通知・通達

消防予第119号 ラック式倉庫の防火安全対策ガイドラインについて(平成10年7月24日)

消防予第119号
平成10年7月24日


各都道府県消防主管部長
  殿



消防庁予防課長     

ラック式倉庫の防火安全対策ガイドラインについて(通知)


 平成7年11月に埼玉県の製缶工場で発生したラック式倉庫の火災を踏まえ、消防庁では、学識経験者、消防関係者等から構成される「ラック式倉庫のスプリンクラー設備あり方検討委員会」(以下「検討委員会」という。)を設置してラック式倉庫におけるスプリンクラー設備に係る技術基準のあり方について検討を行い、平成9年4月にその検討結果がとりまとめられた。この検討結果については、「『ラック式倉庫のスプリンクラー設備あり方検討報告書』の送付について」(平成9年6月5日付け消防予第104号)により通知しているところである。
 また、ラック式倉庫の防火安全対策のうち、スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準については、消防法施行規則の一部を改正する省令(平成10年自治省令第31号)及びラック式倉庫のラック等を設けた部分におけるスプリンクラーヘッドの設置に関する基準(平成10年消防庁告示第5号。以下「告示」という。)により、整備を図ったところである。
 今般、検討委員会における検討結果等を踏まえ、ラック式倉庫に係るなお一層の防火安全対策の充実を図るため、「ラック式倉庫の防火安全対策ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を別添のとおりとりまとめたので、貴都道府県内の市町村に対しても、この旨を通知するとともに、その指導に万全を期されるようよろしくお願いする。


1 ラック式倉庫について、設置に係る事前相談等がなされた場合にあっては、次の事項に留意して対応すること。

 (1) ガイドラインは、ラック式倉庫の防火安全対策を更に充実するための対策及びラック式倉庫にスプリンクラー設備を設置する場合の運用についてまとめたものであり、関係者等に対する指導に当たって活用されたいこと。

 (2) ラック式倉庫において火災が発生した場合には、当該倉庫における消火活動が著しく困難となるとともに、周囲に対する影響も大きいことから、特に出火防止等の観点からの防火安全対策の充実を図ることが必要である。このため、個別のラック式倉庫の使用形態等に応じて、ガイドライン第2に掲げる防火安全対策を参考に、対応可能な範囲で措置を講じることが望ましいこと。
   また、既存のラック式倉庫及び消防法施行令(以下「令」という。)第12条第1項第4号に規定する規模に達しないラック式倉庫については、改正後のスプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準に適合させる法的義務は存しないものであり、スプリンクラー設備の整備等はラック式倉庫の関係者の自主的な判断により実施されるべきものであるが、その際には次に掲げる防火安全対策を参考とされたいこと。
  ア スプリンクラー設備が設置されているラック式倉庫にあっては、次によること。
   (ア) 収納物等に応じて、スプリンクラーヘッドを増設すること。
      なお、スプリンクラーヘッドの増設が困難である場合にあっては、設置されているスプリンクラーヘッドの直上に水平遮へい板を設けること。
   (イ) 水源水量の増設を行うこと。
  イ 高さ10メートル以下のラック式倉庫についても、ラック等が設けられている部分の面積が大きいなど火災発生時における消火活動が困難となることが予想される場合にあっては、消防法の規定によるスプリンクラー設備の設置、ESFR(Early Suppression Fast Response'早期制圧・速動スプリンクラーヘッド。NFPA231C参照。)を用いたスプリンクラー設備の設置等、防火安全対策の充実を図ること。

 (3) 令第12条第1項第4号に掲げるラック式倉庫については、パレットラック(主にパレットに積載された物品の保管に用いるラック等をいう。以下同じ。)のうち、国内の物流において標準的に使用されているサイズのパレット(概ね1m~1.2m角程度)に対応するものを用いた倉庫が多数を占める状況にあるが、各分野における物流効率化に伴い、次のようなタイプの倉庫も出現してきていること。これらについても、その使用形態、火災危険性等からしてラック式倉庫に該当するものであること。
  ア 国内において標準的に使用されているパレットラックと異なるサイズのパレットラックを用いたラック式倉庫
  イ パレットラック以外のラック等を用いたラック式倉庫(床を設けずに多層的にコンベアを設け、当該コンベアにより物品の保管・搬送を行うもの等)

