令和2年版 消防白書

第5節 風水害対策

[風水害の現況と最近の動向]

1.令和元年中の主な風水害

令和元年中の風水害による人的被害は、死者123人(前年285人)、行方不明者4人(同8人)、重傷者88人(同236人)及び軽傷者667人(同1,637人)、住家被害は、全壊3,702棟(同6,922棟)、半壊3万4,446棟(同1万2,633棟)及び一部破損11万9,594棟(同11万3,068棟)となっている(第1-5-1図)。
また、令和元年中に発生した台風の数は、平年より多い29個(平年値25.6個)であり、このうち日本列島に上陸した台風の数は、平年より多い5個(同2.7個)であった。
なお、令和元年中の主な風水害による被害状況等については、第1-5-1表のとおりである。

第1-5-1図 風水害による過去10年間の被害状況の推移

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第1-5-1図 風水害による過去10年間の被害状況の推移

(備考)「災害年報」により作成

第1-5-1表 令和元年中の主な風水害による被害状況

(令和2年4月1日現在)

第1-5-1表 令和元年中の主な風水害による被害状況

(備考)「災害年報」により作成

(1)5月18日からの大雨による被害等の状況

5月18日から20日にかけて九州南部に湿った空気が継続して流れ込み、また、20日から21日にかけて寒冷前線が西日本から北日本と関東地方を通過した。
この湿った空気と寒冷前線の影響により、同月17日から20日までの総降水量が多いところでは鹿児島県で500ミリ、宮崎県で400ミリを超える地域があったほか、鹿児島県屋久島町では1時間に約110ミリの猛烈な雨が解析された。
消防庁では、同月18日23時30分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
なお、この大雨により、軽傷者5人の人的被害のほか、51棟の住家被害が発生した。

(2)台風第3号による被害等の状況

6月26日、沖縄・奄美及び九州南部に接近した熱帯低気圧は、27日21時に室戸岬の南で台風第3号に変わった後、太平洋沿岸を東北東に進み、28日15時に日本の東で温帯低気圧となった。
この熱帯低気圧及び台風の影響により、沖縄・奄美から西日本の太平洋側を中心に局地的に非常に激しい雨が降った。
消防庁では、同月26日17時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「熱帯低気圧の接近による大雨についての警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。
なお、この熱帯低気圧及び台風による人的被害はなかったものの、5棟の住家被害が発生した。

(3)6月29日からの大雨による被害等の状況

6月29日から7月4日頃にかけて日本付近に停滞していた梅雨前線に南から暖かく湿った空気が流れ込み、前線の活動が活発となった。
この梅雨前線の影響により、西日本の太平洋側を中心に局地的に猛烈な雨となり、6月28日から7月5日までに宮崎県えびの市で1,089.5ミリの総降水量を観測するなど、記録的な大雨となった。
消防庁では、6月28日17時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
また、同日、各都道府県及び指定都市に対して「6月30日から7月1日頃にかけての大雨についての警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けるとともに、6月30日、各都道府県及び指定都市に対して「今週半ばにかけての大雨についての警戒情報」を発出し、更なる警戒を呼び掛けた。
なお、この大雨により、死者2人(鹿児島県)、重傷者1人及び軽傷者4人の人的被害のほか、436棟の住家被害が発生した。

