令和7年版 消防白書

3.「緊急消防援助隊の編成及び整備等に係る基本的な事項に関する計画」の改定

(1)基本計画の改定の経緯

緊急消防援助隊の編成等については、消防組織法第45条に基づき、総務大臣が定める「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」(平成16年2月策定。以下、本特集において「基本計画」という。)において、隊の規模や編成、車両の整備計画などを定め、概ね5年ごとに改定してきた。
令和7年3月、近年の実災害での教訓を踏まえるとともに、南海トラフ地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震など甚大な被害が想定される大規模災害に的確に対応できるよう、基本計画を改定した。

(2)基本計画の改定内容

ア 登録目標隊数の増強

南海トラフ地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震をはじめとした大規模災害に的確に対応できるよう、消火、救助及び救急の主要3小隊、後方支援小隊、航空小隊等の増隊に加え、機能強化に向けた部隊を創設(後述イ)し、登録目標隊数を7,200隊(令和7年4月1日現在6,731隊登録)とする(特集3-1表)。

特集3-1表 基本計画の改定と登録目標隊数

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特集3-1表 基本計画の改定と登録目標隊数


イ 機能強化に向けた部隊の創設

次の(ア)~(ウ)のとおり、情報統括支援隊、安全管理部隊及び救急特別編成部隊を新たに創設し、DXの推進、隊員の安全管理等にも対応できる緊急消防援助隊の充実・強化を図る(特集3-1図)。

特集3-1図 基本計画改定後の基本的な部隊編成

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特集3-1図 基本計画改定後の基本的な部隊編成


(ア)情報統括支援隊
緊急消防援助隊の出動時には、刻々と変わる状況に応じ、情報収集、情報整理、方針の決定・共有を繰り返していくこととなる。これまで、これらの情報収集等は、消防救急デジタル無線などによる音声等を用いて行うことが基本となっていたが、被害等の情報が過多となった場合でもデジタルツールを活用して、情報を効率的に収集、整理等することが必要になるため、情報統括支援隊を創設した。
情報統括支援隊は、無線等のアナログ手法に加え、タブレット端末、スマートフォンなどのデジタルツールを活用し、リアルタイムで災害映像、災害情報を収集し、情報の整理・分析・共有を行うことを主任務とし、統括指揮支援隊による増隊判断や部隊配置判断などを補佐する。このため、全国で約10隊を目安に情報統括支援隊を登録することとし、各隊には情報の効率的な整理・共有に資するデジタル作戦卓及び車両を配備する。

(イ)安全管理部隊
緊急消防援助隊が出動する大規模災害は、通常とは異なる災害態様であることから、隊員が十分に予知することが困難な危険性が内在しており、受傷や殉職を防ぐため安全管理を徹底する必要がある。また、長期間にわたり慣れない土地での活動であることから、隊員の体調管理や労務管理も一層重要となる。
このため、緊急消防援助隊における安全管理体制を強化する観点から、安全管理部隊を創設し、各都道府県に1隊を目安に、安全管理部隊指揮隊(全国で約50隊)を登録することとしている。
安全管理部隊は、俯瞰的に活動現場を監視し、二次災害の防止を図るとともに、隊員の活動時間の管理による疲労管理などの安全管理を主任務とする。さらに、専門的な知見を有する関係機関等からの情報を得て、都道府県大隊指揮隊への助言や危険情報の伝達を行うなど、安全管理体制の一層の強化を図る。

(ウ)救急特別編成部隊
緊急消防援助隊の出動期間中、大規模災害による多数の傷病者や病院の機能亡失に伴う入院患者等の転院搬送が多数発生した場合、そこで活動する都道府県大隊では救急隊が不足する可能性があるが、部隊の追加派遣には時間を要する場合がある。
このように、一時的に救急部隊の増隊が必要となる場合に、指揮命令系統を明確化した上で、複数の都道府県大隊の救急中隊を一体として運用できるよう、救急特別編成部隊を創設し、各都道府県に1隊を目安に、救急特別編成部隊統括救急隊(全国で約50隊)を登録することとしている。(特集3-2図)

特集3-2図 救急特別編成部隊の基本的な部隊編成

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特集3-2図 救急特別編成部隊の基本的な部隊編成


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安全管理部隊の活動が必要な場所 安全管理部隊の活動が必要な場所

安全管理部隊の活動が必要な場所

 

ウ 令和6年能登半島地震等の教訓を踏まえた部隊運用の強化

(ア)能登半島地震を踏まえた運用改善
能登半島地震では、大型車両の陸路進出が難しく、自衛隊等と連携して空路や海路から進出した。これを受け、迅速かつ的確な活動のために空路や海路での進出が必要である場合には、車両以外の手段による進出を行うこととしたほか、大型車両のみの編成とするのではなく、災害の様態に応じて小型車両も含めた適切な車両を選定・編成することとした。
また、緊急消防援助隊地域ブロック合同訓練等をはじめ、平時から関係機関連携に努めることを明記した。

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自衛隊輸送機による部隊輸送の様子(令和6年能登半島地震)

自衛隊輸送機による部隊輸送の様子(令和6年能登半島地震)

(イ)消防庁長官の「出動の指示」の考慮事項の見直し
令和3年の災害対策基本法の改正により、国の防災体制の強化の観点から、防災担当大臣を本部長とする「特定災害対策本部」の設置に関する制度が設けられた。これを踏まえ、消防庁長官による出動指示とする場合の考慮事項に、特定災害対策本部の設置状況を追加した。

(ウ)大型で猛烈な台風、線状降水帯等の際の出動準備都道府県の柔軟な対応
基本計画では緊急消防援助隊の出動計画として、第一次出動都道府県大隊及び出動準備都道府県大隊が定められている。しかし、台風の進路となることが予測される都道府県大隊などが緊急消防援助隊としての出動又は出動準備が困難である場合に、当該都道府県以外の都道府県に対し、出動又は出動準備をさせることができるよう規定した。

(エ)一の都道府県大隊を複数被災市町村へ派遣する運用
一の都道府県大隊は原則として、一の被災市町村に応援に入り活動する。しかしながら、多くの被災市町村への対応が必要になった場合や、災害状況の変化により新たな応援先が生じた場合などには、他の都道府県大隊の出動では活動開始までに多くの時間を要してしまう。このような場合に、迅速かつ効率的な対応をするため、活動中の都道府県大隊を一時的に分割して柔軟に活動させることがあり得ることを明確にした。

(3)訓練を通じた緊急消防援助隊の充実強化

車両・資機材の充実を含む体制整備等の運用面への定着、緊急消防援助隊の技術及び連携活動能力の向上、関係機関との連携強化や被災都道府県等の受援体制の強化などを一層推し進めるため、基本計画に基づき、平成8年度から全国6ブロックにおいて、地域ブロック合同訓練を毎年実施している。また、令和4年に静岡県で開催した第6回全国合同訓練に続き、第7回の全国合同訓練を令和8年度に北海道及び宮城県で実施することとする。実施内容は、令和7年3月に策定した「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震アクションプラン」の実効性の検証を目的に「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震」を想定災害として、今後消防庁において、開催地道県等と共同で検討を進めていく。

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第6回緊急消防援助隊全国合同訓練の様子 第6回緊急消防援助隊全国合同訓練の様子 第6回緊急消防援助隊全国合同訓練の様子

第6回緊急消防援助隊全国合同訓練の様子