令和7年版 消防白書

3.その他DX・新技術の活用の推進

(1)消防業務システムの標準化・クラウド化

ア 背景

多くの消防本部では、警防や予防、水利、要援護者情報といった様々なデータの管理や消防本部の業務に必要な各種機能を提供する「消防業務システム」が整備されており、このシステムにより消防職員の日常業務が支えられているが、当該システムは一般的にオンプレミス環境※2で整備されている。このことにより、各消防本部におけるシステム導入・刷新時の費用や職員の業務負担が大きくなることや、制度改正等に応じて必要な時に必要なツール・機能を柔軟に導入することが難しくなること等の課題がある。

イ 現在の取組

こうした背景を踏まえ、消防庁では「消防指令システムの高度化等に向けた検討会」を開催し、消防本部のシステムの更なる効率化・高度化に向け、消防業務システムにおけるクラウド活用等について検討した。
上記検討の結果を踏まえ、令和6年10月に消防業務システムの機能や消防業務で用いる主な書類等の要件、クラウド上のシステムの調達の流れ、ネットワークの選定ポイント等を消防業務システムの標準仕様書等として策定・公表した。また、令和7年3月には、これまでの検討内容及び検討結果を「消防指令システムの高度化等に向けた検討会最終とりまとめ」として策定・公表した(特集7-10図)。

特集7-10図 消防業務システムの標準化・クラウド化のイメージ

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特集7-10図 消防業務システムの標準化・クラウド化のイメージ

 

ウ 期待される効果

標準化により、各消防本部は標準仕様に準拠したシステムをカスタマイズせずに利用することが可能となるため、消防本部職員のシステム導入・刷新時の業務負担の軽減が期待される。
また、クラウド化(SaaS型※3)により、各消防本部は民間事業者がクラウド上に構築した業務システムを共同利用できるようになるため、サーバーやソフトウェア等を個別に構築する必要がなくなり、システム整備に係る初期コストが軽減される。さらに、制度改正等が行われシステム改修が必要となった際には、民間事業者がクラウド上のシステムを改修することにより対応が可能となるため、各消防本部における個別対応の負担が軽減される。加えて、業務の状況や利用本部のニーズに応じたツール・機能を必要な時にクラウド上のサービスから選択して利用できるようになる。

エ 今後の取組方針

今後は、標準仕様の普及がより一層進むよう、各消防本部やシステム事業者へのヒアリングの実施による標準仕様書に準拠したシステムの導入事例の収集や、標準仕様書等を利用する関係者(消防本部、システム事業者等)の意見を踏まえた標準仕様等の適宜の見直し等を実施する。

(2)火災予防分野における技術カタログ

ア 背景

消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の3の規定による消防用設備等の点検、同法第8条の2の2の規定による防火対象物の点検及び同法第36条第1項において準用する同法第8条の2の2の規定による防災管理対象物の点検(以下、本特集において「各種点検」という。)については、「規制改革実施計画」(令和4年6月7日閣議決定)において、デジタル原則に照らして、可能なものから順次、アナログ規制の点検・見直しを措置することとされた。

イ 現在の取組

消防庁では、令和5年度から、各種点検に係る新たな技術を取り入れるため、当該技術について公募し、学識経験者等で構成された「火災予防分野における点検技術評価会議」において有効性が認められた技術を「火災予防分野における技術カタログ」(以下、本特集において「技術カタログ」という。)としてとりまとめている(特集7-11図)。

特集7-11図 技術カタログ掲載までの流れ(イメージ)

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特集7-11図 技術カタログ掲載までの流れ(イメージ)

 

ウ 期待される効果

技術カタログに掲載した技術は、所定の使用方法や適用条件に適合する場合には、従来の点検方法に代えることができるものである。
技術カタログの活用により、従来の点検方法に代えて新たな点検技術を柔軟に取り入れられるようになるとともに、各種点検の効率化や省人化につながることが期待される。

エ 今後の取組方針

技術カタログについては、新たな点検技術の開発等に応じ、適宜改定していくこととしている。

(3)消防団活動におけるデジタル技術の活用促進

ア 背景

近年、災害が激甚化・頻発化する中、消防団活動においては火災のみならず、様々な災害への対応能力の向上が不可欠であるが、消防団員数が減少傾向にある中で、消防団員一人ひとりの負担は増加しつつある。こうした中、消防庁では、消防団員の活動環境の向上、災害対応時の安全確保などを図るため、消防団DXを推進していくこととしている。
消防団の地域密着性という特性を踏まえ、情報収集能力の向上が求められており、災害時等にいち早く安全に現場の状況を把握するために、消防団におけるドローンの配備や消防団員のドローン操縦技術の習得、消防団員の出動連絡や被災状況の迅速な情報共有を可能とするアプリケーション(以下、本特集において「消防団アプリ」という。)の導入などを促進することが必要である。

