2.研究開発・実用化の状況
(1)消防研究センターにおける研究開発等
消防研究センターは、国内唯一の消防に関する総合的研究機関であり、現場の消防職団員の活動を科学技術の面から支えて、社会の安心と安全の要請に応える研究開発を実施している。
最近の主な研究開発課題は以下のとおり。
ア 林野火災対応に活用可能な延焼シミュレーション
大船渡市林野火災では、延焼拡大が急激で、また、被害が広範囲に及んだため、火災の状況の早期把握が困難であった。また、刻々と変化する火災の全容把握が難しく、特に飛び火や風向きの変化による林野と市街地にまたがる延焼拡大の対応に苦慮した。
こうした課題を踏まえ、消防研究センターでは、林野火災延焼シミュレーションと市街地火災延焼シミュレーションを連携させた新たな延焼シミュレーション技術の研究開発を進めている(特集7-2図)。このシミュレーションは、高い精度で林野火災の延焼拡大状況を予測し、林野と市街地にまたがる延焼拡大や、飛び火の飛散範囲などについて評価できるものを目指している。このシミュレーションを活用することで、林野火災における安全で効率的な消防活動、訓練、警防計画の策定に寄与することが期待される。
特集7-2図 林野火災対応に活用可能な延焼シミュレーションのイメージ
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イ AIを活用した救急隊運用最適化
令和6年中の救急自動車による現場到着所要時間(119番通報を受けてから現場に到着するまでに要した時間)の平均、病院収容所要時間(119番通報を受けてから医師に引き継ぐまでに要した時間)の平均は、ともに延伸傾向にある。
こうした課題を踏まえ、消防研究センターでは、現場到着所要時間を短縮するため、AIを活用した救急隊運用最適化に関する研究開発を進めている(特集7-3図)。令和7年には、12消防本部が導入に向けた検討を行っており、このうち北九州市消防局、奈良県広域消防組合消防本部、京都市消防局及び藤沢市消防局の4消防本部においては実証研究が行われている。今後は、更なる予測精度の向上、高度化を目指し、特定の時期や時間帯において突発的に救急需要が増加する要因(インフルエンザや熱中症など)に関するデータを組み込む研究開発を進めていく。
特集7-3図 AIを活用した救急隊運用最適化手法
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ウ ドローン等を活用した現場対応型情報収集システム
災害現場においては、早期に被害状況を把握し、現場活動の方針を迅速に決定することが求められる。その手段として、ドローンによる映像撮影は有効であるが、撮影映像と地図情報の連携に時間を要する場合や、災害現場における通信環境の確保が困難な場合などがある。
こうした課題を踏まえ、消防研究センターでは、ドローンが撮影した災害現場の画像を即時に地図上に反映し、活用できるシステムの研究開発を進めている(特集7-4図、特集7-5図)。令和3年7月3日に静岡県熱海市において発生した土石流災害では、消防研究センターが開発したドローンシステムを用いて現場状況の地図を作成し、現地指揮本部において活用した。その後も更なる改良に取り組んでおり、令和6年度には開発中のシステムの信頼性を確認するための精度検証や、レーザー測定装置を搭載したドローンを用い、夜間でも地表の形状を詳細に把握可能なシステムの開発などを行った。これらのシステム開発に当たっては、実際の災害現場での運用を想定し、インターネット等の外部通信に依存しないこと、必要な資機材を軽量・コンパクト化し車両一台で運用可能であること、省人化及び操作性を簡便化することに留意している。
特集7-4図 ドローンの飛行中に画像合成を行っている様子
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特集7-5図 ドローン撮影により作成した土石流発生現場の画像
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(2)消防防災科学技術研究推進制度を活用した研究開発の推進
「消防防災科学技術研究推進制度」(競争的研究費)では、広く研究開発課題を募り、提案された課題の中から、政府方針や消防防災行政における重要施策等を踏まえた上で学識経験者等からなる「消防防災科学技術研究推進評価会」の審議結果に基づき、採択する研究開発課題を決定している。
この度「第1次国土強靱化実施中期計画」(令和7年6月6日閣議決定)において「消防分野におけるDX・新技術の活用に関する対策」が「推進が特に必要となる施策」の一つに位置付けられたほか「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月13日閣議決定)においては「消防・防災DX、防災科学技術の開発・導入等を進める」ことが記載された。
このことを踏まえ、消防防災科学技術研究推進制度(競争的研究費)においては、令和7年度から、従来実施してきた消防防災行政に係る継続的な課題解決のための研究開発に加え、近年発生した災害等を踏まえた研究開発や新技術の実用化に向けた研究開発を推進している。
令和7年度の主な研究開発課題は以下のとおり。
ア 近年発生した災害等における課題を踏まえた研究開発
(ア)令和7年大船渡市林野火災を踏まえたテーマ
令和7年2月26日に大船渡市において発生した林野火災を踏まえ、令和7年度は、林野火災に活用できる技術の研究開発を緊急枠として募集し、2件実施している(特集7-6図)。
特集7-6図 大船渡市林野火災を踏まえた研究開発の一例
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(イ)令和6年能登半島地震を踏まえたテーマ
令和6年能登半島地震に伴う輪島市大規模火災では、津波警報発表下における浸水想定区域内での消防活動が課題となった。このため、地震や津波発生時の大規模な火災現場など、消防隊員の進入が困難な区域において、消防隊員の安全を確保した上で消火活動を継続するための研究開発を4件実施している(特集7-7図)。
特集7-7図 令和6年能登半島地震を踏まえた研究開発の一例
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イ DX・新技術の導入に向けた研究開発
消防防災の現場に既に導入済み又は導入予定のDX・新技術に係る現場運用について検証し、必要となる機器の改良や消防機関等における実運用に必要なマニュアル等を作成するための研究開発を3件実施している(特集7-8図)。
特集7-8図 DX・新技術の導入に向けた研究開発の一例
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ウ その他
消防防災行政に係る継続的な課題解決のための研究開発を13件実施している。
(3)消防分野における最新技術活用検証事業
近年のデジタル技術の進展から、社会の様々な分野において、DX・新技術の活用が進んでいる。
スタートアップ企業などが開発した最新技術の中には、消防活動に活用できる可能性があるものが登場してきていると考えられるが、このような最新技術について、企業等と消防機関が意見交換を行い、共同で有効性を検証する機会がないことが課題となっている。
そのため、令和7年度から新たな取組として内閣府事前防災対策総合推進費※1を活用し、スタートアップ企業などの最新技術と消防機関の現場ニーズをマッチングし、共同で活用検証等を行うことで、消防分野のみならず国全体への技術導入に係る具体的な手法を検討する事業を行っている(特集7-9図)。
特集7-9図 消防分野における最新技術活用検証事業の流れ
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※1 今後の防災庁の設置を見据え、内閣府防災担当の災害対応の司令塔機能を強化する観点から、各省庁等が実施する事前防災対策事業に対して支援する予算








