者の所在地や状況を伝えるのに時間を要する等の課題が存在している。
聴覚・言語障害者が音声によらず119番緊急通報を行う手段として、消防庁では平成27年度から、スマートフォンの画面上のボタン操作や文字入力により通報を行うことができる「Net119緊急通報システム」(第2-1-5図)について検討し、平成29年3月に、全国の消防本部で導入すべきシステムの標準仕様等を取りまとめた。全ての消防本部に導入することを目標に取り組んでおり、令和2年6月1日現在、726本部中307消防本部(約42%)が導入済みである。
さらに、聴覚・言語障害者が電話を利用する手段として、聴覚・言語障害者と健聴者との間をオペレーターが「手話」や「文字」から「音声」に通訳し即時双方向につなぐ「電話リレーサービス」があり、平成25年より公益財団法人日本財団がモデル事業を実施している。これまで、電話リレーサービスを用いた緊急通報は実現していなかったが、令和2年6月に成立、同年12月に施行された「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」により電話リレーサービスが公共インフラとして位置付けられることとなり、消防としても、令和3年度に全国で提供が開始される電話リレーサービス経由の緊急通報へ対応していくため、必要な準備を進めている。

第2-1-5図 Net119の流れ

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第2-1-5図 Net119の流れ

(ウ)外国人からの通報
電話通訳センターを介した三者間同時通訳による119番多言語対応は、外国人からの119番通報時、外国人のいる救急現場での活動時等において、迅速かつ的確に対応するため、電話通訳センターを介して、24時間365日主要な言語で対応するものである。
消防庁では、「電話通訳センターを介した三者間同時通訳による多言語対応の推進について(通知)」(平成29年1月25日付け消防消第8号消防庁消防・救急課長通知)を各消防本部に通知し、都道府県内消防本部による共同契約、都道府県等が既に契約している電話通訳センターの利用などによる、119番通報時等における多言語対応の推進を図っているところであり、全ての消防本部で導入されることを目標に取り組んでいる。
令和2年6月1日現在、726本部中604本部(約83.2%)が導入済みである(第2-1-6図)。

第2-1-6図 三者間同時通訳の流れ

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第2-1-6図 三者間同時通訳の流れ

イ 消防通信網等

消防救急無線は、消防本部から災害現場で活動する消防隊、救急隊等に対する指示を行う場合、あるいは、火災現場における命令伝達及び情報収集を行う場合に必要とされる重要な設備である。また、消防電話は、消防本部、消防署及び出張所相互間において、通報を受けた場合に同時伝達、指令等の連絡に使われる専用電話である。
また、消防防災ヘリコプターに搭載されたカメラ等で撮影された映像情報は、衛星通信ネットワークを活用して、全国や地域で利用されている。

(3)消防水利

消防水利は、消防活動を行う上で消防車両等とともに不可欠なものであり、一般的には、消火栓、防火水槽等の人工水利と河川、池、海、湖等の自然水利とに分類される。
人工水利は、火災発生場所の近くで常に一定の取水が可能であることから、消防活動時に消防水利として活用される頻度が高いものである。特に阪神・淡路大震災以降は、大規模地震に対する消防水利対策として、耐震性を備えた防火水槽等の整備が積極的に進められており、「消防水利の基準」(昭和39年消防庁告示第7号)においても、平成26年に、計画的に配置する旨改正した(第2-1-3表参照)。
さらに近年は、前述の耐震性能への懸念のほか、消防水利の老朽化への懸念、木造建築物の密集地域等における新たな消防水利の需要が見込まれていることなどから、「消防水利の整備促進強化について」(平成29年11月24日付け消防消第272号消防庁消防・救急課長通知)により、市町村が消防水利の整備について短期・中期・長期と段階的に数値目標を設けることにより、充実の促進を図ることとしている。
また、自然水利は、取水量に制限がなく長時間に渡る取水が可能な場合が多いため、人工水利とともに消防水利として重要な役割を担っている。その反面、季節により使用できない場合や、取水場所などに制限を受ける場合もあるため、消防水利の整備に当たっては、人工水利と自然水利を適切に組み合わせて配置することが求められる。

第2-1-3表 消防水利(主な人工水利)の整備数

(各年4月1日現在)

第2-1-3表 消防水利(主な人工水利)の整備数

(備考)
1 「消防防災・震災対策現況調査」により作成
2 ( )は、構成比を示し、単位は%である。

*1 新発信地表示システム:東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社の固定電話から119番通報に係る発信者の位置情報(住所情報)を消防本部に通知するシステム

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