令和2年版 消防白書

6.最近の石油コンビナート等における災害対策

(1)石油コンビナート等における災害防止対策検討関係省庁連絡会議

平成26年1月に発生した三菱マテリアル株式会社四日市工場における爆発火災事故を契機として、石油コンビナート保安の所管省庁である消防庁、厚生労働省、経済産業省で平成26年度から定期的に連絡会議を開催している。
当該会議は、事故に関する情報交換、政策動向の共有、事業者の災害防止に向けた取組の推進、災害発生時の連携した対応などを目的としており、石油コンビナートにおける災害防止に向けて省庁の垣根を越えて連携し、事故防止への取組を進めるとともに、インターネット上で事故情報等を発信している。
令和元年度は、屋内でのドローン活用の安全要件を整理し、その際に必要なリスクアセスメントやリスク対策を盛り込む形で、「プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン」を改訂し、都道府県、消防本部、事業所に周知した。
また、令和2年11月には、プラント保安分野におけるAIを導入する際の課題解決に資するため、「プラント保安分野AI信頼性評価ガイドライン」及び「プラントにおける先進的AI事例集」を取りまとめ、都道府県、消防本部、事業所に周知した。
ドローンやAIの更なる活用により、プラントの保安力の向上や労働災害の撲滅につながることが期待されている。
(石油コンビナート等災害防止3省連絡会議3省共同運営サイト:https://www.fdma.go.jp/relocation/neuter/topics/fieldList4_16.html

(2)石油コンビナート等の地震・津波対策

南海トラフ地震や首都直下地震による被害の発生が懸念されることから、東日本大震災の被害の状況を踏まえ、防災アセスメント指針、自衛防災組織等の防災活動の手引きの改訂を行うなど、石油コンビナート等における防災体制の充実強化を図っている。

(3)石油コンビナート等における自衛防災組織の技能コンテスト

消防庁では、特定事業所における自衛防災組織等の防災要員の技能及び士気の向上を図ることを目的とした「石油コンビナート等における自衛防災組織の技能コンテスト」を開催している。
当該コンテストは、11月5日の「津波防災の日」の前後に、特定事業所内で大型化学高所放水車及び泡原液搬送車又は高所放水車等及び化学消防車等を使用し、大規模タンク火災への泡放射を想定した訓練をいかに安全・確実・迅速に行うかを競うもので、優秀な成績を収めた自衛防災組織等を総務大臣及び消防庁長官が表彰している。

コンテスト
コンテスト
コンテスト表彰式
コンテスト表彰式

(4)先進技術を活用した石油コンビナート災害対応に関する検討会の開催

消防庁では、石油コンビナート防災体制強化を目的として検討会を実施している。
令和元年度は、石油コンビナート災害における事業所、消防機関の災害対応をより安全で効果的に行うため、AI・IoT技術等に代表される先進技術の活用が推進されるよう、学識経験者、行政機関、業界関係者等をメンバーとした検討会を開催した。先進技術の災害対応時の活用方策について調査分析を行い、現状における課題等の検討を加えた上で、今後の災害対応イメージを提案し、報告書として取りまとめ公表した。

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