平成20年版 消防白書

2 地域防災の中核的存在である消防団の充実強化

(1)消防団の役割~連携のつなぎ役~

地域総合防災力の強化を考える上では、以下の点から消防団の役割が極めて重要となる。
第一に、消防団は「自らの地域は自らで守る」という精神に基づき、住民の自発的な参加により組織された住民に身近な存在であるという点である。
地域の防災力を強化する上では、様々な主体が日頃から連携することが必要であるが、消防に関する専門的な知識・技術を有するとともに、地域の実情を熟知している消防団は、その連携を円滑に進めるためのつなぎ役として重要な役割を果たす。現に、地域の防災訓練における初期消火や応急手当の指導などで消防団員が活躍している例は少なくない。
第二に、消防団は常備消防とは異なる特性を生かした活動が期待されるということである。
大規模災害時には、被害が広範囲にわたり、被災者の数も多数にのぼるため、消火活動はもとより救助活動、避難住民の誘導等に大量の人員を速やかに投入しなければならない。この場合、先に述べた地域の事情に精通している(地域密着性)という点のほか、消防職員の約6倍の人員を有し(要員動員力)、現地に居住又は勤務しており速やかに対応できる(即時対応力)、といった特性を有する消防団の役割は極めて大きいものがある。
また、日頃からの戸別訪問等による火災予防活動や、地域の防災訓練への参加など、地域のニーズにきめ細かく対応する活動においても、その役割が期待されていると言えよう。
このように、消防団は、その特長や能力の面で、地域防災の中核的存在として活動することが期待されているところであり、その充実強化が求められている。

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(2)災害時における活躍

全国各地で地震や風水害等の大規模災害が相次いでおり、多くの消防団員が出動し、関係機関と連携をしながら、昼夜を分かたず多岐にわたり活躍している。
平成20年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震では、各地で大きな被害が発生したが、行方不明者の検索活動、河川の警戒、土のう作りなど、消防団員による献身的な活動が行われた。
最近では、このような大規模災害に対応するため、倒壊家屋や道路障害物を排除し人命救助活動を円滑に行うための重機隊など、独自の体制を整えている消防団もあり、更なる活躍が期待される。

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(3)消防団員の確保

しかしながら、消防団員の数は減少し、近年は全国で90万人を割る状況となっており、消防団員の確保は、地域の防災力を高める上で極めて重要な課題である。少子高齢化や過疎化など社会環境の変化や地域社会の変容に対応しながら、被雇用者や女性、若者をはじめとする住民に対して、関係者が一体となって引き続き入団を促進していく必要がある。

〔1〕 消防団協力事業所表示制度

とりわけ、全消防団員の約7割が被雇用者となっている現状の下では、被雇用者団員の活動しやすい環境を整備することが急務である。消防庁では、消防団活動への事業所の一層の理解と協力を得るために、消防団活動に協力している事業所を顕彰する「消防団協力事業所表示制度」を設け、市町村等における導入の促進を図っている。特別の休暇制度を設けて勤務時間中の出動に便宜を図ったり、従業員の入団を積極的に推進する等の協力は、地域の防災体制の充実に資すると同時に、事業所が地域社会の構成員として防災に貢献する取組であり、当該事業所の信頼の向上につながるものである。

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〔2〕 機能別団員・分団制度

また、特定の災害活動や役割を担う機能別団員・分団制度の導入も進められている。大規模災害の時のみ出動する団員や、一般家庭への防火指導など予防活動のみを行う団員、また、長年の消防活動で培った知識、経験を有する消防職団員OBで構成する災害活動の後方支援等を行う分団など、多様な消防団組織の拡充が進められており、被雇用者である団員の割合が高くなっている中で、団員の確保と体制の充実のための有効な方策である。

消防団国際会議

平成20年5月14日(水)、15日(木)の2日間にわたり、世界各国から消防団(義勇消防)の代表者が集い、全国の消防団関係者や消防関係者等の参加の下、世界で初めての「消防団国際会議」が開催された。
この会議は、消防団関係者の国際的な情報交換と連携を深め、各国における消防団の発展を図ることを目的に、消防庁と財団法人日本消防協会が、全国知事会等との共催により自治体消防制度
60周年記念事業として開催したものである。会議では、人々の安全確保と消防団の発展を目指すため、「世界消防団の充実発展を目指す東京宣言」が採択された。

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参加国:
アメリカ合衆国、カナダ、ドイツ連邦共和国、英国、スイス連邦、フィンランド共和国、オランダ王国、オーストリア共和国、オーストラリア連邦、中華人民共和国及び日本の11カ国。
東京宣言の概要:
装備、機材の改善や団員の訓練の充実、消防団員の活動環境の整備、青少年消防組織の活性化、女性の参加促進、世界各国の消防団の情報交換・連携の強化

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