(4)梅雨前線による大雨及び台風第5号による被害等の状況

台風第5号は、7月18日に先島諸島に最も接近した後、朝鮮半島に上陸し、21日3時に熱帯低気圧となった。また、22日から24日にかけて活発な梅雨前線が西日本の日本海側から東北南部に停滞した。
台風周辺の湿った空気と梅雨前線の影響により、西日本を中心に同月18日から21日にかけて局地的に猛烈な雨となり、特に長崎県の五島と対馬では19日夜から20日昼過ぎにかけて発達した雨雲が次々と流れ込み、長崎県五島市で399.0ミリの24時間降水量を観測した。この大雨に関し、気象庁は、20日10時05分、長崎県の五島と対馬市に大雨特別警報を発表し、最大級の警戒を呼び掛けた。
また、同月21日未明から朝にかけて佐賀県から福岡県にかけて発達した雨雲が停滞し、24時間で7月の平年の降水量を超える記録的な大雨となったところがあったほか、台風第5号から変わった温帯低気圧と上空に流れ込んだ寒気の影響によって、西日本と東日本の広い範囲で大気が不安定となり、22日にかけて東海地方では局地的に猛烈な雨となった。
消防庁では、同月19日11時45分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「梅雨前線による大雨と台風第5号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。
また、同月20日10時05分に国民保護・防災部長を長とする消防庁災害対策本部に改組(第2次応急体制)して災害応急体制を強化した。
なお、この大雨により、行方不明者1人(高知県)及び軽傷者6人の人的被害のほか、825棟の住家被害が発生した。

(5)台風第6号による被害等の状況

台風第6号は、7月27日7時頃に三重県南部に上陸した後、北北東に進み、15時に岐阜県付近で熱帯低気圧となった。
この台風と台風から変わった熱帯低気圧の影響により、近畿地方から東日本にかけて局地的に非常に激しい雨となった。
消防庁では、同月26日14時30分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第6号及び前線による大雨についての警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。
なお、この台風による人的被害はなかったものの、2棟の住家被害が発生した。

(6)台風第8号による被害等の状況

台風第8号は、8月6日5時頃に強い勢力で宮崎市付近に上陸した後、北西に進み、7日9時に日本海で熱帯低気圧となった。
この台風の影響により、九州や四国の太平洋側を中心に西日本では局地的に猛烈な雨となり、同月5日から7日までに徳島県那珂町で467.0ミリの総降水量を観測したほか、九州南部、九州北部地方では非常に強い風を観測した。
消防庁では、同月5日9時55分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第8号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。
なお、この台風により、死者1人(大分県)、重傷者1人及び軽傷者4人の人的被害のほか、28棟の住家被害が発生した。

(7)台風第9号による被害等の状況

台風第9号は、8月8日に先島諸島に最も接近した後、東シナ海を北西に進み、10日3時過ぎに華中に上陸した。
この台風の影響により、沖縄地方では同月10日にかけて局地的に非常に激しい雨となり、先島諸島を中心に沖縄地方では猛烈な風を観測した。
消防庁では、同月7日15時40分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第9号と台風第10号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。
なお、この台風による住家被害はなかったものの、重傷者2人及び軽傷者4人の人的被害が発生した。

(8)台風第10号による被害等の状況

台風第10号は、8月15日11時過ぎに愛媛県佐田岬半島を通過し、15時頃に広島県呉市付近に上陸した後、北上し、16日21時に日本海で温帯低気圧となり、低気圧からのびる前線が17日にかけて北日本を通過した。
この台風の影響により、西日本から東日本の太平洋側を中心に広い範囲で非常に激しい雨が降り、同月13日から17日までの総降水量が800ミリを超えたところがあった。また、台風から変わった温帯低気圧の影響によって、17日明け方にかけて北海道では非常に強い風、強い雨を観測したところがあった。
消防庁では、同月7日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第9号と台風第10号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。
また、同月9日15時45分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日及び13日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第10号についての警戒情報」を発出し、更なる警戒を呼び掛けた。
なお、この台風により、死者2人(兵庫県、広島県)、重傷者9人及び軽傷者49人の人的被害のほか、70棟の住家被害が発生した。

