[地球環境の保全(ハロン消火剤等の使用抑制)]
地球環境の保全のため、消防法令により設置・維持が義務付けられている消防用設備等についても、その環境に及ぼす影響をできるだけ少なくするために、リサイクル等の省資源対策や省エネルギー対策等の取組が求められている。
ハロン消火剤(ハロン2402、1211及び1301)は、消火性能に優れた安全な消火剤として、建築物、危険物施設、船舶、航空機等に設置される消火設備・機器等に幅広く用いられている(平成19年3月現在、約1万7千トン)。しかしながら、ハロンはオゾン層を破壊する物質であることから、オゾン層の保護のためのウィーン条約に基づき、モントリオール議定書において、平成6年1月1日以降の生産等が全廃されることとなり、ハロン消火剤の回収・リサイクルによるハロン消火剤のみだりな放出の抑制や、ハロン代替消火剤の開発・設置等が必要となった。
我が国では、第10回モントリオール議定書締約国会合における決議を踏まえて策定した「国家ハロンマネジメント戦略」に基づき、クリティカルユース(必要不可欠な分野における使用)のハロン消火剤を十分な管理の下に使用していくとともに、回収・リサイクルを推進することにより、建築物等の防火安全性を確保しつつ、不要な放出を抑えていくこととしている。これまで、特定非営利活動法人消防環境ネットワークを中心として、社団法人日本消火装置工業会や消防機関等の国内関係者の継続的な取組により、世界でも例のない厳格な管理体制が整理されるに至っている。
一方、ハロンの代替として、在来の消火設備・機器(粉末消火設備等)のほか、新たにハロン代替消火剤が開発されているところであり、これについても消火性能、毒性等に係る評価手法の検討を行うとともに、ハロン代替消火剤を用いた消火設備の安全性及び適正な設置の確認、データベースの整備等を行っている。このうち知見が十分蓄積されたガスに係る設置方法については、平成13年3月に一般基準化を行った。また、ハロン代替消火剤のうちHFC(ハイドロフルオロカーボン)については、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく京都議定書において、温室効果ガスとして排出抑制・削減の対象となっているため、回収・再利用等による排出抑制に努めるよう要請している。
今後とも、国際会議等における地球環境保護の動向等に留意しながら、引き続きハロン消火剤等を十分な管理の下に使用していくとともに、回収・リサイクルを推進することにより、建築物等の防火安全性を確保しつつ不要な放出を抑えていく必要がある。