検討会等

調査検討結果の要旨

1 検討の背景

我が国では、ドライバーが自ら給油作業を行うセルフサービス方式の給油取扱所は、保安上の問題から、認められていない。一方、欧米諸国では、我が国とは市街地の状況等が異なるものの、給油取扱所に占めるセルフサービス方式の割合が、英で7割、米、独では9割を超える状況にある。このような状況において、平成7年3月31日に閣議決定された「規制緩和推進計画について」では、セルフサービス方式の給油取扱所について、平成9年度を目途に安全性の問題について結論を得ることとされた。消防庁では、本閣議決定を受けて、「給油取扱所の安全性等に関する調査検討委員会(委員長 星野進保総合研究開発機構理事長)」を設置し、当該問題について検討を行ったものである。

2 検討の経過

(1) セルフサービス方式の給油取扱所に係る危険要因の抽出、評価

危険要因の抽出

我が国及び諸外国の給油取扱所について、事故統計、事例の整理・分析を行うとともに、諸外国の給油取扱所における施設・取扱いの実態、法令、設置基準の調査等を行い、これらの調査・分析結果を踏まえ、給油取扱所をセルフサービス方式とした場合の危険要因の抽出及び評価を行った。危険要因の抽出は、以下の項目が網羅されるように実施した。

  1. 過去に我が国の給油取扱所において発生した給油の際の火災等の事故発生要因
  2. 諸外国の事故の状況等から、セルフサービス方式を導入することにより新たに事故の発生の増大が懸念される要因
  3. 何らかの原因で事故が発生した場合に、被害を拡大させることが懸念される要因

抽出した危険要因は、火災の直接的な要因である「着火物に関するもの」及び「発火源に関するもの」並びに「その他」に区分し整理した。なお、危険要因の抽出に当たっては、給油取扱所に関連する事故等であっても、以下に掲げる事故等については、他の施設においても同様に発生するものであり、セルフサービス方式の給油取扱所の危険要因として特別に考慮する必要はないものと判断した。

  • 給油取扱所へ進入する車両が引き起こす道路の渋滞及びそれに起因する路上での交通事故
  • 給油取扱所へ出入りする車両の交通事故
  • 給油取扱所構内における車両事故(固定給油設備等への影響のないもの)

危険要因の評価

次いで、これらの危険要因の評価を行った。評価に当たっては、セルフサービスを実施している諸外国の事故に関する詳細な統計が得られないことから事故発生率の違い等の定量的な評価が困難であったため、我が国の(フルサービス方式の)給油取扱所における事故に関する統計に基づいて評価した上で、セルフ化の際の危険要因の動向を検討することとした。このため、ここでの危険要因の評価は、各要因の相対的な危険性の違いを明示できるようにすることを主眼に、事故の頻度及び規模を3段階に区分するとともに、それを踏まえて3段階の総合評価を行った。セルフ化の際の危険要因の動向については、諸外国における事故の状況等を踏まえ、増加のレベルを3段階(変化無しを含めると4段階)で設定した。特に有人セルフ(監視者が所在し、必要な監視、指示、制御等の対応を行うもの)と無人セルフ(監視者が所在せず、ドライバーが自由に機器を操作するもの)の動向が異なると考えられるものについては、分けて示すこととした。以上の検討の結果を図示すると下図のようになる。

(2) 危険要因に対する安全対策の検討

安全対策のリストアップ

セルフサービス方式の給油取扱所に係る危険要因に対する安全対策については、以下の3種類に分けて、考えられる対策をリストアップし、危険要因の低減効果を検討した。

① ハード面の対策

危険な状態を自動的に覚知して機能する各種の安全装置等の設備等のほか、危険な状態に至らないための防護設備等が対象となる。

○固定給油設備関係

  • 衝突防止措置(アイランドの高さ、ガードポール等)
  • 立ち上がり配管の遮断弁(衝撃、熱等感知)
  • 給油ノズル等安全装置(開始前の給油ノズルの状態による起動制御、脱落時停止装置、満量停止装置、可燃性蒸気回収装置、コンタミ防止装置、給油ホース緊急離脱カプラー)
  • ポンプ運転制御装置(定量、定時間制御(停止)、火災報知設備からの移報信号による制御(緊急停止)、感震器からの信号による制御(緊急停止))

○固定給油設備関係

② 一部ソフト面を含めた(人的な対応を前提とした)ハード面の対策

危険な状態を人が覚知して操作することにより機能する各種の設備等のほか、危険な状態を人に覚知させるための各種設備等が対象となる。

○コントロールブース関係

  • コントロールブース、モニターカメラ、スピーカー、インターホン
  • ポンプ運転起動/(緊急)停止スイッチ
  • 固定消火設備起動スイッチ

○消火器

○自動火災報知設備

③ ソフト面の対策

顧客に対し、事前に注意を喚起すること等により危険を防ぐ対策のほか、固定給油設備等が適切に機能するための対策等が対象となる。

  • 取扱い・禁止事項等に関する表示、顧客に対する周知・啓蒙、点検、罰則

安全対策の評価

次いで、セルフサービス方式の給油取扱所に係る各危険要因について、上記の各種の安全対策を施すことにより、従来の給油取扱所と比較してどの程度のレベルまで危険度を低減できるか評価した。評価は、有人セルフと無人セルフについてそれぞれ実施した。有人セルフでは、一定の資質を有する監視者(危険物の性質、火災予防・消火の方法等に関する知識を有するとともに、当該給油取扱所の設備等を熟知している者)が監視、指示、制御等の対応を行うことを前提とした。この結果、有人セルフについては、適切なハード面の対策を組み合わせるとともに、一定の資質を有する監視者が必要な対応を行うことにより、危険要因全般について、危険レベルを従来と同等に留められる可能性を有するが、更に実証確認等により、有効性の検証を行う必要があることとされた。一方、無人セルフについては、ハード面の対策だけでは有効な対策のとれない危険要因が幾つか残ることから、危険レベルは従来より高まり、特に、煙草・ライター等の火気使用、エンジン不停止、放火・いたずら、ガソリンの容器での持ち帰り等については、安全性の確保について支障を生じ得るため、以降の検討対象から除外することとされた。

