令和元年版 消防白書

特集5 緊急消防援助隊の充実強化

平成23年3月に発生した東日本大震災は、平成7年(1995年)阪神・淡路大震災を契機に発足した緊急消防援助隊が初めて数万人規模で出動することとなった未曾有の大災害であった。
緊急消防援助隊の編成及び施設については、消防組織法第45条に基づき総務大臣が「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」(以下「基本計画」という。)により定め、これに基づき整備を進めることとなっている。
東日本大震災を教訓として平成26年3月に基本計画を改定し、平成30年度末までの間に、登録隊を大幅に増強するとともに、大規模災害に対して迅速に出動し、緊急に消防活動を行う統合機動部隊、石油化学コンビナート等における大規模火災等に迅速かつ的確に対応するエネルギー・産業基盤災害即応部隊(ドラゴンハイパー・コマンドユニット)を新設するなど、緊急消防援助隊の充実強化を進めてきた。
計画期間である平成30年度末までに、統合機動部隊は、全都道府県に1部隊計47部隊が整備され、エネルギー・産業基盤災害即応部隊については、国有財産等の無償使用制度*1(以下「無償使用制度」という。)を活用した特殊車両の配備により、全国のブロックごとに選定した石油コンビナート等の立地する12地域への整備が完了した。
一方で、東日本大震災を超える被害が想定されている南海トラフ地震や首都直下地震の発生が懸念されており、更なる消防力の強化が必要である。
また、近年、平成29年7月九州北部豪雨や平成30年7月豪雨などの大規模な水害が発生しており、これらに対応した救助体制の強化が必要である。加えて、国内では、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会などの国際的な大規模イベントが控える中、NBCテロ災害への万全の体制整備が求められている。
こうした背景を踏まえ、基本計画を平成31年3月に改定し、緊急消防援助隊登録隊の増隊や無償使用制度及び国庫補助金を活用した車両・資機材の整備、実践的な訓練の実施などにより、更なる緊急消防援助隊の充実強化を進めることとしたところである。

ドラゴンハイパー・コマンドユニットの中核車両
ドラゴンハイパー・コマンドユニットの中核車両
平成30年7月豪雨における捜索活動
平成30年7月豪雨における捜索活動
(松江市消防本部提供)
平成30年北海道胆振東部地震における捜索活動
平成30年北海道胆振東部地震における捜索活動
(秋田市消防本部提供)

*1 国有財産等の無償使用制度:緊急消防援助隊の活動上必要な車両・資機材等のうち、地方公共団体が整備・保有することが費用対効果の面から非効率なものについて、大規模・特殊災害時における国の責任を果たすため、消防組織法第50 条に基づき、国が整備し緊急消防援助隊として活動する人員の属する都道府県又は市町村に対して無償で使用させるもの

関連リンク

令和元年版 消防白書(PDF版)
令和元年版 消防白書(PDF版) 令和元年版 消防白書 (一式)  令和元年版 消防白書 (概要版)  はじめに  特集1 最近の大規模自然災害への対応及び消防防災体制の整備  特集2 G20大阪サミット及びラグビーワールドカップ2019における消防特別警戒等...
はじめに
はじめに 昨年は、令和元年8月の前線に伴う大雨や、台風第15号、台風第19号等の幾多の自然災害に見舞われ、また、7月には京都市伏見区で爆発火災が、10月には那覇市で首里城火災が発生するなど、多くの人的・物的被害が生じました。 振り返れば、平成は、阪神淡路大震災(平成7年)や東日本大震災(平成23年)...
1.令和元年8月の前線に伴う大雨の被害と対応
特集1 最近の大規模自然災害への対応及び消防防災体制の整備 1.令和元年8月の前線に伴う大雨の被害と対応 (1)災害の概要 ア 気象の状況 令和元年8月26日に華中から九州南部を通って日本の南にのびていた前線は、27日に北上し、29日にかけて対馬海峡付近から東日本に停滞した。また、この前線に向かっ...
2.台風第15号に伴う被害と対応
2.台風第15号に伴う被害と対応 (1)災害の概要 ア 気象の状況 令和元年9月5日3時に南鳥島近海で発生した台風第15号は、発達しながら小笠原諸島を北西に進み、非常に強い勢力となって伊豆諸島南部へと進んだ。 台風は、強い勢力を保ったまま、同月9日3時前に三浦半島付近を通過し、5時前に千葉市付近に上...