告示

市町村の消防の広域化に関する基本指針

平成十八年七月十二日
消防庁告示第三十三号

最終改正 平成三十年三月三十日消防庁告示第八号

消防組織法(昭和二十二年法律第二百二十六号)第三十二条第一項の規定に基づき、市町村の消防の広域化に関する基本指針を次のように定める。

市町村の消防の広域化に関する基本指針

 自主的な市町村の消防の広域化の推進に関する基本的な事項

1 市町村の消防の広域化の必要性
消防は、災害や事故の多様化及び大規模化、都市構造の複雑化、住民ニーズの多様化等の消防を取り巻く環境の変化に的確に対応し、今後とも住民の生命、身体及び財産を守る責務を全うする必要がある。
しかしながら、小規模な消防本部においては、出動体制、保有する消防用車両、専門要員の確保等に限界があることや、組織管理や財政運営面での厳しさが指摘されることがあるなど、消防の体制としては必ずしも十分でない場合がある。
これを克服するためには、市町村の消防の広域化により、行財政上の様々なスケールメリットを実現することが極めて有効である。具体的には、広域化によって、

① 災害発生時における初動体制の強化
② 統一的な指揮の下での効果的な部隊運用
③ 本部機能統合等の効率化による現場活動要員の増強
④ 救急業務や予防業務の高度化及び専門化
⑤ 財政規模の拡大に伴う高度な資機材の計画的な整備
⑥ 消防署所の配置や管轄区域の適正化による現場到着時間の短縮

等、消防力の強化による住民サービスの向上や消防に関する行財政運営の効率化と基盤の強化が期待される。

こうしたことから、平成六年以降、自主的な市町村の消防の広域化が推進されてきた。全国の消防本部の数は、最も多かった平成三年十月の九百三十六本部から、平成十八年四月には八百十一本部にまで減少しているが、広域化と並行して進められた市町村合併の状況と比較すると、広域化が十分進んだとは言い難い状況にあった。そこで、平成十八年においては、都道府県の役割の明確化と、市町村における十分な議論を確保するための関係者の議論の枠組みの創設と併せ、災害の大規模化・多様化等の環境の変化に的確に対応するために広域化の目標となる消防本部の規模を引き上げること等を内容として、広域化を更に推進するための消防組織法の改正及びこれに基づく本指針の策定を行った。
以来、改正後の消防組織法に基づき各都道府県において定められた推進計画に基づく取組が進められてきたところであるが、本指針が策定された当初の広域化の実現の期限としていた平成二十四年度末には平成十八年四月から更に二十七本部が減少し、消防本部数は七百八十四本部となり、平成二十五年に改正された本指針の新たな推進期限としていた平成三十年四月一日には更に五十六本部が減少し、消防本部数は七百二十八本部となったところである。広域化を行った消防本部においては、人員配備の効率化と充実、消防体制の基盤の強化を通じた住民サービスの向上等の成果が現れており、広域化に伴う現象として一部の地方公共団体が懸念する、消防署所の配置替えによる一部地域での消防力低下や消防本部と市町村との関係の希薄化といった事実は認められない。
このように、広域化した消防本部においては、広域化の意図する成果が現れてはいるものの、全体的には、管轄人口十万未満の小規模な消防本部(以下「小規模消防本部」という。)が全消防本部数の約六割を占めるなど、広域化の進捗はまだ十分とはいえず、小規模消防本部が抱える前記の課題が依然として克服されていない。
一方で、日本の総人口は、平成十七年に戦後初めて減少に転じ、既に人口減少社会が到来している。これにより一般的に現在の各消防本部の管轄人口も減少し、消防本部の小規模化がより進むと同時に、生産年齢人口の減少を通じた財政面の制約もより厳しくなるものと考えられる。また、消防本部とともに地域の消防を担っている消防団員の担い手不足の問題も更に懸念される状況にある。また、人口減少により低密度化が進展しているが、消防活動として必要な署所等の数は大きくは変化しないものと考えられ、即応体制の確保など消防力の維持に困難が伴う可能性も高い。このような人口動態等による影響は消防本部の規模が小さいほど深刻であると考えられる。
さらに、高齢化の進展に伴い、自力避難困難者の増加により予防業務の重要性がより一層増しているほか、救急需要が拡大しており、特にこうした面では、消防力の強化をしていかなければならない。また、消防力に関して、消防力の整備指針(平成十二年消防庁告示第一号)及び消防水利の基準(昭和三十九年消防庁告示第七号)に規定する消防力に対する整備率を見ると、平成二十七年四月一日現在、消防職員については七十七・四%、消防水利については七十三・六%にとどまっているなど、依然として整備率が低いものがある。とりわけ、小規模消防本部においては、大規模な消防本部よりも整備率が低い傾向にあり、例えば、消防職員については、管轄人口三十万以上の消防本部が八十七・〇%である一方、小規模消防本部においては、六十六・一%にとどまっている。そのほか、はしご車、化学消防車、救助工作車、消防水利等についても、消防本部の規模による顕著な差が見られる。
さらに、昨今注目されている、消防本部におけるハラスメント等への対応や女性活躍を推進するという観点でも、組織管理体制の基盤の強化が重要な課題となっている。
加えて、近年の東日本大震災での教訓や自然災害の多発、大規模市街地火災等の発生、また、今後の災害リスクの高まりも指摘される状況を踏まえても、広域化による小規模消防本部の解消が重要である。
以上のことから、国、都道府県及び市町村が一体となり、消防力の維持・強化に当たって最も有効な消防の広域化を推進し、小規模消防本部の体制強化を図ることがこれまで以上に必要となっており、喫緊の最重要課題となっている。

