平成20年版 消防白書

1 開発途上諸国等に対する国際協力

(1)アジア国際消防フォーラムの開催

アジア諸国は、人口の増大と都市化が進む一方で、各種の災害に対しぜい弱であることから、我が国は、消防防災体制の整備について大きく貢献することができる。
また、国際消防救助隊の派遣をはじめとする国際協力を円滑に行うためには、日常的に政府間での情報交換と人的ネットワークを形成しておくことが極めて重要である。
こうした視点から、我が国の消防防災に関する知識・技術を活用して、アジア諸国の消防防災能力の向上に資するため、平成19年度から定期的にアジア国際消防フォーラムを開催することとした。
第2回となる平成20年度のフォーラムは、トルコ共和国で開催し、同国の消防防災能力の向上を図る観点から、震災対応等を経て整備された我が国の消防防災機能の概要等に関し、トルコ側関係者への講義を行った。

(2)開発途上諸国からの研修員受入れ

ア 集団研修の実施

消防庁では、JICAと連携・協力し、開発途上諸国の消防防災機関職員を対象に救急救助技術研修、消火技術研修及び火災予防技術研修の3コースの集団研修を、各消防本部の協力の下で実施している。
救急救助技術研修は昭和62年度から、消火技術研修は昭和63年度から、火災予防技術研修は平成2年度から実施しており、平成20年度は、救急救助技術研修については大阪市消防局において8か国から10人(累計187人)、消火技術研修については北九州市消防局において6か国から10人(累計191人)、火災予防技術研修については東京消防庁において7か国から7人(累計128人)の研修生を受け入れ、2~3か月間に及ぶ研修を実施した。

イ 個別研修の実施

消防庁では、アの集団研修のほかにも、開発途上諸国から個別に研修生の受入れを行っている。各国大使館、JICA、財団法人自治体国際化協会等の協力依頼に基づき、各国からの消防防災、気象分野等の関係者を研修生として受け入れ、研修を実施している。

(3)トップマネージャーセミナーの実施

消防庁では、JICAと連携・協力し、消防防災分野の国際交流を図ることを目的として、平成10年度から、各国消防行政に携わる幹部職員を日本へ招いて意見交換等を行う、トップマネージャーセミナーを実施している。
平成19年度は、トルコ共和国から内務省市民防衛総局副局長をはじめとする幹部職員を招き、トルコ共和国における実践的な消火活動訓練の方策等を構築するため、意見交換や視察研修等を実施した。
また、平成20年度は、カンボジア王国から内務省武器・爆発物・火災管理部副局長をはじめとする幹部職員を受け入れ、日本の消防制度等についての講義・視察等研修実施を予定している。

(4)技術協力プロジェクトへの協力

消防庁では、JICAと連携・協力し、次の技術協力プロジェクトの内容の検討及び実施の枠組みについての検討に参画している。

ア タイ王国防災能力向上プロジェクト

タイ王国の防災体制の強化に係る人的能力開発、災害対応能力向上等を目的として実施。

イ イラン国地震後72時間緊急対応計画構築プロジェクト

イラン・イスラム共和国における地震発生後の人的被害を軽減するため、地震後3日間の緊急対応計画の策定支援を目的として実施。

ウ 日中協力地震緊急救援能力強化計画プロジェクト

中華人民共和国における地震災害に対する緊急救援能力の向上を目的として実施を検討。

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