令和2年版 消防白書

2.PFOSを含有する泡消火薬剤の排出抑制について

泡消火設備は、駐車場や危険物施設等において用いられている消火設備である。しかしながら、一部の泡消火薬剤に用いられている有機フッ素化合物の一種であるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS*8)又はその塩が、難分解性、生物蓄積性、毒性及び長距離移動性を有する残留有機汚染物質から人の健康及び環境を保護することを目的とした残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約において、製造及び使用等を制限する物質として追加された。
これを受け、我が国においても、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律等が改正され、その製造、輸入等が原則として禁止されるとともに、業として泡消火薬剤等を取り扱う際には、厳格な管理や保管容器への表示等の義務が課されることとなった。
消防庁としては、関連省庁やメーカー団体等と連携し、上記法令の周知徹底を図るとともに、平成22年9月に泡消火設備の点検基準を見直し、PFOSを含有する泡消火薬剤を使用している場合においては、泡放射によらない方法により点検を実施することを認める等の排出抑制を推進するための対策を講じた。
また、令和元年5月には、一部の泡消火薬剤に用いられている有機フッ素化合物の一種であるペルフルオロオクタン酸(PFOA*8)又はその塩及びPFOA関連物質も、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約において製造及び使用等の廃絶に向けた取組を行う物質として追加することが決定されたことから、今後我が国においても、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律等において、条約の義務を担保するための措置がとられる予定である。
消防庁では、このような状況を踏まえ、駐車場等において設置を義務付けている特殊消火設備の技術基準や、泡消火設備の点検基準等について検討する等の対応を行っている。

*8 PFOS、PFOA:Perfluorooctane sulfonic acid・Perfluorooctane acidの略称である。ストックホルム条約において、難分解性、生物蓄積性、毒性及び長距離移動性を有する残留性有機汚染物質として、規制対象に指定された。

関連リンク

令和2年版 消防白書(PDF版)
令和2年版 消防白書(PDF版) 令和2年版 消防白書 (一式)  令和2年版 消防白書 (概要版)  はじめに  特集1 最近の大規模自然災害への対応及び消防防災体制の整備  特集2 新型コロナウイルス感染症対策  特集3 消防団を中核とした地域防...
はじめに
はじめに 昨年は、令和2年7月豪雨や台風による自然災害に見舞われ、多くの人的・物的被害が生じました。 また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、消防活動においても救急隊をはじめとして感染防止の徹底など様々な対応が求められました。 ...
1.令和2年7月豪雨による被害及び消防機関等の対応状況
特集1 最近の大規模自然災害への対応及び消防防災体制の整備 1.令和2年7月豪雨による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 ア 気象の状況 令和2年7月3日から31日にかけて、日本付近に停滞した前線の影響で、暖...
2.令和2年台風第10号による被害及び消防機関等の対応状況
2.令和2年台風第10号による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 ア 気象の状況 令和2年9月1日21時に小笠原近海で発生した台風第10号は、発達しながら日本の南を西北西に進み、5日から6日にかけて大型で非常に強い勢力で沖縄地方...