イ 現在の取組

消防庁では、消防団へのドローンを含む救助用資機材等の整備を促進するため、消防団設備整備費補助金により支援を行っているが、同補助金の対象に令和7年度からドローンと一体的に整備する「タブレット端末」を追加し、消防団の災害対応能力の高度化を図っている。
また、消防団員がドローンの操縦技術を習得し、実際の消防団活動においてドローンを活用できるよう、令和5年度から、消防学校に講師を派遣し、消防団員に対するドローンの操縦講習及びドローンから伝達された映像情報を基にした災害対応講習を実施している。令和6年度は16県で約400人の消防団員が講習を受講した。
加えて、社会環境の変化に対応した消防団運営の普及促進のため、地方公共団体の先進的な取組を支援する「消防団の力向上モデル事業」においても、ドローンの操縦技術を習得する取組や消防団アプリの導入など、デジタル技術を活用した地方公共団体の取組を支援している。なお、令和6年度は12団体が本事業を活用してドローン操縦講習等を実施した(特集7-12図)。令和7年度も、消防団DXの推進に関する地方公共団体の先進的な取組を支援している。

特集7-12図 ドローンを用いた災害対応講習の様子

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特集7-12図 ドローンを用いた災害対応講習の様子

 

ウ 期待される効果

消防団活動においてドローンを活用することで、広範囲にわたる火災や土砂災害、遭難者の捜索等の際に、消防団員の安全を確保しながら、上空から被害状況等を早期に把握し、当該状況を踏まえて的確に消火・救助等の活動を行うことが可能となる。
さらに、ドローンの配備だけでなく、操縦技術の習得や映像情報を基にした災害対応の講習も併せて実施することで、消防団活動を安全かつ円滑に進め、災害対応能力の向上を図ることが期待される。
なお、消防団におけるドローンの活用は、若年層の消防団に対する関心を醸成し、入団促進につながることから、団員確保にも資すると考えられる。
また、消防団アプリを活用することで、出動状況の迅速な把握など消防団活動の効率化にもつながる。

エ 今後の取組方針

災害時という非常時においてドローンを安全に飛行させるためには、消防団員がドローンを正確に操縦できる技術を習得することが不可欠である。このため、引き続き、消防学校等においてドローンの操縦講習を実施していく。
また、「消防団の力向上モデル事業」を活用したドローン操縦講習や消防団アプリの導入等のモデル事例を全国に横展開することで、更なる消防団DXの推進を図ることとしている。

(4)DXアドバイザーの派遣

ア 背景

政府は令和2年に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた改革の方針」において、デジタル社会の目指すビジョンとして、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を掲げ、このような社会を目指すことにより「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を進めることにつながるとしている。
消防分野については「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月13日閣議決定)において「デジタル等新技術の活用による国土強靱化施策の高度化のため(略)消防・防災DX、防災科学技術の開発・導入等を進める」こととされ、「国土強靱化基本計画」(令和5年7月28日閣議決定)においても「デジタルが持つ、地域社会の生産性や利便性を飛躍的に高め、産業や生活の質を大きく向上させる力を最大限活用し、我が国・地域が直面する災害への対応力を強化する(略)」こととされており、消防分野におけるDXの更なる推進が求められているところである。
デジタル技術の活用は、消防活動の効率化・高度化や、災害現場等の安全管理に効果的であるとともに、諸手続を行う事業者等の利便性の向上に資するものであり、これまでも消防庁・各消防本部においてDXの取組を推進してきたが、今後も、規模の大小にかかわらず全国の消防本部において取組を進めていくことが重要である。

イ 現在の取組

こうした状況を踏まえ、総務省と地方公共団体金融機構が共同で実施している「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」を活用し、消防分野のDXに知見を有する人材をアドバイザーとして登録するとともに、消防DXに取り組む消防本部等にアドバイザーを派遣する支援を令和6年10月から実施している。
アドバイザー派遣を希望する消防本部は、それぞれが抱えるDXに関する課題と登録アドバイザーの取組分野を勘案し、派遣を希望する旨を直接アドバイザーへ打診することとしており、令和6年度以降、各地の消防本部がアドバイザー派遣制度を活用している。これまでに消防本部に派遣されたアドバイザーは、通信指令分野における高機能消防指令センターの新設等に伴うシステム構成などへの助言、救急分野及び予防分野における事務効率化に向けた電子化やシステム導入に関する助言を行っており、各消防本部がDXを円滑に進めていく上での一助となっている。

ウ 期待される効果

各消防本部におけるDX推進が加速し、消防活動の効率化・高度化、安全管理の強化、事業者等の利便性向上が期待される。また、地域の災害対応力の向上や、国土強靱化の実現にも寄与することが見込まれる。

エ 今後の取組方針

今後も本制度が積極的に活用されるよう、引き続き消防庁から全国の消防本部等に対し制度の周知を行っていく。

※2 各消防本部において施設内にサーバーやソフトウェア等を個別に構築して運用する環境
※3 SaaS(Software as aService)クラウド上で提供されるソフトウェアを利用するサービス