令和2年版 消防白書

3.小規模施設における防火対策の推進

(1)自動消火設備の設置の促進

比較的小規模な高齢者施設や有床診療所において多数の人的被害を伴う火災が相次いだことを受け、平成26年の消防法施行令の改正により、自力で避難することが困難な方が入所する高齢者・障害者施設や避難のために患者の介助が必要な有床診療所・病院については、平成28年4月1日以降、原則として面積にかかわらずスプリンクラー設備の設置が義務付けられたところである(経過措置期間:令和7年6月30日まで)。
一方、消防法においては、これらの建築物の構造特性等に鑑み、スプリンクラー設備に代えて、同様の機能を有し設置工事が行いやすいパッケージ型自動消火設備を設置することができることとされている。比較的小規模な施設の建物特性に対応した消火性能を有するパッケージ型自動消火設備に係る技術開発の動向を踏まえ、小規模な施設の実態に応じて設置を可能とする技術上の基準を平成28年1月に策定した。既存の有床診療所・病院についてはスプリンクラー設備の設置義務に係る経過措置が令和7年6月までとされていることから、このような動向を踏まえて、消防機関においてはスプリンクラー設備等の設置に関する適切な指導を進めていく必要がある。

(2)小規模施設における消防訓練の実効性向上

多数の自力避難困難者が利用する小規模施設では、夜間は昼間に比べて職員数が少なく、火災が発生した場合には、限られた職員等により初期消火や消防機関への通報、自力避難困難者を介助しながらの避難誘導などを行う必要があり、夜間の火災時に適切に対応するための消防訓練を定期的に実施することが特に重要である。
このため、自力避難困難者が利用する施設の関係者が、火災時に一時的に待避することが可能な屋内の場所を活用した水平避難による訓練を行う際の方法等について「自力避難困難な者が利用する施設における一時待避場所への水平避難訓練マニュアル」を平成30年3月に作成し、11月には、施設関係者が、本マニュアルを活用した効果的な訓練を計画して実施するためのポイントを整理したリーフレットを作成したところである。本マニュアル及びリーフレットを参考とし、個々の施設の状況等に応じた具体的な訓練方法等を整備し、訓練の実効性向上を図っていく必要がある。

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