令和元年版 消防白書

4.防災管理制度

(1)防災管理者

消防法では、切迫する大地震等の危険に対応するため、大規模・高層建築物等の管理権原者に対して、地震災害等に対応した防災管理に係る消防計画*11の作成、地震発生時に特有な被害事象に関する応急体制や避難の訓練の実施等を担う防災管理者*12の選任及び火災その他の災害による被害を軽減するために必要な業務等を行う自衛消防組織*13の設置を義務付けている。
平成31年3月31日現在、法令により防災管理体制を確立し防災管理者を選任しなければならない防災管理対象物は、全国に1万37件あり、そのうち85.6%に当たる8,588件について防災管理者が選任され、その旨が消防機関に届出されている。
また、防災管理者が自ら事業所等の適正な防災管理業務を遂行するために防災管理に係る消防計画を作成し、その旨を消防機関へ届け出ている防災管理対象物は8,058件で全体の80.3%、自衛消防組織を設置している防災管理対象物は8,870件で全体の88.4%となっている(附属資料1-1-42)。

*11 防災管理に係る消防計画:防災管理上必要な事項を定めた計画書であり、防災管理者は当該計画を作成するとともに、本計画に基づいて防災管理業務を遂行するもの
*12 防災管理者:防災管理に関する講習の課程を修了した者等の一定の資格を有し、かつ、防災管理対象物において防災管理上必要な業務を適切に遂行できる管理的又は監督的な地位にある者で、管理権原者から選任された者
*13 自衛消防組織:防火対象物の従業員からなる人的組織であって、消防計画に定められた役割により、火災等の災害発生時における被害を軽減するための必要な業務を行うもの

(2)統括防災管理者

消防法では、防災管理を要する建築物等のうち、管理権原が分かれているものについては、各々の管理権原が存する部分ごとに防災管理者を選任して防災管理を実施する一方、建築物全体の防災管理を一体的に行うため、統括防災管理者を協議して定め、防災管理対象物全体の防火・防災安全を確立することを各管理権原者に対して義務付けている。
平成31年3月31日現在、統括防災管理者を選任しなければならない防災管理対象物は、全国に2,999件あり、そのうち90.0%に当たる2,700件について統括防災管理者が選任され、その旨が消防機関に届出されている。また、建物全体の防災管理を一体的に行うための消防計画を作成し、その旨を消防機関へ届け出ている防災管理対象物は2,601件で全体の86.7%となっている(附属資料1-1-43)。

関連リンク

令和元年版 消防白書(PDF版)
令和元年版 消防白書(PDF版) 令和元年版 消防白書 (一式)  令和元年版 消防白書 (概要版)  はじめに  特集1 最近の大規模自然災害への対応及び消防防災体制の整備  特集2 G20大阪サミット及びラグビーワールドカップ2019における消防特別警戒等...
はじめに
はじめに 昨年は、令和元年8月の前線に伴う大雨や、台風第15号、台風第19号等の幾多の自然災害に見舞われ、また、7月には京都市伏見区で爆発火災が、10月には那覇市で首里城火災が発生するなど、多くの人的・物的被害が生じました。 振り返れば、平成は、阪神淡路大震災(平成7年)や東日本大震災(平成23年)...
1.令和元年8月の前線に伴う大雨の被害と対応
特集1 最近の大規模自然災害への対応及び消防防災体制の整備 1.令和元年8月の前線に伴う大雨の被害と対応 (1)災害の概要 ア 気象の状況 令和元年8月26日に華中から九州南部を通って日本の南にのびていた前線は、27日に北上し、29日にかけて対馬海峡付近から東日本に停滞した。また、この前線に向かっ...
2.台風第15号に伴う被害と対応
2.台風第15号に伴う被害と対応 (1)災害の概要 ア 気象の状況 令和元年9月5日3時に南鳥島近海で発生した台風第15号は、発達しながら小笠原諸島を北西に進み、非常に強い勢力となって伊豆諸島南部へと進んだ。 台風は、強い勢力を保ったまま、同月9日3時前に三浦半島付近を通過し、5時前に千葉市付近に上...