3.増大する救急需要への対応
救急需要が増大する中、救急業務を安定的かつ持続的に提供することは、近年の大きな課題となっている。そのため、消防庁では、救急安心センター事業(♯7119)(以下、本特集において「♯7119」という。)の更なる展開拡大や利用促進、転院搬送における救急車の適正利用の推進、日勤救急隊の導入促進、救急業務のDX推進等に取り組んでいる。
(1)♯7119の推進
ア ♯7119の概要
♯7119は、住民が急な病気やケガをしたときに、「救急車を呼んだほうがいいのか」、「今すぐ病院に行ったほうがいいのか」など判断に迷った際の相談窓口として、医師・看護師・救急救命士から電話でアドバイスを受けることができる仕組みであり、住民に安心・安全を提供するとともに、年々救急需要が増大する中において、救急自動車や医療機関など地域の限られた資源を有効に活用することを目的とした事業である。
住民から受けた相談内容をもとに、応急手当の方法についての助言や適切な受診医療機関の案内を行うほか、緊急性が高いと判断した場合は、119番通報への転送やかけ直しを要請する等、相談者の状況に応じた対応を行っている。
特集4-4図 救急安心センター事業(♯7119)の普及状況
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令和7年度末(予定を含む。)、以下の41地域で実施されている(特集4-4図)。
○ 都府県内全域:37地域
青森県、岩手県、宮城県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都*1、神奈川県、新潟県、富山県、石川県*2、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、鳥取県、広島県*3、山口県*4、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、長崎県、熊本県、大分県、沖縄県*5
○ 道県内一部:4地域
札幌市周辺*6、名古屋市、田辺市周辺*7、岡山市周辺*8
イ 事業の効果
♯7119は、①救急車の適時・適切な利用(軽症者割合の減少、不急の救急出動の抑制、潜在的な重症者の発見・救護)、②救急医療機関の受診の適正化(医療機関における救急医療相談数の抑制等)、③住民への安心・安全の提供(利用者アンケートでは約9割から肯定的評価)、④新興感染症の発生による救急需要急増時の受け皿の一つとしての役割などについて効果があることが確認された。
ウ これまでの取組
消防庁では、♯7119の更なる展開拡大に向け、以下の取組を行ってきた。
♯7119を推進するための具体的な方策に関する助言、研修支援等を行う「♯7119普及促進アドバイザー」を、令和7年10月までに、延べ32地域に対して、59人派遣した。
また「令和6年度救急業務のあり方に関する検討会(以下、本特集において「令和6年度検討会」という。)の報告を踏まえ、「救急安心センター事業(♯7119)の全国展開に向けた取組等について(通知)」(令和7年6月18日付け通知)を発出し、♯7119を実施している都府県に対しては、消防庁作成の高齢者や介護施設等への認知度向上を目的としたデザインの広報物の活用や♯7119と患者等搬送事業(者)との積極的な連携を依頼し、また、管内に♯7119の未実施地域を有する道県に対しては、外部委託方式も含めた円滑な事業導入や効果的な事業の運営、底上げ等に向けて参考になるよう作成した「事業導入・運営の手引き」及び「事業を外部委託する際に活用可能な標準的な仕様書(例)」の改訂版を参照の上、
♯7119の早期実施に向けた検討に着手するよう依頼した。
なお、♯7119の実施に要する経費については、都道府県又は市町村の財政負担に対して特別交付税措置(措置率0.5)が講じられている。
エ 今後の取組方針
高齢化の進展、熱中症患者の増加、感染症の流行等により、今後も救急需要の増大及び多様化が懸念される中、不急の救急出動の抑制や、救急医療機関の受診の適正化につながるなど、♯7119の重要性はますます高まっている。管内に♯7119の未実施地域を有する道県に対しては、地域ごとの課題や状況を把握しながら、各地域の実情に即して導入が進められるよう、♯7119の更なる展開拡大に向けた取組を進めていくこととしている。
(2)転院搬送における救急車の適正利用の推進