2 消防組織法における市町村の消防の広域化の基本的な考え方
消防組織法では市町村の消防の広域化に関し、次の事項について定めている。

① 市町村の消防の広域化の理念及び定義
② 消防庁長官による基本指針の策定
③ 都道府県による推進計画の策定及び都道府県知事の関与等
④ 広域化対象市町村による広域消防運営計画の作成
⑤ 国の援助及び地方債の特別の配慮

この市町村の消防の広域化は、消防の体制の整備及び確立を図ることを旨として、行わなければならないとされているため、広域化によって消防本部の対応力が低下するようなことはあってはならない。
また、市町村の消防の広域化とは、二以上の市町村が消防事務(消防団の事務を除く。)を共同して処理することとすること又は市町村が他の市町村に消防事務を委託することをいうと定義されている。したがって、広域化の対象は、いわゆる常備消防であり、消防団はその対象ではない。
加えて、広域化については、一部事務組合等の共同処理又は事務委託の方式により行われることとなるが、関係市町村間においてそれぞれの方式の利点及び問題点を十分に比較考量の上、その地域に最も適した方式を選択することが必要である。

3 平成三十年度以降の市町村の消防の広域化の推進の方向性

平成十八年の消防組織法の改正後、平成三十年四月一日に至るまでの広域化の状況を踏まえると、広域化の進捗状況は地域の実情によって左右される面があるものと考えられる。また、本指針一、1でも述べたように、平成十八年からの広域化の継続した推進により、気運の高い地域等において、広域化は一定程度進み、成果が現れているが、依然として、広域化の必要性が高い小規模消防本部が残されている。
まずは、市町村が自らの消防本部を取り巻く状況と自らの消防力を分析し、広域化や連携・協力といった手段を織り込みながら、今後のあるべき姿を考えることが必要である。特に小規模消防本部については、今後のあり方を抜本的に議論する必要がある。
また、地域の実情を熟知した広域的な地方公共団体である都道府県の役割が特に重要である。平成二十年及び平成二十一年の消防組織法の改正により、緊急消防援助隊に関する事務と傷病者の搬送及び受入れの実施基準に関する事務が都道府県の事務に追加されたことからも明らかなように、消防の分野における都道府県の役割の重要性は高まっている。広域化についても、本指針一、1で示された現下の消防を取り巻く状況を踏まえると、国の取組とあわせ、都道府県には、関係市町村間の必要な調整、情報の提供その他の必要な支援を行う役割を果たすことが更に期待される。とりわけ、関係市町村間の連絡調整はもとより、広域化に係る市町村の財政負担又は事務負担に対する支援等について、より積極的にその役割を果たし、自主的な市町村の消防の広域化の推進に取り組むことが求められる。
広域化の推進に当たっては、消防組織法が改正された平成十八年以降の十年以上にわたる取組を振り返った上で、今一度原点に立ち返り、推進計画を再策定する必要がある。その際、都道府県は、市町村が行った自らの消防本部を取り巻く状況と自らの消防力の分析を生かしつつ、積極的にリーダーシップを取り、都道府県内の消防体制のあり方を再度議論していく必要がある。
