令和4年版 消防白書

4.消防大学校における教育訓練及び技術的援助

消防大学校は、消防職団員等に幹部として必要な高度な教育訓練を行うとともに、全国の消防学校の教育訓練に必要な技術的援助を行っている。

(1)教育訓練の実施状況

令和3年度は、年間に21学科と13実務講習を実施することとしていたが、新型コロナウイルス感染症の感染対策のため一部の実務講習を中止し、21学科で862人、12実務講習で402人が卒業した。
卒業生数は、創設以来、令和3年度までで延べ6万6,635人となった。
また、令和4年度は、令和3年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症等の感染対策として三密を回避するため定員を1,560人としていたが、令和4年7月に入校中の学生が新型コロナウイルス感染症の陽性と判定された事例が複数の学科で相次いで発生したことから、8月以降に実施する一部の学科の定員を削減し、1,524人とした(資料2-4-1)。

ア 社会情勢の変化に伴う教育訓練内容の充実

各課程の教育訓練内容(授業科目)については、各学科等の目的に応じて社会情勢の変化に伴う新しい課題に対応するための科目として、ハラスメント対策、メンタルヘルス、惨事ストレス対策、危機管理、広報及び訴訟対応を取り入れている。
また、情報システムを活用した火災時指揮シミュレーション、大規模地震の際の受援シミュレーションなどの訓練、実火災体験型訓練施設を活用し火災に近い環境下での消防活動訓練(ホットトレーニング)や土砂に埋もれた模擬家屋を活用した土砂災害対応訓練を実施するとともに、消防用ドローンに関する講義、蓄電池の構造や火災対応等に関する講義を設けるなど、カリキュラムの充実を図っている。
また、女性の研修機会拡大のため、各学科の定員の5%を女性消防吏員の優先枠としているほか、キャリア形成の支援等を目的とした実務講習である女性活躍推進コースを実施している。
教育手段として、一部の課程では、オンデマンド式のe-ラーニングによる事前学習、ライブ形式によるリモート授業を取り入れ、入寮期間を短縮するなど効率的な教育訓練を行っている。

イ 消防大学校における新型コロナウイルス感染症等の感染対策

一部学科は、リモート授業とe-ラーニングの活用により入寮期間及び接触機会の短縮を図っている。
また、入寮中は、教職員及び学生の検温・体調確認、マスク着用、消毒・換気等を徹底して行い、座学講義では講師と学生の距離の確保、衝立の活用等接触を減らす等の感染防止対策を講じている。
そのほか、令和4年7月に発生した入校中の学生の感染事例を踏まえ、さらなる感染対策として、一部の学科について、定員の削減や通学による入校も認めるなどして、学生寮の生活環境の管理を強化した上で、教育訓練体制を維持した。

(2)施設・設備

高度な教育訓練を行う施設として、様々な災害現場を模擬体験して指揮能力を向上させる災害対応訓練室、火災現場同様の環境変化を体験する実火災体験型訓練施設、木造密集など活動困難地域等を想定した街区形成集合住宅型ユニット等を設けている。
また、実践的な訓練を行うため、指揮隊車、消防ポンプ自動車、救助工作車、特殊災害車、高規格救急自動車等の訓練用車両も保有している。
寄宿舎には、女性専用スペース(浴室、トイレ、更衣室、談話室など)も用意している。

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実火災体験型訓練(ホットトレーニング)
実火災体験型訓練(ホットトレーニング)

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実火災体験型訓練(危険物火災)
実火災体験型訓練(危険物火災)

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多数傷病者対応訓練
多数傷病者対応訓練

(3)消防学校に対する技術的援助

消防学校に対しては、新任消防長・学校長科、新任教官科及び現任教官科において、教育技法の習得等教育指導者養成を行っているほか、消防学校の教育内容の充実のため、要請により消防大学校から講師の派遣を行い、令和3年度は、延べ132回の講師派遣を実施した。
また、消防学校において使用する初任者用教科書の編集や、専門分野の知識・技術が担保された講師等の確保のため、消防大学校卒業生名簿及び講師情報等を提供している。