(9)令和元年8月の前線に伴う大雨による被害等の状況

8月26日に華中から九州南部を通って日本の南にのびていた前線は、27日に北上し、29日にかけて対馬海峡付近から東日本に停滞した。また、この前線に向かって暖かく非常に湿った空気が流れ込んだ影響等により、東シナ海から九州北部地方にかけて発達した雨雲が次々と発生し、線状降水帯が形成・維持された。
これにより、九州北部地方では同月26日から29日までの総降水量が長崎県平戸市で626.5ミリ、佐賀県唐津市で533.0ミリに達するなど、8月の月降水量の平年値の2倍を超える大雨となったところがあった。特に、福岡県及び佐賀県では、3時間及び6時間降水量が観測史上1位の値を更新する地域があるなど、記録的な大雨となった。
この大雨に関し、気象庁は、同月28日5時50分に福岡県、佐賀県及び長崎県に大雨特別警報を発表し、最大級の警戒を呼び掛けた。
消防庁では、記録的な大雨により、重大な災害の起こるおそれが著しく高まったことから、同日5時41分に国民保護・防災部長を長とする消防庁災害対策本部を設置(第2次応急体制)し、さらに、7時00分には消防庁長官を長とする消防庁災害対策本部へ改組(第3次応急体制)し、全庁を挙げて災害応急対応にあたった。
この記録的な大雨により、各地で河川の氾濫、浸水や土砂崩れ等が発生した。
この大雨により九州北部の多くの市町村において、避難指示(緊急)及び避難勧告等が発令され、ピーク時における避難者数が5,400人超に達した。
また、停電、断水等ライフラインへの被害や鉄道の運休等の交通障害が発生した。
このほか、佐賀県大町町の鉄工所において、河川の氾濫により、鉄工所内の金属加工用装置のオイルピットから大量の焼き入れ油が流出し、下流域に広く拡散するなど、住民生活に大きな支障が生じた。
なお、この大雨により、死者4人(福岡県1人、佐賀県3人)、重傷者3人及び軽傷者1人の人的被害のほか、6,718棟の住家被害が発生した。

(10)台風第13号による被害等の状況

台風第13号は、9月4日から6日にかけて沖縄地方に接近した後、北上して、8日9時に中国大陸で温帯低気圧となった。
この台風の影響により、沖縄地方では局地的に非常に激しい雨となり、沖縄県宮古島市で最大風速47.7メートルを観測するなど、猛烈な風となったところがあった。
消防庁では、同月4日16時10分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
また、同日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第13号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けるとともに、6日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第13号と台風第15号についての警戒情報」を発出し、更なる警戒を呼び掛けた。
なお、この台風により、軽傷者7人の人的被害のほか、3棟の住家被害が発生した。

(11)令和元年房総半島台風(台風第15号)による被害等の状況

9月5日3時に南鳥島近海で発生した台風第15号は、発達しながら小笠原近海を北西に進み、非常に強い勢力となって伊豆諸島南部へと進んだ。
台風は、強い勢力を保ったまま、同月9日3時前に三浦半島付近を通過し、5時前に千葉市付近に上陸後、千葉県から茨城県を北東に進み、10日9時に日本の東海上で温帯低気圧に変わった。
この台風の影響により、同月7日から9日までの総降水量が静岡県伊豆市で450.5ミリ、東京都大島町で314.0ミリを記録するなど、伊豆諸島や関東地方南部を中心に大雨となった。また、東京都神津島村で最大風速43.4メートル、最大瞬間風速58.1メートルを、千葉県千葉市で最大風速35.9メートル、最大瞬間風速57.5メートルを観測するなど、伊豆諸島や関東地方南部で猛烈な風を観測したところがあり、多くの地点で観測史上1位の風速を更新する記録的な暴風となった。
気象庁は、顕著な災害をもたらした台風第15号について、災害の経験や教訓を後世に伝承することなどを目的として「令和元年房総半島台風」と名称を定めた。
消防庁では、台風第15号の接近に備え、同月6日11時15分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制の強化を図るとともに、各都道府県及び指定都市に対して「台風第13号と台風第15号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。
この台風による大雨と暴風により、千葉県内の市町村を中心に、多くの市町村において避難指示(緊急)及び避難勧告等が発令され、ピーク時における避難者数は2,200人超に達した。
また、千葉県では、暴風により、多数の住宅において屋根瓦の飛散などの被害が発生し、被災地域ではブルーシート等による応急措置に追われた。
さらに、送電線の鉄塔や電柱の倒壊、倒木や飛散物による配電設備の故障等により、千葉県を中心に、最大約93万4,900戸の大規模停電となった。この大規模停電の影響により、携帯電話網や市町村防災行政無線等が使用できず、住民への情報伝達が困難となる通信障害が発生したほか、多くの市町村で断水等ライフラインへの被害や鉄道の運休等の交通障害が発生するなど、住民生活に大きな支障が生じた。
なお、この台風により、死者3人(千葉県2人、東京都1人)、重傷者16人及び軽傷者137人の人的被害のほか、8万8,436棟の住家被害が発生した。