なお、本指針一、4に掲げる国の施策及び本指針三、5に掲げる各都道府県における措置を重点的に実施する地域(以下「消防広域化重点地域」という。)については、これまで以上に積極的に指定し、広域化を推進するものとする。
あわせて、消防事務の一部について柔軟に連携・協力を行うこと(以下「消防の連携・協力」という。)についても、推進していくものとし、消防の広域化と同様、関係市町村間の必要な調整、情報の提供その他の必要な支援を行う役割を果たすことが期待される。

4 国における自主的な市町村の消防の広域化を推進するための施策
本指針一、3を踏まえ、国は、自主的な市町村の消防の広域化を推進するため、次のような施策を講ずる。

(1)消防広域化推進本部の設置
消防庁に、都道府県及び市町村における広域化の取組を支援するための消防広域化推進本部を設置する。

(2)広報及び普及啓発
市町村の消防の広域化を推進するためには、消防サービスの提供を受ける国民、広域化に直接取り組む市町村及び指導助言や連絡調整等を市町村に対して行う都道府県が広域化の必要性、メリットや全国的な状況等について、十分に理解することが重要であることから、あらゆる機会を捉え、また、適当な広報媒体を活用することにより、広域化に関する広報及び普及啓発を行う。

(3)都道府県及び市町村に対する情報提供
広域化の推進に関する制度、広域化を行った先進事例、実際に広域化を行う際の留意事項等について、都道府県及び市町村のニーズに応じた情報提供を行い、関係者における広域化に関する取組の促進を図る。

(4)相談体制の確保充実
広域化を実現した消防本部の幹部職員等で消防庁に登録された者を市町村等に派遣し、助言等を行う消防広域化推進アドバイザーの活用等により、広域化に関する協議を進めるに当たっての諸課題への対処方策等広域化に関する個別具体の相談に積極的に応じる。

(5)財政措置
① 広域化関連事業
都道府県に対して、広域消防運営計画の作成等に関する広域化対象市町村への情報提供若しくは助言、本指針三、3に定める消防広域化重点地域の指定、協議会への参画、調査研究又は広報啓発等に必要な経費について所要の普通交付税措置を講ずるとともに、都道府県が広域化対象市町村に対して行う補助金、交付金等の交付に要する経費について所要の特別交付税措置を講ずるほか、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百八十四条第一項の地方公共団体の組合(以下「組合」という。)で広域化を行った広域化対象市町村の加入するもの若しくは広域化を行った広域化対象市町村又は組合で広域化を行う広域化対象市町村の加入するもの若しくは広域化を行う広域化対象市町村(以下「広域化対象市町村等」という。)に対して、当該広域化対象市町村等が広域消防運営計画を達成するために行う事業に要する経費等について、財政運営に支障を生ずることのないよう、次の財政措置を講ずる。
なお、これらの措置については、消防広域化重点地域に対するものに重点化して行うこととしている。

