令和2年版 消防白書

第7節 航空消防防災体制

1.航空消防防災体制の現況

消防機関及び都道府県が保有する消防防災ヘリコプターは、救急搬送や救助、林野火災における空中消火等の活動で大きな成果を上げている。特に、台風や豪雨に伴う水害や土砂災害の発生により、陸上交通路が途絶するような事態では、ヘリコプターの高速性・機動性を活用した消防活動は、重要な役割を果たしている。
令和元年東日本台風(台風第19号)では、消防防災ヘリコプターが早期に情報収集活動や孤立した地域の住民の救出を実施したほか、人員輸送等で活躍し、消防防災ヘリコプターの特性が大いに発揮された。
その一方で、平成21年以降、消防防災ヘリコプターの墜落事故が4件、合わせて26人が殉職する極めて憂慮すべき事態となっている。
これらの事故を踏まえ、運航団体が安全性の向上に着実に取り組むため、令和元年9月に「消防防災ヘリコプターの運航に関する基準」を消防組織法第37条に基づく消防庁長官の勧告として発出した。
令和2年11月1日現在、消防防災ヘリコプターの配備状況は、消防庁保有が4機、消防機関保有が30機、道県保有が40機の計74機となっており、県内に消防防災ヘリコプターの配備のない未配備県域は、佐賀県、沖縄県及び平成30年8月10日に発生した墜落事故のため現在ヘリコプターを保有していない群馬県の3県域である(第2-7-1図)。
消防防災ヘリコプターは、多様な消防活動でその能力を発揮しており、令和元年中の全国の出動実績は6,156件で、その内訳は、救急出動3,005件、救助出動1,993件、火災出動1,014件、情報収集・輸送等出動144件となっている(第2-7-2図、第2-7-3図)。
また、消防防災ヘリコプターの総運航時間は17,729時間で、その内訳は、災害出動が5,228時間(29%)、訓練出動が10,068時間(57%)、その他の業務が2,433時間(14%)となっている(第2-7-4図)。
なお、大規模災害時には、昭和61年5月に定められた「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づき、都道府県域を越えた応援活動が展開されており、令和元年中は、9件の広域航空消防応援が実施された。また、緊急消防援助隊としての出動は57件となっている(第2-7-1表)。令和2年の出動実績については、特集1を参照されたい。

第2-7-1図 消防防災ヘリコプターの配備状況

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第2-7-1図 消防防災ヘリコプターの配備状況
消防庁ヘリコプター1号機「おおたか」(東京消防庁)
消防庁ヘリコプター1号機「おおたか」(東京消防庁)
消防庁ヘリコプター2号機「あたご」(京都市消防局)
消防庁ヘリコプター2号機「あたご」(京都市消防局)
消防庁ヘリコプター3号機「あらかわ4」(埼玉県)
消防庁ヘリコプター3号機「あらかわ4」(埼玉県)
消防庁ヘリコプター4号機「みやぎ」(宮城県)
消防庁ヘリコプター4号機「みやぎ」(宮城県)
消防庁ヘリコプター5号機「おとめ」(高知県)
消防庁ヘリコプター5号機「おとめ」(高知県)
※令和元年東日本台風(台風第19号)により被災し、現在復旧中

第2-7-2図 消防防災ヘリコプターによる災害出動状況(平成27~令和元年)

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第2-7-2図 消防防災ヘリコプターによる災害出動状況

第2-7-3図 消防防災ヘリコプターの災害出動件数の内訳(平成27~令和元年)

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第2-7-3図 消防防災ヘリコプターの災害出動件数の内訳

第2-7-4図 消防防災ヘリコプターの運航時間の内訳(令和元年)

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第2-7-4図 消防防災ヘリコプターの運航時間の内訳

(備考)
1 「その他の合同訓練」とは、管轄区域内の地上部隊等との連携訓練等をいう。
2 「自隊訓練」とは、操縦士の操縦訓練及び航空救助隊員を対象とした通信・救助訓練等をいう。
3 「広域応援訓練」とは、相互応援協定及び緊急消防援助隊等に基づく出動を想定した訓練をいう。
4 「その他の業務」とは、試験・検査のための飛行、調査・撮影業務及び行政業務等をいう。

第2-7-1表 緊急消防援助隊が出動した災害に係る航空小隊の出動件数及び救助・救急搬送人員数(平成27~令和元年)

出動件数(件)救助・救急搬送人員(人)

第2-7-1表 緊急消防援助隊が出動した災害に係る航空小隊の出動件数及び救助・救急搬送人員数

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