(12)台風第17号による被害等の状況

台風第17号は、9月20日から21日にかけて沖縄地方に接近した後、22日から23日にかけて西日本及び北陸地方に接近し、23日9時に日本海で温帯低気圧となった。
この台風の影響により、沖縄地方では同月21日から22日にかけて猛烈な風が吹いたところがあり、西日本の太平洋側では22日から23日にかけて非常に強い風が吹いたところがあり、局地的に猛烈な雨が降り、19日から24日までに徳島県那賀町で548.0ミリの総降水量を観測するなど、大雨となった。
また、沖縄県渡嘉敷村で32.9メートル、長崎県長崎市で29.2メートルの最大風速を観測するなど、沖縄・奄美や西日本の広い範囲で猛烈な風や非常に強い風を観測したところがあったほか、同月22日には宮崎県延岡市で竜巻が発生した。
消防庁では、同月20日14時30分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第17号や前線についての警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。さらに、22日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第17号や前線についての警戒情報」を発出し、更なる警戒を呼び掛けた。
なお、この台風により、死者2人(長野県、沖縄県)、重傷者5人及び軽傷者64人の人的被害のほか、1,113棟の住家被害が発生した。

(13)台風第18号による被害等の状況

台風第18号は、9月30日から10月1日にかけて先島諸島に接近した後、北上し、3日15時に日本海で温帯低気圧に変わった。
この台風の影響により、沖縄地方、九州北部地方、四国地方で局地的に猛烈な雨となり、9月30日から10月5日までの総降水量が沖縄地方や四国地方の多いところで300ミリを超える大雨となった。
また、沖縄県竹富町で30.7メートルの最大風速を観測するなど、沖縄地方で最大風速30メートル以上の猛烈な風を観測したところがあった。
消防庁では、9月30日10時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第18号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。
また、各都道府県及び指定都市に対し、10月2日に「台風第18号についての警戒情報」を、4日に「台風第18号から変わった低気圧についての警戒情報」を発出して、厳重な警戒を呼び掛けた。
なお、この台風により、軽傷者10人の人的被害のほか、101棟の住家被害が発生した。