(ⅰ) 市町村の消防の広域化(都道府県の推進計画に定める市町村の組合せを構成する市町村の全部又は一部からなる地域の広域化に限る。以下この①において「市町村の消防の広域化」という。)に伴う広域消防運営計画の作成を含めた広域化の準備に要する経費及び臨時に増加する経費について所要の特別交付税措置を講ずる。
(ⅱ) 市町村の消防の広域化(平成三十六年四月一日までに行われるものに限る。)に伴い、広域消防運営計画又は消防署所等(消防署、出張所及び指令センターをいう。以下同じ。)の再編整備計画(以下「広域消防運営計画等」という。)に基づき、必要となる消防署所等(一体的に整備する自主防災組織等のための訓練研修施設を含む。)の増改築(広域消防運営計画等において消防署所等の再配置が必要であると位置付けられたものについては、新築を含む。)であって、当該広域化後十年度以内に完了するもの(ただし、広域化前に完了するものを含み、平成十八年の消防組織法の改正に基づいて平成三十年四月一日までに広域化した消防本部にあっては平成四十年四月一日までに完了するもの。(ⅲ)において同じ。)に要する経費について所要の地方財政措置を講ずる。
(ⅲ) 市町村の消防の広域化(平成三十六年四月一日までに行われるものに限る。)に伴い、統合される消防本部庁舎を消防署所等として有効活用するために必要となる改築であって、当該広域化後十年度以内に完了するものに要する経費について所要の地方財政措置を講ずる
(ⅳ) 市町村の消防の広域化に伴う消防本部庁舎の整備に要する経費について所要の地方債措置を講ずる
(ⅴ) 消防通信・指令施設(消防救急デジタル無線、高機能消防指令センター)の整備に要する経費について所要の地方財政措置を講ずる。
(ⅵ) 市町村の消防の広域化(平成三十六年四月一日までに行われるものに限る。)に伴い、広域消防運営計画等に基づく消防署所等の統合による効率化等により、機能強化を図る消防用車両等の整備事業であって、当該広域化後五年度以内に完了するもの(ただし、広域化前に完了するものを含み、平成十八年の消防組織法の改正に基づいて平成三十年四月一日までに広域化した消防本部にあっては平成三十五年四月一日までに完了するもの。)に要する経費について所要の地方財政措置を講ずる。
(ⅶ) 市町村の消防の広域化に伴う消防防災施設等の整備については、消防防災施設等整備費補助金及び緊急消防援助隊設備整備費補助金の交付の決定に当たって、特別の配慮をするものとする。

② 連携・協力関連事業
組合で消防の連携・協力を行う市町村の加入するもの又は消防の連携・協力を行う市町村(以下「連携・協力実施市町村等」という。)に対して、当該連携・協力実施市町村等が消防の連携・協力の円滑な実施を確保するための計画(以下「連携・協力実施計画」という。)を達成するために行う事業のうち特に消防の広域化につなげる効果が高いものに要する経費等について、財政運営に支障を生ずることのないよう、次の財政措置を講ずる。

(ⅰ) 消防の連携・協力に伴い、連携・協力実施計画に基づき、必要となる高機能消防指令センターの新築・増改築であって、平成三十六年四月一日までに完了するものに要する経費について所要の地方財政措置を講ずる。
(ⅱ) 消防の連携・協力に伴い、連携・協力実施計画に基づき、必要となる消防用車両等の整備であって、平成三十六年四月一日までに完了するものに要する経費について所要の地方財政措置を講ずる。
(ⅲ) 消防の連携・協力に伴う消防防災施設等の整備については、消防防災施設等整備費補助金及び緊急消防援助隊設備整備費補助金の交付の決定に当たって、特別の配慮をするものとする。

 自主的な市町村の消防の広域化を推進する期間

市町村の消防の広域化は、消防の体制の整備及び確立のため、不断に取り組んでいかなければならない課題であるが、地域における広域化についての合意形成には相当の時間を要するものと考えられる一方で、大規模災害等が発生する懸念が高まっており、広域化の取組が急がれることや過度に長期の期限を設けると集中的な広域化の取組を阻害するおそれがあることを踏まえると、平成三十六年四月一日を期限として広域化に取り組むことが必要である。

