平成20年版 消防白書

3 自主防災組織などの活動

(1)自主防災組織

防災体制の強化については、公的な防災関係機関による体制整備が必要であることはいうまでもないが、地域住民が連帯し、地域ぐるみの防災体制を確立することも重要である。
特に、大規模災害時には、電話が不通となり、道路、橋りょう等は損壊し、電気、ガス、水道等のライフラインが寸断され、公的機関の災害対応に支障を来すことが考えられる。また、広域的な応援態勢の確立にはさらに時間を要する場合も考えられる。このような状況下では、地域住民一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という信念と連帯意識の下に、組織的に自主的な防災活動を行うことが不可欠である。

〔1〕 自主防災組織の活動

自主防災組織は、平常時においては、防災訓練の実施、防災知識の啓発、防災巡視、資機材等の共同購入等を行っており、災害時においては、出火の防止、初期消火、情報の収集伝達、避難誘導、被災者の救出・救護、応急手当、給食・給水等を行うこととしている。
例えば、神戸市の「大日通(だいにちどおり)周辺地区まちづくりを考える会」では、阪神・淡路大震災の教訓をもとに、震災体験についてのアンケートを実施し、これを地元デザイン専門学校の学生や市の協力を得て、多言語による「防災と備えの絵本」を制作し、市内の小中学校等に配布した。

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また、生徒手帳に入る大きさの「必ず役に立つ防災カード」を地域の児童生徒等に配布するほか、地域の保育園、小学校、企業と連携した津波避難訓練、子ども達に心をこめて折り鶴を折ってもらいながら震災で学んだ命の尊さや助け合いを語り継いでいこうとする「千羽鶴プロジェクト」の実施など、多様な活動を行っている。

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さらに、事業所、商店街など各協力団体が提供できる施設や資機材・技術等を事前に登録しておき、非常時などに無償で活用しあう「宝島ネットワーク」と名付けた仕組みづくりを進めている。

〔2〕 活動の支援

自主防災組織については、防災訓練など日頃からの活動をより活発にしていくとともに、組織の中心となって意欲的に活動する人材を育てていくことが課題となっている。消防庁では、「自主防災組織の手引」、「防災研修カリキュラム・講師支援教材」等を作成するほか、地域で出前講座を開催するなど、自主防災組織の結成、強化への取組を支援している。また、地域における防災のすぐれた取組について表彰をする「防災まちづくり大賞」を行っている。

(2)婦人(女性)防火クラブ

主婦等を中心に組織された婦人(女性)防火クラブは、家庭での火災予防の知識の修得、地域全体の防火意識の高揚等を図るとともに、万一の場合には、お互いに協力して活動できる体制を整え、安心安全な地域社会をつくるため、各家庭の防火診断、初期消火訓練、住宅用火災警報器の普及促進、防火防災意識の啓発等、地域の実情や特性に応じた防火活動を行っている。
例えば、石川県金沢市の「金沢市婦人防火クラブ協議会」では、各町会の集会で説明を行うとともに、独自に作成したチラシを市内全戸に回覧して約4,000世帯からの希望を募り、住宅用火災警報器12,000個余りを共同購入し、低価格を実現しながら地域の住宅用火災警報器普及を大幅に促進させた。また、自ら取り付けができない高齢者などへは、婦人防火クラブ員や消防団員等が取り付けに協力する体制を整えた。
消防庁では、婦人防火クラブの幹部研修会(中央及び地域研修会)に講師として参加するなどの支援を行っている。

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(3)少年消防クラブ・幼年消防クラブ

〔1〕 少年消防クラブ

10歳以上15歳以下の少年少女により編成される少年消防クラブは、身近な生活の中から火災・災害を予防する方法等を学ぶことを目的とし、研究発表会、ポスター等の作成、防災タウンウォッチングや防災マップづくりなどの活動を行っている。
消防庁では、地方公共団体等とともに全国少年消防クラブ運営指導協議会(会長:消防庁長官)を設けて、優良なクラブや指導者に対する表彰を実施しており、平成19年度は、特に優良なクラブ18団体、優良なクラブ23団体、及び優良な指導者7人を表彰した。
例えば、広島県東広島市の安芸津少年消防クラブでは、消防職団員等の指導の下、1日消防署体験で、応急手当、放水体験、救助資機材展示、はしご車展示などを体験するとともに、春、秋の火災予防運動にあわせ町内防火パトロールなどを実施している。
現行の少年消防クラブは中学生までを対象としたものであるが、1(3)に記述した地域総合防災力の充実方策に関する小委員会報告では、青少年消防組織は将来の消防を支える人材の育成とも関係するものであり、外国の事例も参考に、対象年齢の引き上げについて検討すべきであると述べられている。

〔2〕 幼年消防クラブ

幼年消防クラブは、幼年期において、正しい火の取扱いについて学び、消防の仕事をよく理解させることにより、火遊び等による火災の減少を図ろうとするものであり、近い将来、少年・少女を中心とした防災活動に参加できる素地をつくるため、9歳以下の児童、幼稚園、保育園の園児等を対象として編成され、消防機関等の指導の下に組織の育成が進められている。

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