 (4) ガイドライン第4,11に掲げる要件に該当するラック式倉庫については、令第32条の規定を適用して、スプリンクラー設備の設置免除を認めてさしつかえないこと。

 (5) ラック式倉庫において指定可燃物を貯蔵し、又は取り扱う場合には、市町村条例の技術基準、届出に係る規定が適用されるが、指定可燃物の量の算定については、収納物のほかに収納容器、梱包材等も対象となること。

2 ラック式倉庫において火災が発生した場合には、消火活動に困難が伴うことが考えられることから、当該ラック式倉庫の実態等を把握するとともに、あらかじめ警防計画等を作成しておくことが、望ましいものであること。

3 ラック式倉庫の構造、使用形態が特殊であること等により、その取扱いについて疑義が生じた場合にあっては、適宜当庁に照会されたいこと。

別添
   ラック式倉庫の防火安全対策ガイドライン

第1 趣旨
 ラック式倉庫は、搬送、保管、仕分けについて小スペース化、物流効率化の観点から優れた特性を有するものであり、特に近年設置数が増加している。
 一方、ラック式倉庫は、床を設けずラック等を当該防火対象物全体に多層的に天井付近まで設け、物品を集積・搬送するものであるため、万一火災が発生した場合には、煙突効果により燃焼速度が非常に速いこと、天井が高くなると屋内消火栓設備では消火できないこと、空間が少なく消防活動が困難であること等の火災危険性を有する。このため、高さが10メートルを超え、かつ、延べ面積が700平方メートル以上のラック式倉庫については、固定式の自動消火設備であるスプリンクラー設備の設置が義務づけられているとともに、その特性に対応したスプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準が他の防火対象物とは別に定められている。
 このガイドラインは、ラック式倉庫の防火安全性を確保するため、出火防止対策等に係る防火安全対策をとりまとめるとともに、スプリンクラー設備を消防法施行令(以下「令」という。)第12条、消防法施行規則(以下「規則」という。)第13条の5から第14条まで並びにラック式倉庫のラック等を設けた部分におけるスプリンクラーヘッドの設置に関する基準(平成10年消防庁告示第5号。以下「告示」という。)の規定により設置する場合の運用についてとりまとめたものである。

第2 ラック式倉庫の防火安全対策について
 ラック式倉庫において火災が発生した場合には、当該倉庫における消火活動が著しく困難となるとともに、周囲に対する影響も大きいことから、消防法令に基づく消防用設備等の設置に加え、当該ラック式倉庫の使用形態に即した出火防止対策、延焼拡大防止対策を充実させる等、火災による危険性を低減することができる効果的な防火安全対策を講じることが必要である。また、ラック式倉庫の出火原因としては、①内部からの出火及び②外部から持ち込まれる火源の2つが考えられるが、これらを防止する対策が特に重要となる。
 ラック式倉庫の防火安全対策については、収納物等の種類、使用形態、管理形態等に即してラック式倉庫の関係者の自主的な判断により実施されるべきものであるが、その際に参考とすべき基本的考え方は、次のとおりである。

1 出火防止対策
  火災の発生を未然に防止するとともに、万一出火しても本格的な火災にまで拡大させないための対策であり、次のような事項が考えられること。

 (1) 内部からの出火防止
   ラック式倉庫内部からの出火の主な原因は、使用されている設備・機器によるものであると考えられることから、①出火しにくい設備・機器の選定、②電気設備その他の出火のおそれのある設備・機器に対する安全制御(過熱防止、漏電防止等)、③適正な設置(設置位置、施工管理等)の確保等の対策を講じること。

 (2) 外部からの火源の持ち込み防止
   ラック式倉庫内への収納物等の搬入を無人で行うもの(収納物等の搬入路となる部分又は搬入口において、有人により火災監視が行われるものは含まない。)にあっては、収納物等の搬入時における火災感知手段の整備、火災発生時の速やかな初動体制の確保等の火源侵入防止措置を講じること。

