令和2年版 消防白書

4.情報化の最近の動向

(1)消防防災通信ネットワークの充実強化

消防庁では、ICTを積極的に活用し、次の事項に重点をおいて消防防災通信ネットワークの充実強化を推進することにより、地方公共団体と一体となって国民の安心・安全をより一層確かなものとすることとしている。

ア 住民への災害情報伝達手段の多重化・多様化

豪雨、津波等の災害時においては、一刻も早く住民に警報等の防災情報を伝達し警戒を呼び掛けることが住民の安全を守る上で極めて重要であり、災害時における住民への確実な情報伝達においては、①一つの手段に頼らず複数の災害情報伝達手段を組み合わせるとともに、②一つ一つの災害情報伝達手段を強靱化することが重要であることから、災害情報伝達手段の多重化・多様化を促進している。この取組の一環として、消防庁では、平成25年度から災害情報伝達手段に関する専門的知見を有するアドバイザーを地方公共団体へ派遣することで、災害情報伝達手段の整備に関する技術的支援や助言を行っている。
東日本大震災や昨今の豪雨等の災害においても住民へ警報等の伝達に活用される等、市町村防災行政無線(同報系)をはじめとする様々な災害情報伝達手段は住民への防災情報の伝達に重要な役割を果たしている。しかし、地域によっては長期間の停電や庁舎の被害により使用できなかったこと、津波や浸水等により屋外スピーカーが被害を受けたこと、さらに昨今においては、大雨の際に屋外スピーカーからの音声が聞こえにくいことや緊急速報メールを受信する携帯電話等を保有していない高齢者等、情報伝達において様々な課題が上がっている。
こうした状況を踏まえ、市町村防災行政無線(同報系)のほか、MCA陸上移動通信システム、市町村デジタル移動通信システム、FM放送、280MHz帯電気通信業務用ページャー、V-Lowマルチメディア放送を活用した同報系システムや携帯電話網を活用した情報伝達システム等、屋外スピーカーを用いて地域住民に一斉に情報伝達を行える手段の整備を促進するとともに、携帯電話等の普及を踏まえ、地域内の住民に一斉に送信できる緊急速報メール等の導入を促進してきたところである。また、津波や浸水、停電等に備え、屋外スピーカーの音達の改善や大型表示盤の設置、バッテリーの長時間化などの機能強化を行う場合に地方財政措置の対象とし、住民への防災情報の確実な伝達のための機能強化を促進している。
さらに、市町村防災行政無線(同報系)の戸別受信機、FM放送や280MHz帯電気通信業務用ページャー等を活用した同報系システムの屋内受信機(防災情報を受信して自動起動するもの)等、個別に情報伝達する手段を地域の実情に応じて組み合わせることなどにより、高齢者などの地域住民にきめ細かく情報を行き渡らせることが重要である。
また、大雨の際に屋外スピーカーからの音声が聞こえにくい場合においてはこれらの戸別受信機等*4が非常に有効であることから、追加配備する場合の経費については特別交付税措置の対象とするとともに、令和元年度補正予算及び令和2年度第1次補正予算において、戸別受信機等の配備が進んでいない市町村に戸別受信機等を無償貸付する事業を実施する等、戸別受信機等の配備の促進を図っているところである。

イ 防災行政無線のデジタル化の推進

近年、携帯電話、テレビ放送等様々な無線通信・放送分野においてデジタル化が進展し、データ伝送等による利用高度化が図られてきている。防災行政無線についても、これまではアナログ方式による音声通信やファクシミリ主体の運用が行われてきたが、今後は文字情報や静止画像について双方向通信可能なデジタル方式に移行する等、ICTを積極的に活用することで防災情報の高度化・高機能化を図ることとしている(第2-10-6図)。

第2-10-6図 防災行政無線デジタル化の概要

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第2-10-6図 防災行政無線デジタル化の概要

(2)消防防災業務の業務・システムの最適化

消防庁では、これまで電子政府構築計画(2003年各府省CIO連絡会議決定)、「消防防災業務の業務・システム最適化計画」(平成25年3月)に基づき、システムの統廃合、運用コストの削減等を推進してきたところである。
これまでの最適化計画に代わり、各種システムの更改は、平成30年度から総務省デジタルガバメント中長期計画(2018年6月22日総務省行政情報化推進委員会決定、令和2年3月31日改定)に基づき進めている。

*4 戸別受信機等:市町村防災行政無線(同報系)の戸別受信機及びMCA陸上移動通信システム、市町村デジタル移動通信システム、FM放送、280MHz帯電気通信業務用ページャーやV-Lowマルチメディア放送を活用した同報系システムの屋内受信機(防災情報を受信して自動起動するもの)をいう。

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