(1)都道府県の推進計画等
平成三十年度中を目途として、消防本部、市町村等と緊密に連携し、検討した上で推進計画の再策定又は策定を行うよう努めること。

(2)市町村の消防の広域化
各広域化対象市町村においては、広域消防運営計画の作成等、広域化に向けた取組を行い、平成三十六年四月一日までに広域化を実現すること。

 推進計画に定める市町村の組合せ及び都道府県における必要な措置に関する基準

1 推進計画の策定
都道府県が、本指針に基づき、当該都道府県の区域内において自主的な市町村の消防の広域化を推進する必要があると認める場合に、その市町村を対象として定めるよう努めることとされている推進計画には、おおむね次のような事項を定めることとなる。

(1)自主的な市町村の消防の広域化の推進に関する基本的な事項
次のような事項に留意して定めること

① 推進計画は、広域化を推進する必要があると認める市町村について、その広域化を計画的かつ円滑に推進することを目的とすること。
② 広域化は、消防の体制の整備及び確立を図るため推進するものであること。
③ 広域化は、市町村、住民、消防関係者等の理解を得て進めていくことが肝要であり、これらの関係者のコンセンサスを得ながら推進していくように努めること。

(2)市町村の消防の現況及び将来の見通し
次のような事項に留意して定めること。

① 広域化を推進するに当たっては、まずは、市町村が自らの消防本部を取り巻く状況と自らの消防力を分析し、広域化や連携・協力といった手段を織り込みながら、今後のあるべき姿を考えることが必要であるため、都道府県が市町村に対し、当該分析・検討を行うために積極的な助言・支援を行う必要があること。
② 市町村の分析・検討を踏まえた上で、消防組織法が改正された平成十八年以降の約十年間における、推進計画に対する広域化の進捗、広域化消防本部の効果、各都道府県における消防需要の動向等を振り返り、消防力の実情、消防本部の財政、人事管理等の状況などの市町村の消防の現況を把握し、改めて広域化の必要性を十分認識した上で、今後の人口の減少、消防需要の変化、消防職員の高齢化等の進展も踏まえ、おおむね十年後の消防体制の姿を見通す必要があること。

(3)広域化対象市町村の組合せ
本指針三、2に基づき定めること。
なお、広域化対象市町村の組合せに基づく本指針三、3に定める消防広域化重点地域の指定等を行う場合については、本指針三、3によること。
また、都道府県が推進する必要があると認める自主的な消防の連携・協力の対象となる市町村(以下「連携・協力対象市町村」という。)についても、本指針三、4に基づき定めること。

(4)自主的な市町村の消防の広域化を推進するために必要な措置に関する事項
本指針三、4に基づき定めること。

(5)広域化後の消防の円滑な運営の確保に関する基本的な事項
本指針四を参考にしつつ、各都道府県の実情を勘案して定めること。

(6)市町村の防災に係る関係機関相互間の連携の確保に関する事項
本指針五を参考にしつつ、各都道府県の実情を勘案して定めること。
なお、都道府県が推進計画を定めるに当たっては、都道府県に、都道府県、市町村の代表、消防機関の代表(常備消防・消防団)、住民代表及び学識経験者等で構成する委員会等の協議機関を設置するなどして、関係者のコンセンサスの形成に努めることが重要である。
また、都道府県が推進計画を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、関係市町村の意見を聴かなければならないとされているところである。

2 推進計画に定める広域化対象市町村の組合せに関する基準
各都道府県は、以下の点を十分考慮した上で、推進計画において、広域化対象市町村及びその組合せを定めること。