 (3) 管理上の対策
   出火防止を担保するため、次に掲げる事項について、具体的な計画を作成するとともに、実施体制を確保すること。
  ア 倉庫内での火気管理の徹底に関すること。
  イ 倉庫内の適正な維持管理(設備・機器の定期点検、整理・清掃等)に関すること。
  ウ 定期的な巡回監視等、異常が起きた場合の早期発見体制に関すること。
  エ 収納物等の出入庫管理に関すること。

2 延焼拡大防止対策
  火災拡大を防止するための対策であり、次のような事項が考えられること。

 (1) ラック式倉庫における延焼拡大防止
   ラック式倉庫における延焼拡大を防止するため、次に掲げる対策を講じること。
  ア ラック等が設けられている部分と他の部分とを防火区画すること。
  イ ラック式倉庫の外壁に設ける開口部、区画貫通部等に防火措置を講じること。

 (2) 周囲への延焼拡大防止
   ラック式倉庫の周囲への防火塀の設置、空地の確保等により他の防火対象物等への延焼拡大防止を図ること。

 (3) 防災体制の充実
   速やかな防災活動を担保するため、自衛防災資機材(可搬消防ポンプ、ポンプ自動車等)を確保するとともに、自衛消防隊を組織する等、防災体制を整備すること。

第3 ラック式倉庫の延べ面積、天井の高さ等の算定について
 ラック式倉庫の延べ面積、天井の高さ等の算定については、次により取り扱うこととする。

1 延べ面積等の算定について
  ラック式倉庫の延べ面積等の算定については、次によること。

 (1) ラック式倉庫の延べ面積は、原則として各階の床面積の合計により算定すること。この場合において、ラック等を設けた部分(ラック等の間の搬送通路の部分を含む。以下この1において同じ。)については、当該部分の水平投影面積により算定すること。

 (2) ラック式倉庫のうち、①ラック等を設けた部分とその他の部分が耐火構造又は準耐火構造の床又は壁で区画されており、当該区画の開口部には甲種又は乙種防火戸(随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの又は火災の発生と連動して自動的に閉鎖するものに限る。)が設けられているもの又は②ラック等を設けた部分の周囲に幅5メートルの空地が保有されているものにあっては、次により算定することができること。
  ア ラック等を設けた部分の面積により算定すること。
  イ 当該算定方法により令第12条第1項第4号に掲げる規模に達するラック式倉庫にあっては、ラック等を設けた部分に対してスプリンクラー設備を設置すれば足りること。この場合において、令第12条第4項の適用については、当該倉庫の構造によることとしてよいこと。

 (3) ラック等を設けた部分の面積が、延べ面積の10パーセント未満であり、かつ、300平方メートル未満である倉庫にあっては、当該倉庫全体の規模の如何によらず、令第12条第1項第4号に掲げるラック式倉庫に該当しないこと。

2 天井の高さの算定について
  ラック式倉庫の天井の高さの算定については、次によること。

 (1) ラック式倉庫の天井(天井のない場合にあっては、屋根の下面。以下同じ。)の高さは、原則として当該天井の平均の高さ(軒の高さと当該天井の最も高い部分の高さの平均)により算定すること。

 (2) ユニット式ラック等を用いたラック式倉庫のうち、屋根及び天井が不燃材料で造られ、かつ、ラック等と天井の間に可燃物が存しないものであって、ラック等の設置状況等から勘案して、初期消火、本格消火等に支障がないと認められるものにあっては、ラック等の高さにより算定することができること。

第4 スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準の運用について
 ラック式倉庫におけるスプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準については、次により運用するものとする。

1 用語の意義について
  用語の意義については、令、規則及び告示の規定によるほか、次によること。

 (1) 「ラック式倉庫」、「ラック等」及び「搬送装置」
  ア 「ラック式倉庫」は、令第12条第1項第4号において、「棚又はこれに類するものを設け、昇降機により収納物の搬送を行う装置を備えた倉庫をいう。」と定義されているほか、「消防法施行令の一部を改正する政令の施行について」(昭和47年3月27日付け消防予第74号)において、「倉庫で床を設けずに棚、レール等を設け、エレベーター、リフト等の昇降機により収納物の搬送を行う装置を備えたもの」とされていること。
  イ 「ラック等」とは、規則第13条の5第3項第1号において、「棚又はこれに類するもの」と定義されていること。これには、パレットラック(主にパレットに積載された物品の保管に用いるラック等をいう。以下同じ。)のほか、収納物を保管等するレール、コンベア等が含まれるものであること(別紙1参照)。
  ウ 「搬送装置」とは、告示第2第8号において、「昇降機により収納物の搬送を行う装置をいう。」と定義されているが、これには、スタッカークレーン(主にパレットラックから収納物を出し入れし、搬送するために用いられる装置をいう。以下同じ。)のほか、収納物を搬送するエレベーター、リフト、レール、コンベア等が含まれるものであること。