消防機関の実施する転院搬送(傷病者を一の医療機関から他の医療機関へ搬送する事案)については、全救急出動件数の1割弱を占めるため全体の救急搬送件数に与える影響が大きく、救急車の適正利用が特に求められている。消防庁と厚生労働省は、救急業務として転院搬送を行う場合のルールについて合意形成を行う際の参照事項(以下、本特集において「転院搬送ガイドライン」という。)を示した「転院搬送における救急車の適正利用の推進について」(平成28年3月31日付け通知。以下、本特集において「平成28年通知」という。)を発出し、各地域において、転院搬送ガイドラインを参考にしつつ、地域の実情に応じ、救急業務として転院搬送を行う場合のルール化に向けた合意形成のための取組を行うよう、促進してきた。
しかしながら、全国単位では、転院搬送出動件数は増加傾向(特集4-5図)であり、令和6年度検討会において、転院搬送における病院救急車や患者等搬送事業者の活用について検討が行われた。
特集4-5図 転院搬送の救急出動件数の推移
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消防庁及び厚生労働省は、令和6年度検討会の報告を踏まえ、平成28年通知を改訂し、令和6年度に新設された診療報酬上の評価(救急患者連携搬送料)の活用や消防機関で使用を終えた救急車の病院救急車としての使用を通じ、転院搬送における病院救急車の活用を更に進めること、また、地域の患者等搬送事業者に関する情報を関係者間で共有して地域の実情に応じて活用を図ること等を追加した「転院搬送における救急車の適正利用の推進について」(令和7年6月30日付け通知。以下、本特集において「令和7年通知」という。)を発出した。
各地域においては、令和7年通知を参考に、地域の実情に応じ、救急業務として転院搬送を行う場合のルール化に向けた取組を積極的に行うこととし、転院搬送における救急車の適正利用を推進している。
(3)日勤救急隊の導入促進
令和5年中の救急要請が入電した時刻別の搬送人員をみると、特に、日中の時間帯が相対的に多い状況(特集4-6図)であった。消防庁では従来から「救急隊員の適正な労務管理の推進について(通知)」(平成30年3月30日付け通知)により、救急需要の多い時間帯に増隊する取組を示しているところ、令和6年8月1日の調査では、720消防本部のうち95消防本部において、救急隊の労務管理として、いわゆる日勤救急隊が導入されていた。
特集4-6図 救急要請が入電した時刻別の搬送人員
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(令和5年 単位:人)
こうした中、消防庁では、令和6年度検討会の報告を踏まえ、「日勤救急隊の導入検討について(通知)」(令和7年6月5日付け通知)を発出し、日勤救急隊を導入した消防本部の事例を紹介し、日勤救急隊を増隊することにより救急隊1隊当たりの活動時間の平準化や救急隊員の多様な働き方に資すると考えられると同時に、日中等に需要が多い地域へ配置することで増大する救急需要への対策の強化となると考えられるため、地域の実情に応じ、日勤救急隊の導入を検討するよう通知した。
(4)救急業務のDX推進
令和6年中の救急出動件数と搬送人員は過去最多を更新したほか、令和6年と新型コロナ禍以前の令和元年を比較すると、病院収容所要時間は延伸しており、救急需要増大に伴い、救急隊員の業務負担が増加している。救急業務におけるデジタル技術の導入は救急隊員の業務負担軽減に資するものであることから、消防本部におけるDX推進を図ることを目的として、令和7年3月31日に「救急業務のDX推進に係る消防本部担当者向け技術カタログ(以下、本特集において「技術カタログ」という。)」を作成した。
技術カタログでは、一連の救急活動を4つのフェーズに分け、労務負担軽減等が期待される13の機能を有するものを対象として、事業者に公募した上で、40のシステムを掲載している(特集4-7図)。
特集4-7図 救急業務のDX推進に係る消防本部担当者向け技術カタログ
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今後も、救急業務の効率化・円滑化に資する新たな技術の公募を行って、技術カタログを更新すること等により、引き続き、消防本部における救急業務のDX推進を図ることとしている。
*1 島しょ部を除く
*2 令和8年2月導入予定
*3 庄原市及び大崎上島町を除く。岡山県井原市・岡山県笠岡市・山口県岩国市・山口県和木町は広島県がカバー
*4 萩市・阿武町を除く
*5 与那国町・北大東村を除く
*6 札幌市・石狩市・北広島市・栗山町・島牧村・新篠津村・当別町・南幌町・恵庭市・長沼町
*7 田辺市・上富田町・美浜町・日高町・由良町・印南町・みなべ町・日高川町
*8 岡山市・津山市・瀬戸内市・真庭市・久米南町・美咲町・吉備中央町