(1)市町村の消防の広域化の規模
一般論としては、消防本部の規模が大きいほど火災等の災害への対応能力が強化されることとなり、また組織管理、財政運営等の観点からも望ましい。現行の推進計画において、一の都道府県全体を一つの単位とした区域(以下「全県一区」という。)での広域化を規定した都道府県が一定数あるが、全県一区での広域化は理想的な消防本部のあり方の一つとも言える。
その上で、現状を踏まえつつ、これからの消防に求められる消防力、組織体制、財政規模等に鑑みると、管轄人口の観点から言えばおおむね三十万以上の規模を一つの目標とすることが適当である。
しかしながら、各市町村は、管轄面積の広狭、交通事情、島嶼部などの地理的条件、広域行政、地域の歴史、日常生活圏、人口密度及び人口減少などの人口動態等の地域の事情をそれぞれ有しているため、広域化対象市町村の組合せを検討する際には、上記の規模目標には必ずしもとらわれず、小規模消防本部の広域化を着実に推進するという観点から、これらの地域の事情を十分に考慮する必要がある。
しかしながら、本指針一、1でも述べたように、消防の広域化を推進し、小規模消防本部の体制強化を図ることがこれまで以上に必要となっていることに鑑み、小規模消防本部及び消防吏員数が百人以下の消防本部については、可能な限り広域化対象市町村に指定する方向で検討する必要がある。とりわけ、消防吏員数が五十人以下の消防本部(以下「特定小規模消防本部」という。)については、原則、広域化対象市町村に指定する方向で検討する必要がある。
以上のことを踏まえ、まずは、都道府県内の消防のあるべき姿を議論し、おおむね十年後までに広域化すべき組合せを定めた上で、推進期限までに広域化すべき組合せを定めるものとする。その際、必要に応じ、段階を踏んだ組合せや実現可能性のある複数の組合せも定めるものとする。

(2)配慮及び留意すべき事項
非常備市町村の常備化の必要性に配慮する必要がある。

3 消防広域化重点地域の指定等

(1)消防広域化重点地域の指定の趣旨
十分な消防防災体制が確保できないおそれがある市町村等を消防広域化重点地域に指定し、他の広域化対象市町村よりも先行して集中的に広域化を推進することにより広域化対象市町村の組合せにおける自主的な市町村の消防の広域化を着実に推進するものとする。

(2)都道府県知事による重点地域の指定及び公表等
都道府県知事は、広域化対象市町村のそれぞれの組合せを構成する市町村の全部又は一部からなる地域のうち、広域化の取組を先行して重点的に取り組む必要があるものとして次に該当すると当該都道府県知事が認めるものを消防広域化重点地域として指定することができる。

① 今後、十分な消防防災体制が確保できないおそれがある市町村を含む地域
② 広域化の気運が高い地域
なお、推進期限である平成三十六年四月一日までに広域化を実現させるべき地域は消防広域化重点地域に指定することが望ましく、その中でも、具体的には、次に掲げる地域について、消防広域化重点地域に可能な限り指定することが望ましい。

(ⅰ) 特定小規模消防本部
(ⅱ) 非常備市町村
(ⅲ) 広域化を希望しているが、広域化の組合せが決まっていない消防本部

広域化対象市町村の一の組合せを越える地域を消防広域化重点地域に指定しようとするときは、当該指定しようとする地域が広域化対象市町村の一の組合せの全部又は一部を構成するよう、事前又は事後に推進計画の変更を行うものとする。
なお、消防広域化重点地域の指定を行ったときはその旨を、当該消防広域化重点地域に対する都道府県の支援の内容とともに公表するものとする。

(3)関係市町村の意見の聴取等
消防広域化重点地域の指定に当たっては、都道府県知事は、あらかじめ関係市町村の意見を聴くものとする。
また、消防広域化重点地域に指定された市町村以外の市町村から消防広域化重点地域の指定を求める意見等があった場合においては、都道府県知事は当該意見等を尊重し、当該市町村を対象とする消防広域化重点地域の指定等に努めるものとする。

(4)消防広域化重点地域の指定の変更
(2)及び(3)は、消防広域化重点地域の指定の変更について準用する。

4 推進計画に定める連携・協力対象市町村の組合せに関する基準

(1)消防の連携・協力の意義
消防の広域化は消防力の維持・強化に当たって最も有効な方策であるが、消防の広域化の実現にはなお時間を要する地域もあり、そのような地域においては、消防の広域化につなげるべく、消防の連携・協力を行うことが必要である。