 (2) 「連」、「段」及び「列」、「双列ラック等」及び「単列ラック等」、「連間スぺース」及び「背面スペース」並びに「搬送通路」
   「連」、「段」及び「列」、「双列ラック等」及び「単列ラック等」、「連間スぺース」及び「背面スペース」並びに「搬送通路」の用語の意義については、告示第2のとおりであり、具体的には別紙2のとおりであること。

2 スプリンクラーヘッドの種別について
  スプリンクラーヘッドの種別については、規則第13条の5第1項の規定によるほか、次によること。

 (1) スプリンクラーヘッドの感度種別は、ラック等の部分及び天井部分においてそれぞれ同一のものとすること。
   また、ラック等の部分に設けるスプリンクラーヘッドの感度種別と天井部分に設けるスプリンクラーヘッドの感度種別は、同一のものとするか又は異なる場合にあっては天井部分に設けるスプリンクラーヘッドの感度種別を2種のものとすること。

 (2) 放水圧力を制御することにより、114リットル毎分以上の放水量を確保することができる場合にあっては、令第32条の規定を適用し、ヘッドの呼びが15のスプリンクラーヘッドの設置を認めてさしつかえないこと。

 (3) 等級Ⅳのラック式倉庫のうち、収納物、収納容器、梱包材等がすべて不燃材料、準不燃材料又は難燃材料であり、かつ、出火危険が著しく低いと認められるものにあっては、令第32条の規定を適用し、ヘッドの呼びが15のスプリンクラーヘッドを設置して、80リットル毎分以上の放水量を確保することをもって足りることとしてさしつかえないこと。

3 ラック式倉庫の等級について
  ラック式倉庫の等級については、規則第13条の5第2項の規定によるほか、次によること。

 (1) 「収納物」とは、当該ラック式倉庫において貯蔵し、又は取り扱う主たる物品をいうものであること。

 (2) 「収納容器、梱包材等」とは、収納物を保管、搬送等するために用いる容器、梱包材、パレットその他の物品をいうものであること。

 (3) 「高熱量溶融性物品」とは、指定可燃物のうち燃焼熱量が34キロジュール毎グラム(8,000カロリー毎グラム)以上であって、炎を接した場合に溶融する性状の物品とされているが、その性状については、次により判断すること。
  ア 燃焼熱量の測定は、計量法に基づく特定計量器として確認された性能を有するボンベ型熱量計又はこれと同等の測定が行うことができるものを用いて行うこと。
    なお、発熱量の測定に関するJIS規格としては、次に掲げるものが存すること。
   ○ JIS K 2279(原油及び石油製品―発熱量試験方法及び計算による推定方法)
   ○ JIS M 8814(石炭類及びコークス類の発熱量測定方法)
  イ 炎を接した場合に溶融する性状については、令第4条の3第4項第5号及び規則第4条の3第7項に掲げる方法に準じて確認すること。

 (4) 「その他のもの」には、次に掲げるものが含まれること。
  ア 収納物
    危険物の規制に関する政令(以下「危政令」という。)別表第4に定める数量の100倍(高熱量溶融性物品にあっては30倍)未満の指定可燃物及び指定可燃物以外のもの
  イ 収納容器、梱包材等
    危政令別表第4に定める数量の10倍未満の高熱量溶融性物品及び高熱量溶融性物品以外のもの

 (5) 1のラック式倉庫において、異なる種類の収納物及び収納容器、梱包材等が混在する場合にあっては、次表により等級を判断すること。
   なお、危政令別表第4に掲げる品名を異にする2以上の物品を貯蔵し、又は取り扱う場合において、それぞれの物品の数量を危政令別表第4の数量欄に定める数量で除し、その商の和が表中の要件に掲げる数値となるときは、当該要件に該当するものとみなすこと。