(14)令和元年東日本台風(台風第19号)等による被害等の状況

10月6日3時に南鳥島近海で発生した台風第19号は、大型で猛烈な台風に発達した後、日本の南を北上した。
台風は、大型で強い勢力を保ったまま、同月12日19時前に伊豆半島に上陸し、関東地方を通過した後、13日12時に日本の東海上で温帯低気圧に変わった。
この台風の影響により、同月10日から13日までの総降水量が、神奈川県箱根町で1,000ミリに達し、東日本を中心に17の地点で500ミリを超える大雨となった。特に、静岡県や新潟県、関東甲信地方、東北地方の多くの地点で3時間、6時間、12時間及び24時間降水量の観測史上1位の値を更新する記録的な大雨となった。
この大雨に関し、気象庁は、同月12日15時30分に静岡県、神奈川県、東京都、埼玉県、群馬県、山梨県、長野県、19時50分に茨城県、栃木県、新潟県、福島県、宮城県、13日0時40分に岩手県の合計1都12県に大雨特別警報を発表し、最大級の警戒を呼び掛けた。
また、東京都大田区で観測史上1位を更新する最大風速34.8メートルを観測するなど、関東地方の4箇所で最大風速30メートルを超える猛烈な風となった。さらに、台風の接近に伴って大気の状態が非常に不安定となり、千葉県市原市では竜巻と推定される突風が発生した。
台風は、同月13日に温帯低気圧に変わったが、その後も前線や低気圧の影響により、18日から19日にかけて全国的に雨となり、東海地方では多いところで日降水量が500ミリを超える大雨となった。また、24日から26日にかけて西日本、東日本、北日本の太平洋沿岸に沿って低気圧が進み、この低気圧に向かって南から暖かく湿った空気が流れ込むとともに、日本の東海上を北上した台風第21号周辺の湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となった。このため、関東地方から東北地方にかけての太平洋側を中心に広い範囲で総降水量が100ミリを超え、12時間降水量が10月の月降水量平年値を超えたところがあった。特に、千葉県や福島県では総降水量が200ミリを超えたほか、3時間及び6時間降水量の観測史上1位の値を更新する記録的な大雨となった。
気象庁は、顕著な災害をもたらした台風第19号について、災害の経験や教訓を後世に伝承することなどを目的として「令和元年東日本台風」と名称を定めた。
消防庁においては、台風第19号の接近に備え、同月8日13時に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制の強化を図るとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第19号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。
また、気象庁が記者会見を開催し、昭和33年の狩野川台風を例に出して記録的大雨への警戒を呼び掛けた同月11日には、消防庁は再び各都道府県及び指定都市に対して「台風第19号についての警戒情報」を発出し、台風第19号による暴風や大雨への更なる警戒を呼び掛けた。
さらに、静岡県をはじめとする1都6県に大雨特別警報が発表されるなど、重大な災害が発生するおそれが著しく高まったことから、同月12日15時30分に消防庁長官を長とする消防庁災害対策本部へ改組(第3次応急体制)し、全庁を挙げて災害応急対応に当たった。
この台風第19号とその後の度重なる大雨により、各地で河川の氾濫、堤防の決壊による浸水、土砂崩れ等が多数発生した。
特に堤防が決壊した河川は、千曲川(長野県)や阿武隈川(福島県)をはじめ74河川の142箇所にのぼり(令和2年4月8日現在、国土交通省調べ)、濁流による浸水域は広範囲にわたった。
また、台風第19号に伴う土砂災害の発生件数は、952件(令和元年12月31日現在、国土交通省調べ)となり、統計を開始した昭和57年以降で、一つの台風に伴うものとしては過去最大となった。
これにより、多くの市町村において避難指示(緊急)及び避難勧告等が発令され、ピーク時における避難所への避難者数は23万7,000人超に達した。
また、道路の損壊や道路への土砂の流入、橋梁の流出などにより多数の孤立地域が発生したほか、停電、断水等ライフラインへの被害や鉄道の運休等の交通障害が発生するなど、住民生活に大きな支障が生じた。
なお、この台風により、死者107人(岩手県3人、宮城県19人、福島県37人、茨城県2人、栃木県4人、群馬県4人、埼玉県4人、千葉県12人、東京都3人、神奈川県9人、長野県6人、静岡県3人、兵庫県1人)、行方不明者3人(宮城県2人、茨城県1人)、重傷者44人、軽傷者340人の人的被害のほか、9万6,255棟の住家被害が発生した。

(15)低気圧に伴う暴風雪による被害等の状況

11月14日から15日にかけて、低気圧が日本海北部から北海道付近を発達しながら北上し、低気圧からのびる前線が西日本から北日本を通過した。また、16日は北日本では冬型の気圧配置が強まった。
この低気圧や低気圧からのびる寒冷前線の影響により、北海道地方では日本海側を中心に風速15メートル以上の強い風が吹いたところがあった。
消防庁では、同月13日11時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「発達する低気圧及び冬型の気圧配置についての警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。
なお、この暴風雪による人的被害はなかったものの、2棟の住家被害が発生した。

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