令和7年版 消防白書

2.マイナ救急の全国展開

(1)マイナ救急の概要

マイナ救急とは、救急隊員が傷病者の健康保険証として利用登録されたマイナンバーカード(以下、本特集において「マイナ保険証」という。)を活用し、病院選定等に資する傷病者の情報を把握する取組のことである(特集4-2図)。
現状の救急活動における傷病者の情報聴取は、主に口頭にて行われており、医療機関選定に必要な既往歴や受診した医療機関名などの情報を、症状に苦しむ傷病者本人から聴取せざるを得ないことも多い。また、傷病者本人が既往歴や受診した医療機関名等を失念していることや、家族等の関係者が傷病者の情報を把握していないこともあり、救急隊が傷病者の医療情報等を正確かつ早期に把握するに当たり、課題となっている。
こうした課題を踏まえ、消防庁では、救急業務の円滑化を図るため、令和4年度に救急業務のあり方に関する検討会の下にマイナ救急に関するワーキンググループを設置し検討を開始した。

特集4-2図 マイナ救急事業イメージ図

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特集4-2図 マイナ救急事業イメージ図


(2)これまでの取組

令和4年度は6消防本部、30隊の参画を得て実証実験を行った。実証実験の結果、特に高齢者、聴覚等の障がいがある人などの情報提供に困難を伴う傷病者への対応において、傷病者の負担軽減、正確な情報の取得、傷病者の病態把握などの観点から、一定の効果が確認できた。
令和5年度は、マイナ救急のシステム構築に係る課題等の解決に向けた検討を行い、救急隊が救急現場で効果的にマイナ救急を活用することができるよう「救急隊員が傷病者の医療情報等を閲覧する仕組みの骨子」を作成し、システムの具体的な要件や運用方針等について整理した。
令和6年度は、運用面の課題を改善したうえで、67消防本部、660隊による実証事業を行ったほか、令和5年度に整理した骨子に基づき、救急現場での操作性に優れた救急隊専用のシステム(以下、本特集において「マイナ救急システム」という。)の構築を行った。

(3)実証事業の効果

マイナ救急の効果として、救急隊にとっては、より適切な処置や円滑な搬送先の選定ができ、傷病者にとっては、症状が重い等のため、救急隊に既往歴等を口頭で情報提供することが困難な場合に負担が軽減され、医療機関にとっては、傷病者に関する情報を把握することで治療の事前準備ができることを想定しており、これらの効果の検証や活用事例の収集を行うため、令和6年度に実証事業を行った。67消防本部、660隊の参画を得て、マイナ救急を実施した件数は2か月間で1万1,398件であった。
その中には、「傷病者への救急救命処置と並行して、マイナ救急で既往歴や薬剤情報等を確認できたため、これらの情報を搬送先医療機関に伝えることで、早期に緊急手術を行うことができ、一命を取り留めることができた」事例や「外出先の事故でお薬手帳を所持していなかったが、薬剤情報が分かった」事例等があった。
また、マイナ救急を活用した救急隊員からは「意識障害で、情報把握が困難だったが、マイナ救急で既往歴が分かったので、適切な処置ができた」、傷病者からは「マイナ保険証で、緊急時に役立つ情報が得られるのは良い取組」、「意識がなくなる可能性もあったので、持病が伝えられて助かった」、医師からは「診療に重きを置くことができた」、「飲んでいる薬が事前に分かったので緊急手術の事前準備ができた」という声があった。
こうした活用事例や声から、マイナ救急は救急隊、傷病者及び医療機関の全てにとって有用性の高い取組であることを確認した。

(4)令和7年度の取組

令和7年度は、マイナ救急システムを活用した全国的な実証事業を進めており、令和7年4月から令和6年度の実証事業に参加した67消防本部、660隊の救急隊が実証を開始した。その後、令和7年10月1日から全国全ての720消防本部、5,334隊の救急隊(常時運用救急隊の98%)に拡充し、一斉に実証を開始しており、効率的な運用方法を検討することとしている。
また、マイナ救急の全国展開にあたり、救急業務実施基準(昭和39年自消甲教発第6号)を改正し、救急自動車に備えるよう努める資器材の一つである情報通信端末の機能の例示として、「マイナンバーカード等を活用した救急時医療情報の閲覧」を加えることとした(令和8年4月1日施行)。
さらに「令和7年度救急業務のあり方に関する検討会」及びその下に設置されたワーキンググループにおいて、有識者や消防本部の意見を伺いながら、マイナ救急の課題や効果の検証、マイナ救急システムの機能拡充等について検討を進めている。
広報面では、マイナ救急を実施するためには傷病者のマイナ保険証が必要となることから、マイナ救急の認知度向上を図るため、令和7年2月に作成したショートムービーや広報ポスターを全ての消防本部に提供するとともに、広報誌や大阪・関西万博でのイベント開催を通じて広報活動を展開した。また、9月9日の「救急の日」にあわせて、マイナ救急の説明や有用性、救急隊員や医師によるインタビュー等を盛り込んだドラマ仕立ての動画を新たに作成して周知を行ったほか、政府広報によるテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネット、SNSなどの多様なメディアを活用した広報を実施した(特集4-3図)。今後も、各消防本部と連携した広報活動を展開することとしている。

特集4-3図 認知度向上に向けた広報

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特集4-3図 認知度向上に向けた広報

(5)今後の取組方針

「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月13日閣議決定)や「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和7年6月13日閣議決定)等に基づき、全国どの救急車でもマイナ救急が実施できる環境整備を引き続き推進することとしている。
また、厚生労働省では、今後も救急搬送件数の増加が見込まれる中、搬送調整の円滑化や傷病者の病態に応じた適切な医療機関への搬送の実現に向け、新しい地方経済・生活環境創生交付金デジタル実装型TYPESを活用し、令和7年度中に傷病者情報を複数の医療機関と迅速かつ安全に共有でき、応需状況のタイムリーな把握も可能なプラットフォームの構築を進めている。
消防庁としても、厚生労働省と連携し、当該プラットフォームとマイナ救急との連携等の実現に向けて課題の整理等を行う。