収納物等の種類

該 当 要 件

収納物 危政令別表第4に定める数量の1,000倍(高熱量溶融性物品にあっては、300倍)以上の指定可燃物  次のいずれかに適合。
○ 指定可燃物(高熱量溶融性物品を含む。)の貯蔵・取扱量の合計が、危政令別表第4に定める数量の1,000倍以上
○ 高熱量溶融性物品の貯蔵・取扱量の合計が危政令別表第4に定める数量の300倍以上
危政令別表第4に定める数量の100倍(高熱量溶融性物品にあっては、30倍)以上の指定可燃物  次のいずれかに適合。
○ 指定可燃物(高熱量溶融性物品を含む。)の貯蔵・取扱量の合計が、危政令別表第4に定める数量の100倍以上1,000倍未満
○ 高熱量溶融性物品の貯蔵・取扱量の合計が危政令別表第4に定める数量の30倍以上300倍未満
その他のもの  次のすべてに適合。
○ 指定可燃物(高熱量溶融性物品を含む。)の貯蔵・取扱量の合計が、危政令別表第4に定める数量の100倍未満
○ 高熱量溶融性物品の貯蔵・取扱量の合計が危政令別表第4に定める数量の30倍未満
収納容器

梱包材等
危政令別表第4に定める数量の10倍以上の高熱量溶融性物品 ○ 高熱量溶融性物品の貯蔵・取扱量の合計が危政令別表第4に定める数量の10倍以上
その他のもの ○ 高熱量溶融性物品の貯蔵・取扱量の合計が危政令別表第4に定める数量の10倍未満

 (6) 収納物及び収納容器、梱包材等の具体例は、別紙3に示すとおりであること。

4 スプリンクラーヘッドの設置方法について
  スプリンクラーヘッドの設置方法については、規則第13条の5第3項第1号及び第2号並びに告示の規定によるほか、次によること。

 (1) スプリンクラーヘッドは、著しい感知障害及び散水障害が生じないように収納物等と離して設けること。

 (2) スプリンクラーヘッドの設置方法の具体例は、別紙4に示すとおりであること。

 (3) 等級Ⅳのラック式倉庫のうち、収納物等がすべて不燃材料、準不燃材料又は難燃材料であり、かつ、出火危険が著しく低いと認められるものにあっては、令第32条の規定を適用し、告示第3に定める通路面ヘッドの設置間隔について、同一の搬送通路に面する側につき4連以下ごととしてさしつかえないこと。

5 ラック等に設けるスプリンクラーヘッドの被水防止措置について
  ラック等を設けた部分に設けるスプリンクラーヘッドの被水防止措置(他のスプリンクラーヘッドから散水された水がかかるのを防止するための措置をいう。)については、規則第13条の5第3項第3号の規定によるほか、次によること。

 (1) 水平遮へい板は、その直下に設けられるスプリンクラーヘッドに係る被水防止措置にも該当するものであること。

 (2) ラック等の部分に設けるスプリンクラーヘッドのうち水平遮へい板直下の段以外の段に設けられるものにあっては、その上部に被水を防止するための板等を設けること。

6 水平遮へい板について
  水平遮へい板については、規則第13条の5第3項第4号の規定によるほか、次によること。

 (1) 水平遮へい板の材質の具体例としては、鋼板、ブリキ板、トタン板、PC板、ALC板等があげられること。
   なお、難燃材料を用いる場合にあっては、燃焼時に容易に溶融、落下等しないものとすること。

 (2) 消火配管の設置、ラック等の免震化、ラダー、電気計装設備、ケーブル設備の設置等により水平遮へい板を設けることが技術的に困難となることにより生ずる、背面スペース、連間スペース等の部分のすき間については、延焼防止上支障とはならないものとして取り扱ってさしつかえないものであること。

 (3) 水平遮へい板は、火災の上方に対する拡大を防止するとともに、その直下のスプリンクラーヘッドの早期作動にも効果を有するものであること。したがって、等級Ⅲ及び等級Ⅳのラック式倉庫における水平遮へい板の設置については防火対象物の関係者の自主的な選択によるべきものであるが、設置する方法を選択した方がより効果的に被害の軽減に資することが期待できるものであること。

