令和4年版 消防白書

3.国民保護事案における住民の避難に関する体制の整備

(1)市町村における避難実施要領のパターンの作成

国民保護法において、市町村長は、住民に対して避難の指示があったときに、避難実施要領を定めなければならないと規定されている。この避難実施要領は、避難の経路、避難の手段等を定めるものであり、極めて迅速に作成しなければならないものであることから、その作成を容易にするため、基本指針では、市町村は複数の避難実施要領のパターンをあらかじめ作成しておくよう努めることとされている。
避難実施要領のパターンを作成済みの市町村は令和4年4月1日現在で69%にとどまっている。
消防庁においては、市町村における避難実施要領のパターン作成を支援するための素材として、既存の「「避難実施要領のパターン」作成の手引き」及び「避難実施要領パターンのつくり方」に加え、令和3年度に「避難実施要領のパターン事例集」を作成し、地方公共団体に周知したところである。また、都道府県と連携しながら、市町村職員等を対象とした「避難実施要領のパターンの作成に関する研修会」を開催し、作成の支援を行っている。令和4年度においては、取り扱うパターンの増加や関係機関との連携等、内容の充実を図っている。

(2)避難施設の指定

武力攻撃等が発生した場合には、住民が避難するため、又は避難住民等の救援を行うための施設が必要になる。国民保護法上の避難施設は、都道府県知事及び指定都市の長が指定することとなっており、災害対策基本法に基づき自然災害における指定緊急避難場所又は指定避難所に指定されている学校、公民館、体育館、公園、広場等を中心に、令和3年4月1日現在、9万4,125か所が指定されている。
消防庁としては、域内の住民が速やかに避難できる範囲に避難施設を確保しておくことが重要であることから、公共施設のほか、民間企業が管理主体である施設の指定を促進している。特に、ミサイル攻撃等の際に爆風や破片からの直接の被害を軽減するための一時的な避難先として有効と考えられるコンクリート造り等の堅ろうな建築物や、地下街、地下駅舎等の地下施設(緊急一時避難施設)について、重点的に都道府県知事等による指定を促進している(詳細は第3章コラム参照)。