令和4年版 消防白書

2.Jアラートによる迅速な情報伝達

(1)Jアラートの概要

武力攻撃等の際に住民が適切な避難を速やかに行うためには、住民に正確な情報を迅速に伝達することが重要となることから、消防庁では、地方公共団体及び携帯電話事業者と連携して「Jアラート」(第3-1-2図)を整備している。
Jアラートとは、弾道ミサイル攻撃に関する情報や緊急地震速報、津波警報、気象警報等の緊急情報を、人工衛星及び地上回線を通じて送信し、市町村防災行政無線(同報系)等を自動起動することにより、人手を介さず瞬時に住民等に伝達することが可能なシステムである。弾道ミサイル攻撃に関する情報など国民保護に関する情報は内閣官房から、緊急地震速報、津波警報、気象警報等の防災気象情報は気象庁から、消防庁の送信設備を経由して全国の都道府県、市町村等に送信される。
Jアラートは、平成19年2月に4市町で運用を開始し、以降、平成26年に気象等の特別警報を、平成28年に噴火速報を配信対象に追加するなど、システムの改修・高度化を行っている。
携帯電話事業者との連携については、携帯電話事業者が提供するエリアメール・緊急速報メールと連携し、弾道ミサイル攻撃等の国民保護に関する情報について配信することができる。これによりJアラートの情報は、地方公共団体ルート及び携帯電話事業者ルートの両方から国民に伝達される。

第3-1-2図 Jアラートの概要

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第3-1-2図 Jアラートの概要

(2)Jアラートの整備状況

各市町村のJアラートの整備状況については、Jアラート受信機及びJアラートによる自動起動装置は全ての市町村で整備されている。今後は、市町村防災行政無線(同報系)のほか、音声告知端末、コミュニティ放送やケーブルテレビ、登録制メール、デジタルサイネージ等とJアラートとの連携を進め、Jアラートによる自動起動が可能な情報伝達手段の多重化を進めることが必要である。
なお、国民に緊急情報を提供するために、災害発生時に、地方公共団体等が、放送局・アプリ事業者等の多様なメディアを通じて地域住民等に対して必要な情報を迅速かつ効率的に伝達する共通基盤である「Lアラート」へJアラートで配信される弾道ミサイル情報等を配信することとしている。これにより、民間事業者等がLアラートを活用し、テレビ、ラジオ及びスマートフォンアプリ等を通じてJアラートの弾道ミサイル情報等を提供することができる。
また、外国人旅行者に対して、緊急事態発生時の情報を迅速に伝えるため、観光庁が監修している外国人旅行者向け災害時情報提供アプリ「Safety tips」*3により、従来から配信している地震や津波等の情報に加え、ミサイル発射等の国民保護情報の多言語配信が可能である。

(3)Jアラートの試験

消防庁では、Jアラートによる住民への情報伝達に万全を期すため、関係省庁と連携しながら、全てのJアラート情報受信機関を対象とした導通試験を毎月実施している。併せて、Jアラートを運用する全ての地方公共団体を対象とした全国一斉情報伝達試験を四半期ごとに実施している。また、地方公共団体が任意で訓練用の緊急地震速報を自動放送することができる機会を年2回設けている。
令和4年11月16日に実施した全国一斉情報伝達試験では、各地方公共団体のJアラートの運用状況に応じて情報伝達手段を起動させる等の試験を実施し、47都道府県及び1,730市町村が参加した。
消防庁においては、試験で支障のあった団体(令和4年11月実施の試験では4団体)に対し、その都度その原因を調査し早急に改善を図るよう助言するとともに、過去の支障の事例を整理して地方公共団体に対し注意喚起を実施することなどにより、Jアラートによる情報伝達が確実に実施されるよう取り組んでいる。

*3 Safety tips:自然災害の多い日本において訪日外国人旅行者が安心して旅行できるよう、平成26年10月から提供を開始した、観光庁監修の外国人旅行者向け災害時情報提供アプリ。対応言語は15言語(英語・中国語(簡体字/繁体字)・韓国語・スペイン語・ポルトガル語・ベトナム語・タイ語・インドネシア語・タガログ語・ネパール語・クメール語・ビルマ語・モンゴル語・日本語)。国内における緊急地震速報及び津波警報、気象特別警報、噴火速報、台風情報、熱中症情報をプッシュ型で通知できるほか、周囲の状況に照らした避難行動を示した対応フローチャートや周りの人から情報を取るためのコミュニケーションカード、災害時に必要な情報を収集できるリンク集等を提供している。