7 同時開放個数について
  乾式の流水検知装置を用いるスプリンクラー設備の同時開放個数については、規則第13条の6第1項第1号の規定により、同号の表の下欄に定める個数に1.5を乗じて得た個数とされているが、次の要件を満たす場合にあっては、令第32条の規定を適用し、ラック式倉庫のうち等級がⅠ、Ⅱ及びⅢのものにあっては30、等級がⅣのものにあっては20とすることができること。

 (1) ラック等の部分及び天井部分に設けるスプリンクラーヘッドの感度種別は、1種のものであること。

 (2) 水平遮へい板が、規則第13条の5第2項第3号の規定により設けられていること。

8 送水口について
  送水口については、規則第14条第1項第6号の規定によるほか、規則第13条の6第1項第1号のスプリンクラーヘッドの個数が30を超えることとなるラック式倉庫にあっては、双口形の送水口を2以上設けること。

9 配管について
  配管については、規則第14条第1項第10号の規定によるほか、次によること。

 (1) 1系統の配管に設けるスプリンクラーヘッドの個数は、概ね1,000個以内とすること。

 (2) ラック式倉庫のうち主要構造部とラック等の構造が一体となっていないもの(ユニット式ラックを用いたラック式倉庫等)にあっては、ラック等の部分に設けるスプリンクラーヘッドに係る配管と天井部分に設けるスプリンクラーヘッドに係る配管は、それぞれ別系統とすること。

10 ラック等の構造が特殊なラック式倉庫の取扱いについて
  国内のラック式倉庫は、国内の物流において標準的に使用されているサイズのパレット(概ね1m~1.2m角程度)に1.5m程度の高さで積載された収納物等に対応するパレットラックを用いたものが一般的であり、これらを前提としてスプリンクラー設備の技術基準が整備されているが、これ以外のラック等を用いるラック式倉庫であって、規則及び告示の規定によりがたいものにあっては、次により取り扱うことができること。

 (1) サイズの異なるパレットラックを用いるラック式倉庫
   収納物等の寸法の関係等から、標準的なパレットラックとサイズの異なるパレットラックを用いるラック式倉庫であって、規則第13条の5及び告示の規定によりがたいものにあっては、次により弾力的な運用を図ることとしてさしつかえないこと。
  ア ラック等の部分に設けるスプリンクラーヘッドの設置間隔については、告示により2連以下とされているが、令32条の規定を適用し、次表に掲げる連の幅に応じ、それぞれ定める設置間隔としてさしつかえないこと。

連 の 幅 [㎜]

設置間隔等
600以下 8連以下
600を超え900以下 6連以下
900を超え1,200以下 4連以下
1,200を超える 2連以下


* 規則第13条の5第3項第1号イの規定により、一のスプリンクラーヘッドまでの水平距離は2.5m以下とする必要がある。

  イ 連の幅の寸法が1,200ミリメートルを超える場合であって、別紙4の例によりスプリンクラーヘッドを配置しても、ラック等を設けた部分の各部分から一のスプリンクラーヘッドまでの水平距離が2.5メートル以下とならない場合にあっては、次によること。
   (ア) 双列ラック等
      別紙4の配置例に加え、ラック等を設けた部分の各部分から、一のスプリンクラーヘッドまでの水平距離が2.5メートル以下となるように、通路面ヘッド及び背面ヘッド(水平遮へい板が設けられた等級Ⅱ、Ⅲ及びⅣのラック式倉庫について、水平遮へい板直下の段以外の段に設ける場合にあっては、連間スペースに設けるスプリンクラーヘッド)で補完すること。
   (イ) 単列ラック等
      別紙4の配置例に加え、ラック等を設けた部分の各部分から、一のスプリンクラーヘッドまでの水平距離が2.5メートル以下となるように、単列ラック等の背面となる部分にスプリンクラーヘッドを設け補完すること。
  ウ スプリンクラーヘッド及び水平遮へい板の設置高さについては、規則第13条の5第3項第1号及び第4号の規定により定められているが、収納物等の寸法の関係等から、これらの規定によりがたいものにあっては、令32条の規定を適用し、次により取り扱うこととしてさしつかえないこと。
   (ア) 等級Ⅰのラック式倉庫について高さ4メートル以内ごとに水平遮へい板を設けることができない場合にあっては、2段以下かつ6メートル以内ごとに水平遮へい板を設け、当該水平遮へい板の直下に通路面ヘッド及び背面ヘッドを設けるとともに、水平遮へい板直下の段以外の段にも通路面ヘッド及び背面ヘッドを設置すること。ただし、2段以下かつ5メートル以内ごとに水平遮へい板を設ける場合にあっては、当該水平遮へい板の直下に通路面ヘッド及び背面ヘッドを設置することで足りること。
   (イ) 等級Ⅱ及びⅢのラック式倉庫について高さ8メートル以内ごとに水平遮へい板を設けることができない場合にあっては、概ね4段以下かつ高さ10メートル以内ごとに水平遮へい板を設けることができること。この場合において、スプリンクラーヘッドについても、高さ5メートル以内ごとに設けることができること。
   (ウ) 等級Ⅳのラック式倉庫について高さ12メートル以内ごとに水平遮へい板を設けることができない場合にあっては、概ね6段以下かつ高さ15メートル以内ごとに水平遮へい板を設けることができること。この場合において、スプリンクラーヘッドについても、高さ7.5メートル以内ごとに設けることができること。