(2)推進計画へ位置付ける上での基本的な考え方
連携・協力対象市町村の組合せを定めるに当たっては、消防の広域化と同様に地域の実情を考慮し、市町村の自主的かつ多様な消防の連携・協力を尊重する必要がある。
しかしながら、消防の連携・協力が喫緊の最重要課題である消防の広域化につながるものであるということを十分に認識した上で、どの市町村間でどのような連携・協力が可能であるかについて、都道府県においても、広い視野で検討することが必要である。
なお、推進計画に位置付けることが望ましい消防の連携・協力としては、高機能消防指令センターの共同運用、消防用車両・消防署所の共同整備等が挙げられる。

(3)高機能消防指令センターの共同運用
高機能消防指令センターを共同運用することにより、整備費の削減、現場要員の充実等を図ることができることに加え、災害情報を一元的に把握し、効果的・効率的な応援態勢が確立されるなどの効果が見込まれる。また、現場に最先着できる隊に自動で出動指令を行ういわゆる「直近指令」、出動可能な隊がなくなった場合に高機能消防指令センターを共同運用している他消防本部の隊に自動で出動指令を行ういわゆる「ゼロ隊運用」などの高度な運用により、区域内の消防力を大きく向上させることも可能である。
さらには、人事交流が生まれるなど消防本部間の垣根を低くする効果もあり、消防の連携・協力の中でも、消防の広域化につなげる効果が特に大きい。
以上のことから、高機能消防指令センターの共同運用については、広域化の推進と併せて、積極的に検討する必要がある。
都道府県においては、上記のことを十分に認識した上で、まずは市町村の高機能消防指令センターの更新時期を把握し、消防本部等と緊密に連携し、高機能消防指令センターの共同運用について検討し、その結果を推進計画に反映させることが必要である。
なお、高機能消防指令センターを共同運用する規模については、広域化と同様、一般論としては、規模が大きいほど望ましいことにも鑑み、面積、人口等において、標準的な規模の都道府県であれば、原則、全県一区とする必要がある。また、既に高機能消防指令センターを共同運用している地域にあっては、上記のような高度な運用により、その効果を最大限に生かすことが望ましい。

5 自主的な市町村の消防の広域化を推進するために必要な措置に関する基準 
消防組織法第三十三条において、都道府県知事が行う市町村相互間における必要な調整及び情報の提供その他の必要な援助等について定められていることを踏まえ、各都道府県は、推進計画において、当該各都道府県における自主的な市町村の消防の広域化を推進するために必要な措置を定めること。
具体的には

① 広域化を推進するための体制の整備
② 住民及び関係者に対する情報提供、普及啓発等
③ 各市町村に対する情報提供、相談対応体制の確保、職員の派遣等
④ 関係市町村間の協議の積極的な推奨、仲介、調整等
⑤ 広域化に関する調査研究

等が考えられるところであり、これらを参考にしつつ、必要な措置を定め、都道府県として広域化の推進に積極的に取り組むこと。

 広域化後の消防の円滑な運営の確保に関する基本的な事項

1 広域化後の消防の体制の整備
市町村の消防の広域化が行われた後に、広域化の効果を十分に発揮することができるよう、広域化後の消防において一元的な部隊運用、出動体制、事務処理等が行われることが重要である。

2 構成市町村等間の関係
市町村の消防の広域化は、主に組合又は事務委託により行われることとなるが、その場合広域化後の消防は、組合の構成市町村又は受託市町村若しくは委託市町村(以下「構成市町村等」という。)との意思疎通及び情報共有に特に意を用いる必要がある。

3 広域化後の消防の体制の整備のために考えられる方策
このように、広域化後の消防の円滑な運営の確保のためには、広域化後の消防の体制を適切に整備することが重要であるが、そのための方策としては、例えば、以下のような事項について、構成市町村等間において十分協議の上、可能な限り、組合又は事務委託の規約、規程等において定めることとすることが有効である。

