令和4年版 消防白書

【コラム】救急安心センター事業(♯7119)の推進

救急安心センター事業(♯7119)の概要

救急安心センター事業(♯7119)(以下、本コラムにおいて「♯7119」という。)は、地域の限られた救急車を有効に活用し、緊急性の高い症状の傷病者にできるだけ早く救急車が到着できるようにすることに加え、住民が適時・適切なタイミングで医療機関を受診できるよう支援するため、消防と医療が連携し、救急医療相談と医療機関案内を短縮ダイヤル(♯7119)で行う電話相談事業である。
♯7119に寄せられた相談は、医師・看護師・相談員が対応し、病気やけがの症状を把握して、傷病の緊急性や救急車要請の要否の助言、応急手当の方法、適切な診療科目及び医療機関案内等を行っている。
令和4年8月1日現在、全国19地域(北海道札幌市周辺、宮城県、茨城県、埼玉県、東京都、神奈川県横浜市、新潟県、岐阜県岐阜市周辺、京都府、大阪府、兵庫県神戸市周辺、奈良県、和歌山県田辺市周辺、鳥取県、広島県広島市周辺、山口県、徳島県、高知県、福岡県)で事業が実施(人口カバー率47.5%)されている(第2-5-11図)。

第2-5-11図 救急安心センター事業(♯7119)の普及状況

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第2-5-11図 救急安心センター事業(♯7119)の普及状況

導入促進及び全国展開に向けた取組

消防庁では、都道府県が、管内消防本部の意向を踏まえつつ、衛生主管部局及び医療関係者等との合意形成を図るなど、♯7119の導入に向け積極的に取り組むことを促している。
平成29年5月には、「救急安心センター事業(♯7119)普及促進アドバイザー制度」を新設し、♯7119導入のノウハウなどの幅広いアドバイスや事業実施に向けた課題解決への助言を行う取組を開始し、令和4年10月末までに、延べ20地域に41人のアドバイザーの派遣を行った。
令和2年度には、♯7119の全国展開を目指し、有識者による検討部会を開催し、精力的に議論を行った結果、未実施団体が事業導入に対して抱える課題とその解決方策がまとめられ、「救急安心センター事業(♯7119)の全国展開に向けた取組について」(令和3年3月26日付け通知)を各都道府県へ発出した。
令和3年度には、各都道府県に対し「救急安心センター事業(♯7119)に関する「事業導入・運営の手引き/マニュアル」及び「事業を外部委託する際に活用可能な標準的な仕様書(例)」の策定について」(令和4年3月31日付け事務連絡)を発出し、特に、管内に♯7119の未実施地域を有する都道府県について、マニュアル等を活用し、早期の事業導入に向けて、積極的に取り組むよう周知した。
財政措置の在り方に関しては、令和2年度までは、市町村に対する普通交付税措置が講じられてきたが、令和3年度からは、特別交付税措置に変更した上で、♯7119に係る都道府県の役割の重要性に鑑み、新たに都道府県を対象に追加して、市町村とともに財政措置を講じることとしている。

事業の効果

従来から示してきた、①救急車の適正利用(適時・適切な利用)、②救急医療機関の受診の適正化、③休日深夜などの医療機関休診時の電話相談への対応による住民への安心・安全の提供、という効果のほか、④高齢化や過疎化の進展に伴う地域の救急搬送、救急医療体制の変化への対応などの時代の変化への的確な対応、⑤新型コロナウイルス感染症対策としての救急医療のひっ迫回避、という新たな観点からも効果が期待されている。令和3年度中の♯7119の相談件数は約145万件であり、令和2年度中の約132万件と比べて着実に増加している。

令和4年度の取組

令和4年の夏においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等に伴い、救急需要が増加し、一時的に119番通報がつながりにくくなった消防本部が散見されたことや、令和4年から5年にかけて懸念されている新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時流行への対策を講じる必要があることを踏まえ、「今後の新型コロナウイルス感染症の再拡大及び季節性インフルエンザとの同時流行等による救急需要の増大に備えた救急安心センター事業(♯7119)の全国展開に向けた取組について」(令和4年10月18日付け通知)を発出した。本通知では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等に伴い、救急需要が増大する中で、♯7119の効果や重要性が高まっていることから、管内に♯7119の未実施地域を有する道県については、道県全域での早期実施に向けた検討を速やかに着手するとともに、すでに♯7119を実施している都道府県については、より適切に対応できるよう、受付電話回線数や受付員・相談員の増強等の体制強化を検討するなど、各都道府県に対し、傷病者の救急搬送体制の充実に積極的に取り組むよう促した。
また、♯7119に対する住民の認知・理解を図り、利用を促進するため、消防庁ホームページ内に住民に向けた♯7119紹介ページを掲載し、積極的な広報を行うことで幅広い層への認知を図っている。