 (2) パレットラック以外のラック等を用いたラック式倉庫
   パレットラック以外のラック等を用いたラック式倉庫にあっても、原則として、規則及び告示の規定によりスプリンクラー設備を設置する必要があること。ただし、ラック等の形状等により、これらの技術基準に従ってスプリンクラーヘッドを設けることができない場合にあっては、令第32条の規定を適用し、弾力的な運用を図ることとしてさしつかえないこと。

11 スプリンクラー設備の設置を省略することができる場合の要件
  令第12条第1項第4号の規定によりスプリンクラー設備の設置対象となるラック式倉庫のうち、次に掲げる要件に該当する等、火災による危険性が十分低減されていると認められるものにあっては、令第32条の規定を適用し、スプリンクラー設備(水平遮へい板を含む。以下この11において同じ。)の設置免除を認めてさしつかえないこと。

 (1) 防火安全対策を強化したラック式倉庫
   令第12条第1項第4号に掲げるラック式倉庫のうち、次に掲げる防火安全対策が講じられているものにあっては、令第32条の規定を適用し、スプリンクラー設備の設置を免除してさしつかえないこと。
  ア 出火防止対策
   (ア) 内部からの出火防止
    a 出火しにくい設備・機器が選定されていること。
    b 電気設備その他の出火のおそれのある設備・機器について、過熱防止、漏電防止等の安全対策が講じられていること。
    c 設備・機器の適正な設置(設置位置、施工管理等)が確保されていること。
   (イ) 外部からの火源の持ち込み防止
    a ラック式倉庫内への収納物等の搬入を無人で行うもの(収納物等の搬入路となる部分又は搬入口において、有人により火災監視が行われるものは含まない。)にあっては、搬入路となる部分又は搬入口に、搬入される収納物等の火災を有効に感知することができるよう炎感知器等が設けられていること。この場合において、収納物等の形状等を考慮して、感知に死角が生じないものであること。
    b 火災を感知した場合には、当該収納物等の搬入を直ちに自動停止するとともに、当該部分及び常時人がいる部分に警報を発することができるよう措置されていること。
    c 搬入路となる部分又は搬入口には、消火器等の初期消火手段を備えられていること。
   (ウ) 管理上の対策
    a 倉庫内が火気使用禁止であること。
    b 倉庫内での火気使用について、当該事業所の防火管理部門で一括した管理体制(事前確認制度を設ける等)が整備されていること。また、倉庫の改修、増改築等の工事中における火気管理計画が策定されていること。
    c 倉庫内の設備・機器について、実施計画に基づき定期点検が適正に行われていること。
    d 定期的な巡回監視等、異常が起きた場合の早期発見体制が整備されていること。
    e 収納物等の出入庫管理が適正に行われていること。この場合において、倉庫内の収納物等について、出火危険性の観点から分別して収納する等、被害軽減に係る措置が講じられていること。
  イ 延焼拡大防止対策
   (ア) ラック式倉庫における延焼拡大防止
    a ラック等が設けられている部分と他の部分(荷さばき場、梱包作業場等)が、耐火構造又は準耐火構造の床又は壁で防火区画されていること。また、当該区画に開口部を設ける場合には、甲種防火戸とするとともに、有効に冷却することにより延焼防止できるスプリンクラー設備、ドレンチャー設備等が設けられていること。
    b ラック式倉庫の外壁の開口部(出入口等)に防火措置が講じられていること。
    c 配管、配線等の区画貫通部に防火措置が講じられていること。
   (イ) 周囲への延焼拡大防止
     ラック式倉庫の周囲への防火塀の設置、空地の確保等により他の防火対象物等への延焼のおそれがないこと。
   (ウ) 防災体制の充実
      自衛防災資機材(可搬消防ポンプ、ポンプ自動車等)を備えた自衛消防隊が組織されていること。

