平成28年版 消防白書

第8節 その他の災害対策

[火山災害対策]

1.平成27年以降の主な火山活動の動向

(1) 口永良部島

口永良部島では、平成27年5月29日9時59分に爆発的噴火が発生し、黒灰色の噴煙が火口縁上9,000m以上まで上がった。この噴火に伴い火砕流が発生し、新岳の北西側(向江浜地区)では海岸にまで達した。このため、気象庁は、10時07分に噴火警報を発表し、噴火警戒レベルを3(入山規制)から5(避難)に引き上げた。
この噴火により、消防庁では、10時07分に国民保護・防災部長を長とする「消防庁災害対策本部(第2次応急体制)」を設置した。
また、10時35分、鹿児島県知事から消防庁長官に対して緊急消防援助隊の派遣要請が行われ、消防庁では、直ちに消防庁長官から高知県、宮崎県、福岡市消防局に緊急消防援助隊の出動を要請した。
なお、5月29日、屋久島町が口永良部島全域に対し避難指示を発令したことを受け、口永良部島島内の全住民及び滞在者合計137人は、同日町営フェリー及び鹿児島県消防防災ヘリ等により島外へ避難を完了した。
この噴火による人的被害は、負傷者1人となっている。
気象庁は、10月21日18時00分に噴火警報の切替を発表し、噴火警戒レベル5(避難)を継続しつつ、避難等の厳重な警戒が必要な範囲を噴火に伴う大きな噴石の飛散が予想される新岳火口からおおむね2kmの範囲及び火砕流の流下による影響が及ぶと予想される新岳火口の西側のおおむね2.5kmの範囲とした。
これを受け、屋久島町は、12月25日に前田地区、向江浜地区及び寝待地区を除く地区の避難指示を解除した。
また、屋久島町は、気象庁が平成28年6月14日に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを5(避難)から3(入山規制)に引き下げたことを受け、6月25日に、前田地区、向江浜地区の避難指示を解除し、10月25日には、全島避難後に発生した土砂災害により寸断した道路の復旧が完了したことに伴い、寝待地区の避難指示を解除した。
なお、新岳の火口から半径2km以内及び向江浜地区については、今後も安全上の大きなリスクが懸念されるとして、災害対策基本法に基づく警戒区域を設定し、立ち入りを禁止している。

(2) 浅間山

浅間山では、平成27年4月下旬頃から山頂直下のごく浅い所を震源とする体に感じない火山性地震が多い状態が続いており、また、二酸化硫黄の放出量が6月11日から急増したことから、気象庁は、6月11日15時30分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げた。
その後、6月16日及び19日に山頂火口でごく小規模な噴火が発生した。
この噴火により、消防庁では、6月16日10時25分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置した。

(3) 箱根山

箱根山では、大涌谷で平成27年6月29日夜から30日朝にかけてごく小規模な噴火が発生したものとみられたことから、気象庁は、6月30日12時30分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。
この噴火により、消防庁では、12時30分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置した。
その後、気象庁は、9月11日14時00分に火口周辺警報を発表して噴火警戒レベルを3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引き下げ、11月20日14時00分に火口周辺警報を解除して噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げた。

(4) 桜島

桜島では、平成27年8月15日7時頃から南岳直下付近を震源とする火山性地震が多発し、また、桜島島内に設置している傾斜計及び伸縮計では山体膨張を示す急激な地殻変動が観測された。このため、気象庁は、10時15分に噴火警戒レベルを3(入山規制)から4(避難準備)に引き上げた。
消防庁では、10時15分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置した。
その後、南岳直下付近で多発した火山性地震は8月16日以降急激に減少したことなどから、気象庁は、9月1日16時00分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを4(避難準備)から3(入山規制)に引き下げた。
さらに、11月25日11時00分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引き下げた。
平成28年2月5日18時56分に爆発的噴火が発生し、弾道を描いて飛散する大きな噴石が3合目(昭和火口より1,300~1,800m)まで達した。この噴火に伴い、気象庁は、18時59分に噴火速報、19時13分には火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。

(5) 阿蘇山

中岳第一火口では、平成27年9月14日9時43分に噴火が発生し、大きな噴石が火口周辺に飛散し火砕流が流下した。また、噴煙は火口縁上2,000mまで上がった。この噴火に伴い、気象庁は、平成27年8月4日の運用開始後初となる噴火速報を9時50分に発表し、10時10分に火口周辺警報を発表して噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。
この噴火により、消防庁では、10時10分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置した。
その後、気象庁は、11月24日14時00分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引き下げた。
平成28年10月7日21時52分に、再び噴火が発生し、さらに8日1時46分には、爆発的噴火が発生した。このため、気象庁は、1時50分に噴火速報、1時55分には火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。

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