令和元年版 消防白書

2.消防特別警戒の体制等

(1)実施期間

G20大阪サミットは令和元年6月28日及び6月29日の両日に開催されたが、警戒活動の準備期間及び各国の首脳等を含めた要人の動向を考慮し、6月24日から6月30日までの7日間を警戒期間とした。

(2)参加機関

テロ災害が発生している近年の社会情勢や、都市部におけるサミット開催という特性も踏まえ、大阪府内27消防本部、他都府県34消防本部による車両266台、消防ヘリコプター6機、消防艇5艇、消防職員等2,858人(警防2,179人、予防272人、本部要員407人)の消防特別警戒体制を構築した。

(3)警戒体制

G20大阪サミットにおいては、次のような消防特別警戒を実施した。

特集2-1図 警戒体制

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特集2-1図 警戒体制

ア 統括警戒本部

大阪市消防局長を統括警戒本部長、大阪府危機管理室消防保安課長を調整官、消防庁消防・救急課長を統括官として、大阪市消防局に統括警戒本部を設置し、統括警戒本部の意思決定を行うコントロールセンターと、作戦班、情報班、予防班等により構成され、首脳等要人の動向や関連行事の進行状況に応じて随時警戒部隊等の運用・調整を行う作戦室を設置した。なお、コントロールセンターにおける朝夕の定例会議等の模様は、テレビ会議システム等を活用し、関係各所に情報共有できる体制を構築した。

統括警戒本部(作戦室)
統括警戒本部(作戦室)

また、消防研究センター保有の機動鑑識車を統括警戒本部に配備し、サミット関連施設等における火災発生時の原因調査、鑑識体制の強化を図った。

機動鑑識車
機動鑑識車

イ 現地警戒本部等

統括警戒本部の指揮の下、首脳会議場であるインテックス大阪、首脳等要人が利用する航空機が離発着する関西国際空港及び大阪国際空港に現地警戒本部を設置するとともに、都市部におけるサミット開催という特性も踏まえ、大阪市内を北エリア、南エリア及び西エリアに区分のうえ、警戒部隊の進駐警戒拠点を設置し、それぞれにNBC災害発生時に対応する部隊を配備した。
このほか、首脳等の宿泊施設における進駐警戒や要人等の移動経路となる高速道路警戒、大型ヘリコプターを含む航空機による航空警戒、消防艇による海上警戒等を実施し、万全の警戒体制を確保した。

首脳会議場警戒部隊
首脳会議場警戒部隊
大阪国際空港警戒部隊
大阪国際空港警戒部隊
大型ヘリコプター離発着訓練
大型ヘリコプター離発着訓練

ウ 予防警戒

サミット関連施設の火災予防及び避難管理の状況確認等を任務として、24時間体制で予防進駐警戒要員を各施設に配置するとともに、主要ターミナル駅等における消防用設備等維持管理状況や火気管理状況の確認等のため、関係消防署に巡回警戒要員を配置した。
また、首脳等要人の動向やサミット関連行事の開催に合わせ、関連施設に対し随時立入検査や進駐警戒を実施する随時立入検査隊を配置したほか、大阪市外の消防本部から派遣された消防職員により予防特命班を編成し、随時立入検査隊等と連携させることで、突発的な事案等に臨機応変に対応できる体制を構築した。

警戒員によるJR大阪駅巡回警戒
警戒員によるJR大阪駅巡回警戒
警戒員による要人宿泊ホテル進駐警戒
警戒員による要人宿泊ホテル進駐警戒

エ 関係機関との連携確保

サミット関連行事の進捗状況や首脳等要人の動向等については外務省、救急事案発生時の搬送手段及び搬送先医療機関の調整については厚生労働省や医療関係者、交通規制などの動向については警察機関など、警戒を実施するにあたり様々な機関と連携体制を構築し、情報収集・各種調整を図った。

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