(1)組合の方式による場合

① 経常的経費、投資的経費それぞれについての構成市町村ごとの負担金の額又は負担割合等に係る基本的なルール
② 職員の任用、給与、教育訓練等に関する計画を策定すること。
③ 中長期的な整備費用の見通しを含めた消防力の整備計画を策定すること。
④ 部隊運用、指令管制等に関する計画を策定すること。
⑤ 災害時等に構成市町村の長と消防長、消防署長又は消防団長とが緊密に連携することができるよう、相互連絡、情報共有等に関する計画を策定すること。
⑥ 構成市町村間の連絡会議の定期的な開催、消防長の専決対象の明確化等構成市町村間の迅速な意見調整を可能とするための仕組みを構築すること。
⑦ 組合の運営に関し、住民の意見を反映できるようにすること。

(2)事務委託の方式による場合

① 委託料に係る基本的なルール
② 災害時等に委託市町村の長と消防長、消防署長又は消防団長とが緊密に連携することができるよう、相互連絡、情報共有等に関する計画を策定すること。
③ 消防事務の運営に関し、住民の意見を反映できるようにすること。

4 推進計画及び広域消防運営計画への記載
以上の点を踏まえ、都道府県においては、必要な事項を推進計画において定めるとともに、広域化対象市町村においては、広域化に係る協議の際にこれらの事項について十分協議の上、可能な限り広域消防運営計画において定めること。

 市町村の防災に係る関係機関相互間の連携
の確保に関する事項

1 消防団との連携の確保
消防団は、地域に密着した消防防災活動を行うという特性上、本指針一、2のとおり、消防組織法に基づき推進する自主的な市町村の消防の広域化の対象とされておらず、従来どおり、消防力の整備指針第三十七条に基づき、市町村の合併等消防団の沿革その他の特段の事情がある場合を除き、一市町村に一団を置くものとする。
この場合、広域化後の消防本部と消防団との緊密な連携の確保が必要となる。
そのために、次のような具体的方策が考えられる。

① 常備消防の管轄区域内の複数の消防団の団長の中から連絡調整担当の団長を指名することによる常備消防との一元的な連絡調整
② 平素からの各消防団合同又は常備消防を含めた訓練等の実施
③ 構成市町村等の消防団と当該構成市町村等の区域に存する消防署所との連携確保のための、消防署所への消防団との連絡調整担当の配置、定例的な連絡会議の開催等
④ 常備消防と消防団との連絡通信手段の確保
以上のような方策を参考としつつ、地域の実情に応じて広域化後の消防本部と消防団との連携の確保を図ることが必要である。

2 防災・国民保護担当部局との連携の確保
防災・国民保護業務は、住民の安心・安全の確保という最も基本的かつ重要な業務であり、また、関係部局・関係機関が多岐にわたるため、それら全体を総合的に調整できる責任者が実施することが必要である。 この場合、市町村の消防の広域化を行うときには、広域化後の消防本部と構成市町村等の防災・国民保護担当部局との緊密な連携の確保が必要となる。
そのために、次のような具体的方策が考えられる。

① 夜間・休日等における市町村の防災業務について、初動時の連絡体制などを消防本部に事務委託
② 各構成市町村等の長及び危機管理担当幹部と消防長及び消防署長による協議会の設置
③ 各構成市町村等と当該構成市町村等の区域に存する消防署所との連携確保のための、定例的な連絡会議の開催、各市町村の災害対策本部への各消防署所の消防職員の派遣等
④ 防災・国民保護担当部局と消防本部との人事交流
⑤ 総合的な合同防災訓練の実施
⑥ 防災・国民保護担当部局と消防本部との情報通信手段の充実による連絡体制の強化
⑦ 防災行政無線の親機や遠隔操作機を消防本部の通信指令部門に設置することによる二十四時間体制の確保

以上のような方策を参考としつつ、地域の実情に応じて広域化後の消防本部と構成市町村等の防災・国民保護担当部局との連携の確保を図ることが必要である。

3 推進計画及び広域消防運営計画への記載
以上の点を踏まえ、都道府県においては、必要な事項を推進計画において定めるとともに、広域化対象市町村においては、広域化に係る協議の際にこれらの事項について十分協議の上、可能な限り広域消防運営計画において定めること。