 (2) ラック等の部分が可動するラック式倉庫
   ラック等の部分が可動するラック式倉庫のうち、次の要件を満たすものにあっては、令第32条の規定を適用し、スプリンクラー設備の設置を免除してさしつかえないこと。
   ア 屋内消火栓設備又はドレンチャー設備が設けられていること。
   イ ラック等のうち火災が発生した箇所を容易に識別し、当該箇所を屋内消火栓設備又はドレンチャー設備により消火することができる位置に移動することができるものであること。
   ウ ラック等を可動するために用いる電気設備等については、耐火措置が講じられていること。

 (3) 冷蔵の用に供されるラック式倉庫
   冷蔵の用に供されるラック式倉庫(庫内の温度が氷点下であるものをいう。)のうち、次の要件を満たすものにあっては、令第32条の規定を適用し、スプリンクラー設備の設置を免除してさしつかえないこと。
  ア 冷蔵室の部分における火気使用その他出火危険がないこと。
  イ 冷蔵室の部分とその他の部分とが、耐火構造又は準耐火構造の床又は壁で防火区画されていること。また、当該区画に開口部を設ける場合には、甲種防火戸とするとともに、当該開口部には、有効に冷却することにより延焼防止できるスプリンクラー設備、ドレンチャー設備等が設けられていること。
  ウ 冷蔵室の壁、床及び天井の断熱材及びこの押さえが、次のいずれかに該当するものであること。
   (ア) 冷蔵室の壁体、天井等の断熱材料に不燃材料(岩綿、グラスウール等)を使用し、かつ、これらの押さえを不燃材料でしたもの。
   (イ) 冷蔵室に使用される断熱材料をコンクリート若しくはモルタル(塗厚さが2センチメートル以上のものに限る。)又はこれと同等以上の防火性能を有するもので覆い、かつ、当該断熱材料に着火するおそれのない構造としたもの。
   (ウ) 前(ア)又は(イ)と同等以上の防火性能を有するもの
  エ ラック等を設けた部分に、必要に応じ、不燃材料、準不燃材料又は難燃材料の遮へい板が設けられていること。
  オ 当該防火対象物の周囲への防火塀の設置、空地の確保等により他の防火対象物への延焼のおそれがないこと。

別紙1


別紙2


別紙3



別紙4

  ラック等に設けるスプリンクラーヘッド等の配置例

1 等級 Ⅰ

(水平遮へい板有り) ─── 別図1―1~3

2 等級 Ⅱ

(水平遮へい板有り) ─── 別図2―1~3

3 等級 Ⅲ

(水平遮へい板有り) ─── 別図3―1~3

4 等級 Ⅲ

(水平遮へい板無し) ─── 別図4―1~3

5 等級 Ⅳ

(水平遮へい板有り) ─── 別図5―1~3

6 等級 Ⅳ

(水平遮へい板無し) ─── 別図6―1~3

7 等級 Ⅳ(延焼拡大危険性が著しく低いもの)

(水平遮へい板有り) ─── 別図7―1~3

8 等級 Ⅳ(延焼拡大危険性が著しく低いもの)

(水平遮へい板無し) ─── 別図8―1~3

 * 別図中のラック、収納物等の寸法は、国内において一般的に用いられているも

のの例によるものであること。

  また、スプリンクラーヘッド及び水平遮へい板の配置については、規則及び告示

のほか、本ガイドラインによる運用の内容を含むものであること。