(3) 実証確認の実施

有人セルフサービス方式の給油取扱所における安全対策について、有効性の検証を行うため、以下の実証確認を実施した。

① 実証セルフ給油取扱所における総合的な機能の確認

  • 各種の安全設備等の設置状況及び機能の確認
  • 過去の事故事例について、事故の未然防止、拡大抑制についての効果の確認
  • 模擬給油設備による給油ノズルの取扱い状況の確認

② 個別の安全設備等の機能の定量的な試験

  • 立ち上がり配管の遮断弁及び緊急離脱カプラー
  • 固定消火設備(簡易設置型)

③ ガソリン蒸気の引火・火災実験等

  • 給油口近傍におけるガソリン蒸気の火災実験
  • 煙草によるガソリン蒸気への引火実験

これらの実証確認の結果、各種の安全対策については、当初想定した機能が発揮されることが確認された。更に、過去の事故事例についてこれらの安全対策がなされた状況を仮定して、その効果を検討した結果、適切な安全対策が実施されれば、事故の未然防止、拡大抑制に対して十分な効果のあることが確認された。給油ノズルの取扱状況の確認については、不慣れな顧客が取り扱った場合においても、大きな支障を生じないことが確認された。ガソリン蒸気の引火・火災実験等においては、給油口近傍においてガソリン蒸気に引火しても、漏えいがなければ、ガソリンタンクに火災が拡大しないことが確認された。また、静電気火花ではガソリン蒸気に引火するが、煙草では容易に引火しないことが確認された。なお、煙草では容易に引火しないとしても、煙草に火を着けるためのライターの炎では確実に引火することから、給油取扱所において喫煙することが危険であることは当然である。

3 結論

(1) 安全対策案の策定

実証確認結果等を踏まえ、給油取扱所を有人セルフサービス方式とした場合に、従来と同様の安全性を確保するために必要と考えられる安全対策案は以下のとおりである。安全対策の検討でも記したとおり、無人セルフは安全性の確保に支障を生じ得ることから不適当であり、有人セルフサービス方式に限定するものである。

安全対策

設置する安全対策設備等
① 固定給油設備関係
・ 衝突防止措置
・ 立ち上がり配管の遮断弁
・ 給油ノズル等安全装置
(ラッチオープンノズルの場合)
開始前の給油ノズルの状態による起動制御、脱落時停止装置、満量停止装置、可燃性蒸気回収装置、コンタミ防止装置(又は油種別給油ポンプ起動)、給油ホース緊急離脱カプラー
(非ラッチオープンノズルの場合)
満量停止装置、コンタミ防止装置(又は油種別給油ポンプ起動)、給油ホース緊急離脱カプラー
・ ポンプ運転制御装置(定量、定時間停止、感震器からの信号による緊急停止)
② 固定消火設備(簡易設置型)
③ コントロールブース関係
・ コントロールブース、モニターカメラ、インターホン等
・ 給油ポンプ起動・(一斉)停止スイッチ
・ 固定消火設備起動スイッチ
監視者の常駐
危険物の性質、火災予防・消火の方法等に関する知識を有するとともに、当該給油取扱所の設備等を熟知している監視者をコントロールブースに常駐させること。
監視者の業務
監視者は、コントロールブースから直視により監視するとともに(死角部はモニターカメラにより補助)、インターホン等を用いて、顧客に確認、指示等を行い、顧客が火気を使用していないこと等を確認した後に、ポンプ起動スイッチでポンプを起動し顧客に給油を実施させること。給油終了時には、ポンプ停止スイッチでポンプを停止状態に保持すること。また、監視者は、顧客の給油中においても適切に監視し、危険な状況を認めた場合には一斉停止スイッチにより給油ポンプを停止させ、また、火災を覚知した場合には固定消火設備起動スイッチにより消火設備を起動させるとともに、通報、避難誘導その他必要な措置を実施すること。

(2) 留意事項

セルフサービス方式の給油取扱所にあっても、上記の「安全対策案」を実施することにより、従来の給油取扱所と同等の安全性のレベルが確保できるとの結論が得られた。また、安全対策案は、既存の給油取扱所の改造等による対応を考慮し、事業者の選択の幅を広げられるよう、安全対策として必要な機能に着目し、現時点で可能な複数の選択肢を提示した。なお、監視者については、一定の資質を有する者としたが、新たな資格とせず既存の危険物取扱者の活用が適当である。セルフサービス方式の給油取扱所は我が国で初めて導入されるということもあり、営業開始当初にあっては、各給油取扱所において、顧客に対して十分な取扱い等の説明を実施する必要があると考える。また、今回とりまとめた安全対策案については、今後、顧客が習熟した場合には、事故の状況等を踏まえて適切に見直しを行うことも必要であると考える。

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